第96話
それから俺は里恵の部屋を出てリビングに向かった。そこにはまだ誰もいなくて、いくら暖かくなってきてるとはいえ未だに朝は少し肌寒く感じる。…もしかしたら、彼女の家のリビングに一人きりって状況も影響してるのかもしれないけど。
お母さんも俺が夜中に起こしちゃったからかまだ寝てるようだし、お父さんもまだ起きてない。里恵は部屋で着替えてるし…ちょっと手持ち無沙汰だな。
「…里恵の着替え、覗きに行こうかな〜?」
「って、お母さん!?急にびっくりするじゃないですか!?」
「あらあら〜?私はお邪魔だったかしら〜?」
そんな風に考えていると、急にお母さんが横から声をかけてきた。まるで俺の心を読んだみたいな雰囲気出してたけど、全然そんなこと考えてないから!
「そんなことは…。…そうだ、今日の朝食は俺が用意していいですか?」
たまには俺も何かやってあげたいんだよな。里恵ならこうしてほしいとかって言ってくれるだろうけど、さすがにお母さんやお父さんはそんなことないだろうしね。日頃のお礼はちゃんと示したい。
…なんてね。本当は俺の料理も里恵に食べてほしいだけなんだけど。
「あらあら〜。そう言ってくれるなら任せようかしら〜。ある物は好きに使ってちょうだいね〜」
「はい!ありがとうございます」
「それにしても〜、うふふ〜。もうすっかりお義母さんって呼んでくれるようになったわね〜」
…そう言われてみれば確かに。今では里香さんって言う方がよそよそしすぎる気がする。それに、ふとした時にはやっぱりお母さんって呼んじゃいそうで。…あれ?やっぱり少しおかしいよな?
「…まぁ、もう呼び慣れてしまいましたしね。今からでも里香さん呼びに直した方がいいですか?」
「まさか〜。守さんはもう私の義理の息子なのよ〜?お義母さんでいいのよ〜」
「…えっと、その。はい」
…そっか。里恵と結婚するようになったら里香さんは義理の母親ってことになるのか。…里恵と結婚、か。きっと幸せな毎日になるんだろうな。
朝起きたら横に里恵がいて、里恵の寝顔を見ながらゆっくり朝の準備をする。そして里恵も目覚めて一緒に朝食を食べて、俺は仕事に向かう。そうして仕事を終え、里恵が待っててくれる家に戻ってくる。そうしてお疲れって里恵に褒めてもらって、里恵が用意してくれた夕飯を食べる。それから里恵の誘惑に耐えたり耐えなかったりして一緒に寝る。
お母さんの言葉で、そんな未来を俺は思い浮かべた。それはきっと、近い将来のことなんじゃないかって思う。
「うふふ〜、守さんも楽しそうね〜。里恵と一緒のことを想像してたのかしら〜?」
「あはは、分かりました?」
「あらあら〜、まあまあ〜!守さんもそう思ってくれてるならよかったわ〜」
「…もしかして、俺は里恵と一緒にいて幸せじゃないとかって思われてました?」
…もしそうなら大問題なんだけど!?俺は里恵が好きで付き合ってるのに、それがちゃんと伝わってない可能性があるの!?
…そういえば里恵にもまだ信じられないみたいな風に思われてるっぽいし、里恵にまで誤解されてるのは困るんだけど!?
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