第66話 ★
〜希視点・回想〜
あれは9年前の夏の日のこと。私は家族でとある海に遊びに来ていた。そこは人気の観光地…から少し離れた場所。人はまばらで見通しがいい場所でした。そんなこともあり、私は1人で海の近くまで行って遊んでいた。そして、貝殻拾いに夢中になった私は次第に海の方へと近づいていった。
…本当に、なんて愚かだったんでしょう?のこのこ現れた私に
真っ白い綺麗な貝殻、これを渡せばパパとママも喜んでくれるかな?そう思った私は駆け出したのです。…普段慣れてない砂浜でそんなことをしたらどうなるか、冷静に考えれば子供でも分かったはずなのに…。それでも私は普段来られない場所に興奮してたのか、全速力で駆けていた。
その結果、砂に足を取られた私はバランスを崩して転倒、運悪く海の中へドボン。それで、私の体は簡単に水に浮いた。たったそれだけ。…そのはずなのに、私はパニックになった。
今まで、足が地面に着いてない経験なんて無かった。普通に立てばいいだけなのに、そんな考えは浮かばない。ただ怖くて、無我夢中でジタバタした。そのせいで、どんどん沖に流されていくのにも気づかなかった。
…ああ、このまま死んじゃうんだ。私が薄れていく意識の中で考えたのはそんなことだった。諦めかけた私だったけど、私に気づいて海に入ってきた人がいた。
それが守お兄さん…なら、どれだけよかったか。いや、私が海の近くに行ったせいだから、人のせいにしちゃダメだよね。
私を助けてくれたのはパパです。そのまま私は助かりました。そして安心した私はパパに縋りついて泣いていたんです。そのせいで、パパの足が…。
観光地の近くにあるのにどうして人がいないのか、それには必ず理由があるんです。…ここの海にはクラゲがいました。私が刺されなかったのは運が良かったから。パパは刺されていたのです。でも、私はそれに気付かず。そして、時間が経ってしまったこともあり、毒が全身に回らないように切断するしか無くなったのです。
それでパパが働けなくなって、代わりにママが稼ぐように。でも、それで全てが今まで通りとはいきません。女性が一人で稼げる額にはやっぱり限りがあって、パパの治療費もあります。
それでも、私の生活はすぐには変わりません。どうしても、我慢するのは当事者の私ではなく、大人の両親なのです。
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