第105話

 「あっ!そういえば、あのことについてずっと聞こうとしてたのに忘れてた!!」

 「?あのことって?」


 里恵に聞かれた俺はずっとばたばたしてて半ば忘れていたことを聞くことにした。だから俺は銀色の物体を取り出して里恵にも見えるように置いた。


 「これは…鍵?どうしたの?」

 「実はね、少し前にお母さんから渡されたんだ。里恵のことをお願いってことで」

 「…そう、なんだね」

 「うん。でも、もし里恵が嫌なら返そうと思ってるんだ」


 …なんて、言い方が良くないな。俺がそんな風に言えば里恵は嫌じゃないって言うしかないもんな。…でも、他の言い方なんてないだろうし。


 「う〜ん?…確かに、しょうがないことだと思うんだけどね?」

 「?里恵が嫌ならはっきり言ってくれていいよ?」

 「…うん、ヤダ!」

 「そっか。なら、はい」


 里恵がそう言うなら仕方ないよね?それに、ちゃんとはっきり言ってくれて良かった。無理して俺に合わせたりしないで嫌なことは嫌って言ってくれていいからね。そっちの方が里恵の気持ちが分かるから。


 俺は早速里恵に鍵を手渡した。すると里恵はそれに何かストラップを付けた。そうしてまた俺に戻してきた。


 「…えっと、これは?」

 「可愛いでしょ〜?お揃いだよ!…こういうのやってみたかったんだけど、迷惑だった?」

 「ううん、全然?けど、里恵は俺が鍵を持ってることが嫌なんじゃないの?」

 「…私がこういうのを渡したかった」


 少し視線を逸らしながらそう言う里恵。…でも、そっか。確かにお母さんには悪いけど里恵から直接渡される方が嬉しいな。


 「…うん、ありがとう。里恵たちの信頼を裏切らないようにこれからも努力するよ」

 「…そんなにガチガチにならないでよ。守君はもう十分私を助けてくれてるじゃん!」

 「ははっ、里恵がそう言ってくれるならそうしよっかな?…じゃあ、これからどうする?まだ1、2時間くらい時間あるけど」

 「…もうちょっと守君とちゃんとお話ししたいな。けど、2人きりだとまた甘えちゃうだろうし…」


 そう言って里恵は考え込んだ。俺的にはもっと甘えてくれてもいいんだけど…。それでも、今はしっかり話し合いたい気分みたいだし、俺もそれでいいから下手に考える邪魔はしない方がいいよね?


 「…公園とかで、話す?」

 「…里恵がそれでいいならいいけど…」


 他の人の目があれば取り乱さない、とかって考えてるのかな?何回か外でも里恵がフリーズすることがあったような気がするけど、大丈夫かな?


 「うん!よし、そうと決まれば早速行こっ!」

 「…了解」


 そうして俺は里恵に手を引かれるようにして家を飛び出した。

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