第115話

 それからすぐに母さんと里恵は仲良くなった。…俺の昔の写真で。


 「これは守が珍しくゴネて遊園地に行った時の写真よ。あっ、こっちは運動会のときのね。それまで一番だったのに、途中で転んだ子がいてすぐに駆けつけたのよ。それで最下位になっちゃったけど、誇らしかったわ」

 「へ〜。この頃から守君は変わってないんだね」

 「そうなのよ〜。この子はずっとそんな感じなのよ。…まぁ、そのときはすっごく悔しそうにしてはいたんだけどね?」

 「他にもあるんですか?」

 「もちろんよ。…あっ、これは知ってる?」


 そう言って母さんが里恵に見せたのはあの海での出来事のあとに撮った一枚の写真。…俺と郷田さんのツーショット。そっか。こんなの撮ってあったんだ。


 「…うん、莉里須ちゃんのことは知ってる。やっぱり、私よりも前から守君に会ってたんだ」

 「あら?里恵さんはこの子のことも知ってるのね?」

 「もちろん!私の友達なんだ」

 「なるほどね。いや、世間は狭いってことなのね」


 本当にそうだな。昔助けた女の子が彼女の友達になるなんて、人生何が起こるか分からないものだな。でも、これから先はずっとこんな関係が続くような予感がする。


 「…でも、このときは心配でちょっと怒っちゃったんだよね」

 「…それって」

 「いい事をしたって、偉いねって褒めなきゃいけなかったはずなのに、私も夫もそうできなかった。もっと自分の命を大切にしなさいって」

 「…それは間違ってないと思います。香織さんは守君のためを思ってそう言ったんですよね?それはちゃんと伝わってるはずです」

 「…里恵さん。あなたってやっぱりいい子ね!」


 …うん、俺だって里恵と同じ気持ちだよ。俺のために言ってくれたのはちゃんと分かってるから。


 「…俺も、ちゃんと分かってるよ。母さんたちが俺のために怒ってくれたことくらい」

 「あら守、いたの?」

 「ずっといたよ!…全く、さっきから恥ずかしい話ばっかり」

 「そんな!守君の昔の話は全然恥ずかしくなんてないよ!!むしろ、今と同じで優しかったんだって知れたんだもん!」

 「…なら、俺もお母さんに里恵の昔のことを色々聞いちゃうよ?」

 「…うっ、そ、それは…」

 「?私は里恵さんのことなんてあんたよりも知らないんだから、そんなの教えられるわけないでしょ?」

 「母さんじゃないよ。里恵のお母さん」

 「…あんた、人様の親をお母さんなんて呼んでるの?」


 母さんに信じられないという表情で見られたけど、俺から言い出したわけじゃないよ!?

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