あなたを道具に例えるならなんですか?

@kkarura_toto

今日、リストラされた。某感染症のせいで人件費が出せなくなったそうだ。ただ働き続けていた俺は働く以外の生き方を知らない。これからどう生きようか。


独り家に帰る、心なしかいつもより曇天が深く感じる。もう使わないか、そう思いつ勤めていた会社の用事が書いてある手帳を開く。あぁ、明後日までだったな。あの仕事の納期。そう思いながらゴミ箱に入れる。これもいらないか。もう朝早く起きる必要も、態々これを使う必要もない。恨みを込めながら、感謝をし、ゴミ箱に入れる。冷蔵庫を開く。空だ。そう言えば、最近はカップ麺だけだったかもしれない。今後使うだろうか、どうせ使わないだろう。ただ、粗大ゴミは捨てるのが面倒くさい。放置しておこう。パソコンを開く。会社の資料がデスクトップに埋まっている。それも範囲選択をし、ゴミ箱に入れる。気晴らしになにかゲームを入れていなかったけと、フォルダを漁る。ゲームどころか何もない。あぁ、そこまで仕事一筋だったのかと認識する。やる気をなくした俺は、風呂にも入らず、ベッドに転がる。目の上に腕を乗せ、何も考えないようにすることだけを考える。外は雨が降っているようだ。その降下音を頼りに無考え考える。考えないことを考えようとしても、難しい。まぶた瞼の血管か皮膚か、室町の戦争の後のような、苦しみと怒りに包まれているような世界が見える。気持ち悪くなり、目をひらく。木の天井には照明しかない。木目をなぞっていると、川に見えてくる。ただ、広く、ただ長く。源流を探そうとする。いつの間にか目を瞑っていたようだ。ただ俯瞰、いや仰視か。源流を見ようとあさっている間に鳥や獣が跋扈する、吐き気を催す森のような何かがある景色がある。全ては想像でしかないとわかっているが、相当気持ち悪いので、まだ楽な、陰鬱な外の景色を思い浮かべる。


いつの間にか寝てしまったようだ。ゴミ箱のゴミをごみ収集に出す。そして、新たな職に就くためハローワーク行く。ただ、同じことを考える人は多いようだ。競合が多すぎる。当たり前のように今日は職がなかった。地獄のような炎天下の中、太陽が皮膚を焼き、俺を攻めているようだった。気晴らしに、散歩に出かける。海沿いを歩いて少し経った頃、相当大きな工場にあたる。ガラス張りで俺を嘲笑うように綺麗だった。そこは説明を見ると巨大なゴミ処理場らしい。


「ゴミ、か。使われていたものはどこまで落ちていくんだろうな。」


そう独りごち、家路に着く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あなたを道具に例えるならなんですか? @kkarura_toto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画