第81話 ★

〜里恵視点〜


 …私なんかには守君を責める資格なんてないことは分かっています。何も伝えられず、こうだったらいいなって理想を見るばかり。


 …でもね?私、今日は活躍したんだよ?前は負けちゃった相手にも、今日は勝ったんだよ?…頑張ったんだよ、守君に見てほしくて。だって、私は…。


 「…あなたが好きです。この世界の誰よりも」


 私の心は不思議なほど落ち着いていた。熱を持ってるのは確かなんだけど、噴火のような激情じゃなくて、マグマのように一点に留まり続けてる。


 だから、割と平然と取り乱さずに返事を聞けてる。けど、あ〜、くそ、ごめん。…どれだけ断られる言葉を並べられても、耐えられる。


 …うそ。ごめん、もう泣いちゃいそう。私だって普通の女の子だもん。好きな人からの否定の言葉は、辛すぎるよ。でも、逃げることはしたくない!


 …その、はずなのに。どうしてなのか、私のことを好きって。守君が。はっきりと。…あれ?好き、すき、スキ…他に意味なんてあったかな?


 私の涙はもう引っ込んでいます。私の頭の中はてんやわんやの大騒ぎ、大混乱、パニック状態です。もう何も考えられません。


 …だけど、一つだけ分かるのは、守君が私の彼氏になってくれたこと。今の私はそれだけで十分です!


…って、やっぱり私のバカ!!どうしてまたみんながいる場所で告白なんてしてるの!?ありえないよ!恥ずかしいに決まってるじゃん!


 私が恥ずかしさから復帰すると、守君はなぜか私のチームのみんなに囲まれてました。…私だけ除け者にして。私が守君の彼女、なんだよね?他の女の子と話さないで!なんて言うつもりはないけど、もうちょっとだけ私を見てほしい、なんてわがままなのかな?


 …あれ?それとも、さっきのは私の見た幻覚だったの?幸せな夢?現実ではこっぴどく振られて、自分を守るためにとっさに再生された妄想?…私なんかは、守君を遠くから見てることしかできないのかな?


 私がじっと見つめると、守君もそれに気づいたのか視線が合ったような気がしました。だから私はとっさに今起きたような声を出しました。ずっと見てた、なんて気づかれないように…。


 …きっとそれ以外のことを言おうとすると、どうしてもさっきの夢のことになっちゃいます。でも、現実は正反対で、きっと、私の本当にほしいものは手に入らないんです。今日の試合だって、私が一番勝っても負けてもどっちでもいいって思ってたはずです。部長みたいにどうしてもバスケをしたいわけでも、らんらん先輩たちみたいにこのチームで勝ちたいって気持ちが強いわけでも、莉里須ちゃんみたいにどんな勝負でも全力で勝ちにいくわけでもありません。…ただ一人、守君に褒めてもらいたいってだけなのに、それは叶いません。

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