第101話

 それから食事を終えた俺たちは里恵の部屋に戻ってきた。


 「…今日は俺の家に来るだけでいいの?その前に出かけたりとかは?」

 「う〜ん、確かにそれも楽しそうなんだけど、今日は守君とゆっくり話したいなって」

 「そっか。里恵がそれでいいならそうしよっか?」


 …てっきり外にデートに行くのかと思ってたけど違ったみたいだ。俺だったらきっと家ではこんなにオシャレしたりしないと思うけど、やっぱり女の子は違うのかな?


 「…うん。…それで、ね?この服、どうかな?守君のお母さんに会うの、失礼じゃない?」

 「全然?里恵はやっぱり何を着ても似合ってるし可愛いよ?」

 「あうぅ。そんな風に褒められると流石に恥ずかしいよ…。…その、守君もどんな服装でも、あの、かっこいぃ、よ?」

 「…ありがと。里恵にそう言ってもらえて嬉しいよ」


 里恵は照れくさそうにそう言ってくれた。だけど、本心で言ってくれてるんだろうなって伝わってきてすごく嬉しい。そんなこと言ってくれるのは里恵だけだから。…まぁ、他の人から同じこと言われても怖いだけなんだけどね?


 「…むぅ、守君、言われ慣れてるの?その、かっこいいって」

 「ん?そんなわけないでしょ?」

 「ウソ!だったら何でそんなに平然としてるの!?」

 「そんなの、嬉しいからに決まってるでしょ?里恵がそんなことを言ってくれるんだから」


 …そりゃあ、俺にも恥ずかしいって気持ちはあるけどさ?でも、それ以上に里恵が俺をかっこいいと思ってくれてることの方が嬉しいんだ。


 「…そっか。…うん、そうなんだ!守君が言ってほしいなら何回でも言ってあげるよ?…かっこいいね!って」

 「…ははっ、それなら俺も。…里恵、可愛いよ」

 「…あ、ありがと。……って、やっぱり恥ずかしいよ!!」


 お返しのようにそう言うと里恵は顔を真っ赤にして俯いた。


 「…だけど、やっぱり私と守君は全然違うんだね。考え方とか感じ方とかさ」

 「…うん、そうだね。それに俺たちってまだ話すようになってそんなに経ってないしね?」


 …考えてみれば俺たちが話すようになってからまだ1週間も経ってないんだ。それが今は恋人だなんて、1週間前の俺に言っても多分理解されないよな。来週には今まで話したこともそんなにない人と付き合うようになるんだ、なんて言ってもね?俺だって未だに信じられないんだからさ。


 「…うん。だから今日はちゃんと守君と話したいなって。どんなものが好きで何が嫌いなのか、とか」

 「…そうだな〜。改めて聞かれると分からないけど、とりあえず確実なのは俺が里恵を好きで里恵が俺を好きってことかな?」

 「ふっふ〜、それはちょっと違うよ〜?」

 「…えっ?」


 …まさか、もう俺のことなんて呆れられた!?…いつの間にか、里恵に嫌われてたの?気づかないうちに俺は里恵の傷つけてたのかな?


 …思い当たる節は、ある。里恵といるのが楽しすぎて、里恵の色んな表情が見たくて、つい意地悪しちゃうこともあった。それでも本気で嫌がられてるわけじゃないって、いつからそんなに身勝手な考えするようになっちゃったんだろう?…そんなの、嫌われて当然だよな?


 「だって、好き、なんかじゃ足りないもん」


 俺が謝ろうと口を開きかけたとき、それよりもちょっと早く里恵はそんなことを言った。


 「…そっか」

 「うん!好きはこの前までで、恋人になったら大好き、それから結婚したら愛してる、になるんだよ!」

 「…ふふっ、何それ。俺はもう里恵を愛してるつもりだけど?」

 「…私はまだまだだよ!これからもっともっと守君を知って、もっともっとも〜っと好きになるんだから!!」

 「…俺も、里恵をもっと好きになるんだろうな」


 …どうしてこんなに好意を向けられてもまだ疑っちゃったんだろう?里恵が俺を嫌いになるなんてないって自信持てなかったんだろう?

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