第79話 ★

〜里恵視点〜


 今日は土曜日。部長が用意してくれた、最後かもしれない練習試合。私が入部して一ヶ月ほどのときにボロ負けした相手。格上なのは分かってるけど、どうにかして勝ちたい。…できれば守君にも見に来てほしかったけど、予定があるなら仕方ないよね?


 そうして試合が始まりました。一番最初の第一クォーター。私はそこで3ポイントラインの外に立っていました。…シュートを入れるのは難しいけど、一番外側で走り回る負担はみんなよりも少ない。


 結局シュートを打てたのは5回で、入ったのは3本でした。それでも、私たちのチームが勝ってる!と思ってたのに…。


 それから始まった第二クォーター。みるみる点差が詰められて、あっという間に逆転されていた。それなのに、ベンチで祈るしかできない私に嫌気がしました。


 …何のために私はここにいるんだろう?せめて応援でもするべきなんだろうけど、何故か声が出ない。…こんな姿、守君が見たらどう思うのかな?…見られなくて良かった。


 私はそんな最低なことを思っていました。チームの仲間が頑張ってるのに、もう負けた気で…。それなのに、守君が来てくれました。弱気になってた私を励ますために、予定を変更までして。


 …このまま無様に負けていいの?ダメ!…もう諦めるの?違う!!…守君にどう思ってほしいの?………カッコいいって、流石は里恵だって、そう思ってほしい!!!


 …絶対に勝ちたい!そんな風に思ったのは初めてかもしれません。技術は追いついてなくても、心では絶対に負けない。


 だけど、みんなもまだ諦めてなかった。…諦めかけてたのは私だけ、だったんだ。


 それから決まった作戦のかなめは私。私がカッコいいだろうなと思ってずっと練習してた真ん中の位置から打つ超ロングシュート。今では成功率1割を超えた私の奥の手。練習では、十回に一回は入ってる。


 最初にそれを印象付けるだけで相手の動きがかなり変わってくるってことだけど、守君に見られてる今の私なら百発百中だよ!


 それともう一つ。もし、最後の最後でどうしようもなくなったら、部長に任せる。本当の奥の手は部長で、私は囮。…これは私が提案したこと。だって、私が見せたい相手にはそれでもちゃんと伝わるって信じてるから。…それに、もう勝利を諦めかけてた私じゃ、きっと上手く決められないと思うから。


 そして始まった第三クォーター。少しでもシュートの成功率を上げるためにまたベンチになった私。だけど、もう悲壮感はないよ?勝って、守君に褒めてもらうんだから!!


 「頑張れ!!」


 …なんだ。私、ちゃんと応援できるじゃん。

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