第116話

 それからも母さんと里恵が俺の昔の写真を見ながら盛り上がっていて、俺はなるべく存在感を消しているしかない。


 「…っと、もうこんな時間なのね。里恵さん、ご飯でも食べていってちょうだい」

 「そ、そんな!…お邪魔してもよろしいんですか?」

 「もちろんよ!あの人も守の彼女さんに会いたがっていたし、ちょうどいいわね」

 「…あの人、ですか?」

 「そうよ、私の夫」

 「えっ!?」

 「ただいま〜」


 そんな話をしているとちょうど父さんが帰ってきた。


 「おかえりなさい」

 「あっ、あの!は、初めまして!!守く…守さんとお付き合いさせていただいてます、新妻 里恵と申します!何卒、よろしくお願いします!!」

 「あ、ああ。私が守の父の杉田 武史たけしです。こちらこそ、うちの子と仲良くしてくれてありがとうね」

 「あの、その、はい!武史さんもお仕事お疲れ様でした!!」

 「…いい人だな。うん、流石は我が息子だ!父さんと一緒で見る目がある!!」


 その言葉に嬉しかったのか父さんはすぐに笑顔になった。…やっぱり里恵はすごいな。こんなに簡単に俺の両親に気に入られるなんて。まぁ、里恵なら当然なんだけどね?こんなに早いとは思わなかったけど、しっかり見てくれれば分かってくれると思ってた。


 …俺も大概だって?…俺は元々里恵を助けてからなんだから、その部分に付け込んだだけ、なんだよな。だから俺と里恵のすごさは全然違う。


 「あなたったら、もう。照れちゃうわよ」

 「いつもありがとうな。…普段はこんなこと言えないけど、せっかく守も彼女を連れてきたんだ。日頃の感謝を伝えておきたいと思ってな」

 「ちゃんと分かってますよ。あなたが私たち家族のために日曜日まで働いてくれてることは」

 「…香織」

 「…武史さん」


 …なんて、なぜか急に両親がイチャイチャし始めたんだけど?仲がいいのは結構だけど、息子として両親のそういう姿を見るのはちょっと…。


 「…守君のご両親ってなんか素敵だね。私たちもこんな風に、何年経っても仲良くいられるかな?」

 「…もちろん。俺が里恵のことを嫌うなんて想像もできないもん。もちろん、里恵が俺を嫌うこともね?」


 …里恵と出会う前は何とも思ってなかったのに、こうして話をして仲良くなって恋人なんて関係にまでなって。今が凄く楽しいんだ。


 「…うん!私もずっとずっと守君のことを好きでいる確信があるよ!!」

 「ねっ?だから俺たちだって大丈夫だよ」

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