第103話
ただ唇を合わせているだけ。そっと触れるだけの、幼稚なキス。…それなのにこんなに夢中になれるなんて。もしもこれ以上なんてやっちゃったらどうなっちゃうのかな?
「…ぷはっ。…しちゃった、ね?」
「…うん」
「えへへ、なんか、恥ずかしいね」
「…うん」
「…もう一回、しちゃう?」
「…うん」
「…ん」
俺がぼーっとしてると、今度は里恵から唇を塞がれた。…もうこのまま全部流されちゃいたい、そんな思いが出てくる。
「…えへへ〜。今、すっごい幸せだな〜」
「…俺も幸せだよ。里恵がこうして側にいてくれるんだもん」
「…そっか。そう、なんだ〜。守君も私と同じ気持ちなんだ〜」
一瞬だけのキスを終え、顔を離した里恵はそう言って微笑んだ。恥ずかしさよりも幸福感が強くなってきたのか、優しい笑みを浮かべている里恵を見て俺は思った。…やっぱり、俺が里恵を笑顔にしたい、って。里恵に全部を任せて受け身になるのは俺の性に合わない。
俺は里恵をそっと抱きしめた。里恵は一瞬だけビクッと震えて、それでも俺を受け入れてくれた。
「…絶対に里恵を幸せにしてみせるから」
「…うん。だけど、私だって守君と一緒にいることが一番の幸せなんだからね?」
「…そっか。それなら大丈夫だね。俺は里恵を手放してあげるつもりなんてないから。…逃がさないよ?なんちゃって」
…どんどん里恵を好きになっていくのが分かる。今でも大好きなのに、これ以上があるなんて俺も知らなかった。
…まぁ、可愛くていい子な里恵が悪いよね?そんな里恵を好きにならない理由なんてないんだから!
今も腕の中で顔を真っ赤にしてる里恵を見て俺は幸せを噛み締める。俺の言葉や行動に可愛らしい反応をしてくれる里恵。…やっぱり大好きだな。
「…あの〜?守君?流石にそれは恥ずかしいよ〜」
「…里恵は俺から逃げる気なの?」
「そっ、そんなわけないじゃん!…もう離れられないよ」
ほんのちょっとヤンデレっぽく俺が言うと焦ったように里恵が否定してくれた。…そう言ってくれるのが分かってた。と、いうか期待してた。
「ん?なら、問題ないよね?」
「そうなんだけど、そうじゃないの!?…私の心臓が持たないよ!」
「そっか。なら…まだこのまま、ね?」
「はうぅ…。うん」
それから大人しくなった里恵をしばらく抱きしめていた。口数が少なくなった分、里恵の鼓動が伝わってくる。
「…ねぇ、守君?もうちょっとだけこうしてても、いい?」
「もちろんいいよ。…っていうか、俺も満足するまでは離してあげないんだからね?」
「…そっか。守君は私を離したくないんだね〜」
「当たり前でしょ?」
俺が即答するとまた里恵は静かになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます