第97話

 「…もしかして、俺は里恵と一緒にいて幸せじゃないとかって思われてました?」

 「そんなことはないわよ〜?周りから見てれば分かるもの〜。…それでも、当事者になると分からなくなるものよ〜?あの子もそれはあるみたいね〜」


 俺が心配になって聞くとお母さんはそう言ってくれた。…だけど、それって里恵にはちゃんと伝わってないってことなんだよね?それはちょっと困るな…。


 里恵に俺の好意を分かってもらうにはどうすればいいんだろう?…えっちなのに誘うのも一つの方法ではあると思うけど、それが目的だと思われたらイヤだし。…どうすればいいのか分からない俺は素直に聞くことにした。


 「…どうしたら好きって気持ちが伝わるんでしょうか?」

 「そうね〜。こればっかりは人それぞれだから分からないわ〜」

 「…そう、ですよね」


 そんな簡単なことじゃないんだよな。明確な正解とかがあるわけでもないし、近道なんてないのかもね。長い時間をかけてゆっくりと伝えていくしかないんだ。


 そんな話をしながら冷蔵庫の中を見させてもらう。…うん、これだけあれば一通りの朝食は作れそうだな。それじゃあ、どうするか?


 …里恵は普段朝ご飯は何食べてるのかな?ご飯系?それともパン系?もしかしたらヨーグルトとかなのかな?


 「…お母さんは朝何か食べたいものとかありますか?ご飯系とかパン系とか」

 「そうね〜?それなら、パンにしようかしら〜」

 「分かりました。ちょっとだけ待っててください」

 「分かったわ〜。楽しみにしてるわね〜」

 「…はは。あんまり期待しないでくださいね?簡単なものしか作れませんので」

 「あらあら〜。十分すぎるくらいだと思うわよ〜?」


 …お母さんからの期待プレッシャーも多少感じながら俺は献立を考えた。…食パンがあるから王道の目玉焼きトーストにするか、あえてフレンチトーストにするか、クロワッサンもあるからハムとチーズを挟むか。


 …よし、ここは王道で行こう!そう決意した俺は食パンの縁に沿うようにマヨネーズをかけ、真ん中に卵を落とした。それをオーブントースターで焼いている間にチラッと見つけたコンソメスープの素をお椀に入れてお湯を注ぐ。それからサラダとしてレタスを千切ってキュウリを輪切りにし、ミニトマトを半分に切って添える。最後に飲み物として牛乳を用意して、簡単だけど朝食は完成した。…里恵も喜んでくれるといいけど。

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