第82話 ★

〜里恵視点〜


 …だけど、焦った私は言わなくてもいいことまで言ってしまいました。…それに対して守君は酷いって。当たり前だよね?断ったはずなのに、勝手に変な妄想して正反対のことを言い出すんだもん。迷惑だと思われて当然なんだよね。…はぁ、これが失恋、なんだよね?


 …何で、恋なんてするんだろう?もう、恋なんてしたくない。…ううん、守君以外の人にこんな感情を抱くのはきっとできない。守君を忘れられない私は、きっと恋なんてできない。


 一生独身なのかもしれないし、葛原君みたいな人と形式的に結婚とかして、だけど別々に暮らしたり、とかになるのかな?…もう、それでもいいや。ちゃんと私を見てほしい、なんて言わないよ。私も、きっとそうなるから。


 …そう、思ってたのに。守君は、私の彼氏だって。…もう、何が現実で、何が夢なのか分かりません!もしかしたら全部が夢で、起きたら今日が始まるのかもしれません。…バスケには普通に負けて、それもしょうがないよねってみんなで励まし合って、それから守君が来てくれて…。


 …うん。きっとまだ夢を見てるんだ。それなら、ちょっとだけわがままを言ってもいいよね?丁度、都合良く何かしてほしいことがないかって守君が聞いてくれたんだもん!


 だから私は、赤ちゃんがほしいって伝えました。…それでも、守君には大きくなってからとはぐらかされてしまいました。…夢だからって、何でも想像通りにいくわけじゃないんだね。それとも、私が自分にはない守君の大事な場所をうまく想像できないから反映されなかったのかな?


 せっかくなら時を早送りして、今すぐに大人になろうかとも思ったけど、やっぱりそれもうまくいきません。


 …せっかく夢の中ででも初めてえっちなことができると思ったのに…。やっぱり世界はそこまで甘くありません。…それでも、守君が彼氏になってくれる夢だけで、この先100年は幸せに生きられると思います!


 そしてそろそろ守君とも一旦お別れです。…きっと、この守君と会えるのも最初で最後、なんですよね?…夢は覚めるもの。だけど、信じ続ければ本当にもなるのかな?…だって、世界はとっても冷たいけど、時々すっごく優しいから。


 無限とも思えるくらいの人が生まれては死んでいく。そんなたったの100年くらいの人生。同じ時を生きる人も砂浜全体の中のほんの一粒くらいでしょ?しかも、同じ場所にいれるのも同じくらいの割合だと考えると、世界中の砂浜の中の一粒。それに、私と関わってくれる人は更にその一割くらいで、その中に本気で好きになれる人がいる。


 ねっ?私は幸せ者なんだよ?だから、これ以上を望むとバチが当たっちゃうよ。…だから、このままお別れして現実に戻らないといけないのに。それなのに、私はこの夢が続いてほしくてまた会う約束をします。…それが叶うのかは分からないけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る