第102話
「…それなら、今さらだけど里恵はどうして俺を好きになってくれたの?」
「…それ、本気で言ってるの?私が自暴自棄になったとき、必死になって止めてくれたでしょ?」
「それは…当たり前のことでしょ?」
俺じゃなくても目の前に自殺しようとしてる人がいたら普通は助けるよね?特別なことをしたつもりなんてないけど…。
「ううん。ただのクラスメイトだった私のためにあんなに真剣に怒ってくれる人なんてきっといないよ。…だけど、ちょっとだけ不満もあります!」
「不満?」
「そう!守君は優しすぎると思うの!!それが守君の良さだって分かってるんだけど、ちょっと不安なんだ。…私よりも可愛くて性格もいい女の子も同じように助けて、その子も守君が好きになって。それから守君が私から離れていっちゃうんじゃないかって」
「…そっか」
…俺は何を言えばいい?里恵が感じてる不安を払拭してあげたい。だけど、これまで女の子と付き合ったことのない俺が気の利いた言葉を言ってあげられるわけがない。
「…だから、ね?私を安心させてほしいんだ」
「安心?」
「うん。守君が私のことを嫌いにならないよって実感がほしいんだ」
「…俺が里恵を嫌いに?そんなのなるわけないよ」
「…何となくは分かるんだ。だからこれはただのわがまま。自分に自信がない私を変えたいって」
自信がない、か。俺も多分そうだったのかな?里恵の愛情は伝わってるのに一瞬でも里恵に嫌われたんじゃないかって思っちゃったし…。
「…うん。俺にできることなら何でもするよ?それが里恵のためになるならね?」
「ふっふっふ〜!その言葉を待ってました!というか、それを狙ってお家デートにした部分もあるんだ!!」
…アレ?早まったかな?なんか嫌な予感が…。…大丈夫、だよね?お母さんやお父さんもいるし、あんまり無茶なことはないって思いたいけど…。
「ねっ?えっち、しよ?」
「ぶっ!?…いやいやいや!お母さんたちもいるしダメだよ!!」
「…うん。守君ならそう言うだろうなって分かってた。だから、キス。キスだけは、したいなって」
里恵は潤んだ瞳で俺を見つめてくる。頬は真っ赤に染まっていて、勇気を出して言ってくれたのが伝わってくる。…里恵がこんなに言ってくれてるのに、断るわけにはいかないよな?
…とは言ったものの。キスってどうやればいいの!?ただ唇を合わせるだけ?本当にそれでいいの?歯が当たったりすると痛いってことだし、あんまりがっつかない方がいいんだよね!?
俺は特に言葉を返さずに里恵の方に近づいた。それで里恵も分かったのか、ゆっくりと目を閉じた。
「んっ…」
唇が触れるか触れないかまで近づいたとき、そんな声が漏れた。初めてのキスはレモンの味、なんて言われるけど、そんなことは分からなかった。ただただ心臓のドキドキを感じていた。
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