第114話
「…2人は仲が良いのね?さすがは恋人だわ」
「ふぇ!?あ、その、ごめんなさい!!」
「どうして里恵さんが謝るの?」
「えと、その、息子さんと、その、ぃちゃついて、しまい、まして」
徐々に声が小さくなっていく里恵。…って、また緊張しちゃってるじゃん!
「…それは構わないんだけど、里恵さんは本当にうちの守でいいのかしら?」
母さんの声色が急に真剣なものに変わった。…俺が口を挟んだりしない方がいいんだと直感的に理解できた。本当なら里恵の緊張を解いてあげたいんだけど、それすらも無粋になりそうで、結局何もできなかった。
「…はい。守君がいいんです!」
「…そう。この子は優しい子だから、きっとモヤモヤさせることもあると思うわ。自分だけが特別じゃないんだって思うときがあると思うわ。…それでも、守がいいって言える?」
「言えます!それが守君の良さだって分かるので。…確かに自分に自信が持てなくてそう思っちゃうときもありました。…でも、その度に守君は私を安心させてくれるんです」
「…そうなのね」
そこで母さんは表情を緩めて緊張感が霧散した。
「守はちゃんと愛せる人に出会えたのね」
「…ああ。里恵を一生愛し続けるよ」
「ふふっ。なら、里恵さんには感謝しないといけないわね」
「…感謝、ですか?」
「ええ。…守って誰に似たのか真面目というか現実主義っていうのかな?とにかく、遊びとかは全然しないのよね。もちろんそれがいいことだって分かるんだけど、学生のうちはほんの少しくらい青春っぽいことをしてもいいと思うのよ。…だから、ありがとう。この子にそういうのを体験させてくれて」
…そっか。そういう風に思われてたんだ。だから帰りが遅くなるって伝えてもすぐに許可してくれたんだな。
「…そんなの、私の方こそですよ。私が辛い時期にずっと側で寄り添ってくれて、支えてくれたんです」
里恵は思い出すかのように目線を別のところに向けた。…そっか。俺が無理矢理押しかけたようなかんじなのに、それが里恵にとっての支えになってたなら良かった。
「…うん、2人がお似合いだってことは分かったよ。なら、お邪魔虫の私はどこかに出かけるかしらね?それとも昔の守のこととか知りたい?」
「ちょっ!?母さん!!」
「聞きたいです!!」
俺の非難より前に里恵が興味津々という表情を浮かべていた。…そんなに楽しそうにされちゃ止められないよ。あんまり変なのは無かった、よな?ちょっと心配なんだけど…。
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