第89話 ★
〜里恵視点〜
それから守君が帰ってきました。私はすぐに玄関に駆け寄って、お母さんから言われたように聞きました。…ちょっと恥ずかしかったけど、もう守君には私の気持ちも伝わってるしね。
…そしたらなんと3つ目の選択肢を選んできました!?それはないだろうなと思ってたのに、予想外です!?…まぁ、守君がシテくれるなら、私はいつでも、なんて。
…だけどそれは私の早とちりみたいです。急なことにビックリしてた気持ちが落ち着いたような、ほんのちょっぴり期待したのがなくなって落ち込むようなそんな気分です。
…でも、守君と仲良くなれたからそんなことも言ってくれるようになったのかな?最初のころは、と言っても数日前なんだけどね?そんな冗談も言ってくれなかったよね?…まぁ、私の方にも原因はあると思うけど。
それならそんな風に意地悪されるのも、守君にならいい、かな?
それからすぐにリビングに移動しました。テーブルの上に並んでいるのは4つのハンバーグです。…やっぱり、こうして並べられると私のだけ美味しくなさそうです。守君にもそう思われてるよね?…次はもっと上手く作ってみせます!
この失敗したハンバーグは私が食べることになるんだろうなと思ってたのに…。その苦味を感じながら次は成功させようと強く決意するはずが…。
何故か私のところに回ってくることはなかったんです。一番最初に選んだ守君が迷わず私の作ったものを選んでくれました。
…何で?お母さんから何か聞いてたの?…それでも、そんな気配は一切ありません。帰ってきてから守君は私とずっと一緒だったし、お母さんはまだ守君の連絡先とか知らない、よね?タネを寝かせてる間に連絡したとも考えられないし…。
そんな風に私が色々考えていると愛情が伝わったからってお母さんが。…そっか。私が込めた気持ちは無駄じゃなかったのかな?私はそう思うことにしました。…だって、もしかしたらこうかもしれない、なんて考えて落ち込むよりも、守君が私のに気づいて選んでくれた事実だけで十分のはずだから。
…そっか。これが料理をする意味なんだ。私はそのときにようやくお母さんが言ってた言葉の意味が分かった気がします。
私の込めた気持ちに気づいて、それを受け止めてくれる人がいる。そんな心のやり取りはきっと、手料理じゃなきゃ伝わりません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます