第107話
「あれ?そこにいるのは里恵?」
「あっ、莉里須ちゃん!」
俺と里恵が話していると郷田さんがやってきた。そんな彼女の後ろには金髪のお姉さんがいた。…どこかで見たような気がするんだけど。
「…こんにちは、郷田さん。それから、えっと。…初めまして、でしたっけ?」
「ん〜?どうだったかしら〜?…もしかして、杉田さん〜?」
「あっ、はい。杉田 守です。急に不躾な質問してしまってすみません」
…って、どうして俺の名前を?やっぱりどこかで会ってるのかな?
「ああ、いいのよ、気にしなくて。確かに初対面ではないけど、もう10年くらい前だしね〜。覚えてなくても仕方ないわよ」
…10年前、金髪。…あっ!
「…あの海の?」
俺が助けた女の子も確か金髪だったはずだ。そのときのお母さん、だよな?
「…えっ?…もしかして、覚えて?」
だけど、それに反応したのは郷田さんの方だった。…ちょうど昨日希ちゃんと話して思い出しててよかった。
「…守君?えっと、何の話してるの?」
「あ、ああ。そういえば里恵には話してなかったよね?昔、溺れかけてた女の子を助けたことがあってね」
…そういえば、あのときの金髪の女の子は大丈夫かな?ずっと泣いてたけど。それに、日本語もうまく話せないみたいだったし、日本が嫌いになってないといいけど。
「…そっか。やっぱり守君は昔から守君だったんだね。…ん?あれ?ってことは莉里須ちゃんが?」
「いや?俺だ助けた女の子は金髪だったし郷田さんじゃないと思うよ?」
「…莉里須ちゃんは元々金髪だったよね?今の黒髪もいいけど、金髪も似合ってたよ」
…えっ?それってあのときの女の子が郷田さんってこと?…そんな偶然もあるんだな。案外世間は狭いっていうか…。
「…覚えてたんだ。まぁ、今さらどうこう言うつもりはないけど、その、ありがとね」
「うん。…なんか、改めてお礼言われると照れるな。それに、結果的にだけど、里恵の友達を守れたならよかったよ」
こんな風に一緒に笑える関係になっているんだ。もちろん、あの時のことが間違いだったなんて思わない。たとえ相手が誰でも困ってる人は助けるけど、その相手がこうして元気に生活してるのを見ると嬉しく思う。
「あっ!じゃあ、お母さんはもう行くから、せっかくなら友達と話してなさい。杉田さんも、またお礼させてもらいますね」
そう言って郷田さんのお母さんは去っていった。
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