第99話

 「あらあら〜。そんなに照れなくてもいいのに〜」


 そんな状態の里恵をからかうように、あるいは微笑ましいものを見たようにお母さんはそう言った。


 「〜ッ!べ、別に照れてなんかないよ!」

 「まあまあ〜、うふふ〜」

 「ちょっとお母さん!聞いてるの!?」

 「まぁまぁ、落ち着いて?」


 里恵は必死になって否定するけど、そうすればそうするほど肯定してるようなものだからね?


 「ま、守君!?違うの!?私、その、イヤだったわけじゃなくて…」

 「ふふっ、全部分かってるから大丈夫だよ?恥ずかしかっただけなんだよね?」

 「そうじゃっ!…ううん、ほんとは恥ずかしかっただけ。でも、嬉しい気持ちの方が強いから!」

 「…そっか。そう言ってくれると嬉しいよ」

 「…うん」


 …何でそんな気の利かない言葉しか出てこないんだろう?里恵は恥ずかしさを我慢して本音を言ってくれたのに、そっかって。もっと他に言えることがあったはずなのに!


 …こんな俺じゃいつか里恵に愛想尽かされるのかな?…いや、今のこの状況が特別なだけか。助けた影響で美化された俺とは違う、本当の俺がバレたらきっと嫌いになるのかな?


 「…ねぇ、里恵。ちょっと相談があるんだけど、いいかな?」

 「ん?…うん。分かった」

 「…うん、ありがとう。…その、ね?…俺って里恵にちゃんと好意を伝えられてるのかな?って」


 …俺は正直に相談することにした。今のまま不安を抱えて里恵と接するよりも、きちんと話し合うべきだって思ったから。…俺は勝手に他人の気持ちを想像して間違えることがあるから。


 …今まではそれでも困らなかった。それで成功したこともあったし、やらぬ善よりやる偽善だと思ってたから。余計なことだったら謝っておしまい、だったけど、里恵とは近づき過ぎた。


 「?そんなこと?もちろん守君は私のこと、その、あぃして、くれてるの、分かってるよ?」

 「ん?何て?」

 「だから、あぃして、って恥ずかしいよ!」


 …そっか。ちゃんと伝わってるならよかった。…だけど何故か里恵には意地悪したくなっちゃうんだよな。今だって最初のでちゃんと分かったのに、里恵の恥ずかしがる表情が見たいって。


 「うん、伝わってるならよかったよ。俺も里恵みたいに積極的になった方がいいのかなって思ってたところだけど」

 「ふぇ?…私ってそんなに積極的かな?」


 …今さら!?里恵にとってはアレが普通なの!?…逆夜這いとか無い、よな?流石にそこまでされたら俺も我慢できないかもしれないんだけど!?


 「…守君?どうして黙ってるのかな?否定してくれないの?」

 「えっと、その…。俺はどんな里恵でも好きだよ?」

 「…もう!そんなこと言われたら満足しちゃうじゃん」

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