第88話 ★
〜里恵視点〜
そうしてハンバーグの元、タネって言うんだっけ?を作りました。お母さんの真似してるだけだったけど、無事に完成させることができました!丁寧に形を整えて、後は焼くだけだと思ってたのに、これから更に工程があるみたいです。
「…今から焼いてどうするのよ〜?まだ4時くらいよ〜?」
そう言われて思い出しました。まだまだ守君が来てくれるまでに時間があります。今から焼いたら食べるころには冷めちゃいます。
「それに〜、これは寝かせた方が美味しいハンバーグになるのよ〜?どうせなら、美味しく食べてもらいましょ?」
「…うん。美味しいって思ってもらいたい」
初めては何事も大切だよね?少しでも守君によく思ってもらえるように頑張りたいって決めたんだもん!そのために必要なら何だってやるよ、私!
そうして、ちょっと短いけど仕方ないってことで30分くらい寝かしてから最終工程です。いよいよ焼き始めます。…緊張してきました。ちゃんと上手くできるでしょうか?
だけど、異変はすぐに現れました。だんだんと形が崩れていったんです。な、何で!?せっかく守君のために綺麗なハンバーグにしようと思ったのに!?
「…あ〜。やっぱり空気を抜くのが足りてなかったのね〜?」
「お、お母さん!?どうして気づいてたのに言ってくれなかったの!?」
「あら〜?それが里恵の今の実力なのよ〜?守さんになら変な見栄を張らなくてもいいんじゃないかしら〜?」
…確かに私の見栄かもしれないけど、守君にはちゃんと美味しいって思ってもらえるハンバーグにしたかった。
「…お母さんのバカ。私は守君に美味しいって食べてほしかったのに、これじゃ食べてもらえないよ」
「…は〜、それ本気で言ってるの〜?守さんなら喜んでくれると思うけど〜?あなたが心を込めて一生懸命に作ったのだから〜」
「でも!」
「…そうね〜?なら、4つとも全部並べて、守さんに好きなの選んでもらいましょ〜?」
「…分かった」
…そんなの、結果が分かりきってるのに、どうしてするんだろう?少なくとも、私のを選んでくれるはず、ないのに。
「決まりね〜?なら、せっかくだし里恵がお出迎えしたら〜?もうそろそろなんじゃないの〜?」
「…うん」
「あら〜、そうそう〜。それじゃあきちんと正装しなくちゃね〜?」
「…正装?」
「そうよ〜?これを着て〜、これを持って〜、そうして最初にこう言うの〜。ご飯にする?お風呂にする?それとも、わ、た、し?って〜」
「…分かった」
「…あら〜?やけに素直なのね〜?」
…もう、何でもいいや。守君が3番目を選ぶことはないだろうし、というか断られてるし。何よりハンバーグの失敗が辛いです。せっかく綺麗な形にしたのに。……ん?
「!?そうだ、ハンバーグ!」
私は慌てて火を消しましたが、少し焦げてしまっています。…何、してるんでしょうか、私は。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます