第120話 ★

〜里恵視点〜


 朝、私が目を覚ますとすぐ隣で守君が寝ていました。それも下着だけの私に抱きつくように、です。…あれ?私、まだ夢でも見てるんでしょうか?こんな幸せな夢なら毎日でも…。


 …なんて思ってたのに、知らぬ間に守君と大人の階段を上ってしまったみたいです。昨日は確か守君が帰ってきたときに下着姿を見られて、守君ならいいよって言ったところまでは覚えてます。……でも、その後のことは覚えてません。


 …何でなんでしょう?私、守君との初体験は楽しみだったはずなのに。どうして覚えてないんでしょう?私の守君への気持ちって、そんな簡単に忘れちゃうくらい軽いものなんでしょうか?


 視界がだんだんと悪くなってきます。前がにじんで守君の表情もぼやけてきました。…いくら後悔してもどうにもなりません。守君との初めてのえっちも記憶に残らないような、そんな酷い私だったみたいです。


 …守君にも呆れられているんでしょうか?それとも私がえっちなことをしまくってるビッチだと思われたんでしょうか?…そのどっちでももう守君は私なんて嫌いになるには十分な理由ですよね?その最初で最後のチャンスを私は覚えてないっていう最悪の形で終わらせちゃったんです。


 …なんて、それは全部私の勘違いみたいでした。…でも、守君も絶対わざと勘違いさせるような紛らわしい言い方をしたよね!普通そんな風に言ったりしないから!!


 確かに意地悪されるのもいいって言ったよ?でも、これは酷いんじゃないかな?だから私も仕返しです。冷静になったらすぐに目に付いた箱を指さします。実際に見たことないけど、アレはきっとそういうことだよね?


 私が指摘するとやっぱりそうだったのか守君が慌てています。そんな慌てた表情の守君もまた違った魅力があるように感じます。普段よりも余裕がなさそうというか、私の言葉に反応してくれてるというか…。


 それでもずっと意地悪したままで嫌われるのは本末転倒なので素直に揶揄っただけだと伝えました。


 …そのゴムのおかげで私だけじゃなくって守君もそういうことに興味があるんだと知れて嬉しかったです。それにも関わらずにまだ私に手を出してくれないってことは、それだけ大切にしてもらえてるってことなんだよね?…でも、私ももう子供じゃないんだよ?そんな風に気を遣わないでほしいって思うのはおかしいのかな?

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