第80話 ★

〜里恵視点〜


 そして、私の出番がやってきました。横目で観客席を見ると、お母さんたちと一緒に守君も見てくれてるのが分かる。どうして最初に気づかなかったのか分からないけど、それだけで私に勇気をくれます。今なら負ける気が全くしない!


 その思い通り、私のシュートは外れる気配がありません。それでも、あと一歩が届かない。…私だけなら…。だから、最後は決めてもらう。私が信頼してる部長に!


 最後、ボールを持ったのは莉里須ちゃん。私が誘ったからバスケ部に入ってくれたようなものなのに、一生懸命練習してくれる負けず嫌いで頑張り屋さん。


 私は3人の相手を躱わす技術なんてない。躱せる自信もない。ないない尽くしの私だけど、私は一人じゃ


 莉里須ちゃんが選んだのは、味方のゴール下からのシュート。私の倍くらいの距離がある場所から、フォームもちゃんとできてない、ただ遠くに飛ばすためのシュート。


 相手も観客も、きっと自暴自棄になったんだと思ったことだろう。意味をちゃんと理解してるのは、私たちのチームと、守君だけ!


 莉里須ちゃんのシュートはやっぱり外れて、パスは狙い通りに通った。それを受け取った部長は、期待通りにやっぱり決めてくれました。


 それから私は部長に抱きつかれていた。少しだけビックリしたけど、嬉しかったです。みんなで掴み取った初勝利。今でもまだ現実味がないみたいにドキドキしてます。一人きりじゃこんな気持ちになることもきっとなかったんだよね?…それでも、今この気持ちを伝えたいのは一人だけです!!


 …守君。私、勝ったんだよ?守君が見に来てくれたから、勝てたんだよ?


 早く守君にそう伝えたいな。守君、褒めてくれるかな?それとも、前半のことで怒られちゃうかな?…どっちでもいい。守君の声を聞きたい。どうしてなのか、私は強くそう思いました。


 それから挨拶も終わり、解散になった後、私は急いでお母さんたちのところに向かいました。それでも、もう守君はいません。それも仕方ないことだって頭ではちゃんと分かってるんです。…忙しいときに来てくれたのは分かってるのに、少しだけモヤモヤします。


 それから私が会場を出ると守君がいました!…それも、隣に可愛い女の子を連れて。あの子は…相手チームの選手、だよね?


 …今日の予定って、もしかして彼女と会うことなの?そこに顔見知りの私がいたから声かけてくれただけ?


 モヤモヤが大きくなります。このまま逃げ出したい。そんな思いが出てきたとき、彼女はどこかに去っていきました。きっと、あと少しでもそれが遅かったら私がここからいなくなっていたでしょう。

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