第60話
そんなこんなでやり取りを五月雨さん→かなかなさん→霧雨さんと終え、郷田さんに移り変わるタイミングで里恵が復活した。
「…ん、むにゃ。あれ?…なんか、とっても幸せな夢を見てた気がする」
「あっ、おはよう、里恵。よく眠れた?」
「…守君?…はっ、そうだ!守君が私の彼氏になってくれる夢を見たんだった。…もう一回寝たら、また見れるかな?」
…夢と判断された!?ど、どうしよう。多少意地悪してもいいかな?
「…俺が彼氏の夢だって?酷いな〜」
「あっ、その。ごめんね。迷惑、だったよね。そんな勝手な夢を見るなんて、気持ち悪いよね」
「何で夢だって決めつけるの?俺は里恵の彼氏のつもりなんだけど?」
…思った以上に落ち込んでいっちゃったんだけど!?ど、どうしよう…。郷田さんもすごい形相で睨んで…ない?むしろ呆れられてる!?
「…ッ!!?…夢じゃ、ない?」
「うん」
「幻聴でもないの?」
「そうだよ」
「守君が偽者とか?」
「…どうなんだろう?俺は里恵のことが好きな杉田守だけど、他にも里恵に『守君』って呼ばれてる存在がいるの?」
…なんて、いないことは分かってるけどね。逆にもしいる、なんて言われたらどうしよう?嫉妬でどうなるか俺にも分からないけどね。
「…分かんない。私の中の守君は私を絶望の淵から助けてくれて、私のことを考えて叱ってくれて、私のことを受け入れてくれて、私のお母さんとも仲良くて、お花さんにも優しい人だけど」
「俺のことはどう思うの?」
「…私の好きな守君だと、思うけど」
…これでまだ偽者だ、なんて言われたら強引にでもわからせなきゃいけなかったよ。…なんて、無理矢理はできないんだけどね。
「…っと、俺もそろそろ行かないと。また5時くらいにお邪魔させてもらってもいいかな?それとも、今日は家族でお祝い?」
「…うん、そうだね。家族でお祝いだから、守君もちゃんと来てね?もう家族、なんだから…」
少しだけ頬を赤く染めて言う里恵。…もう!どうしてそう、さぁ!!不意打ちでそんな嬉しいことを言ってくれるの!?
「…そっか。じゃあ、また後でね。…それと、俺からも何かお祝いしたいから、何がいいか考えておいて」
「うん!じゃあ、その…赤ちゃん、ほしいかな?」
「ゴホッ!あ、あかちゃ!?…えっと、それはもっと大人になったら、ね?」
「…うん。大丈夫。冗談だから」
…その割にはガッカリしてるような気がするのは気のせい?…まぁ、冗談だということにして。…問題は何も見てませんと手で目を覆っている女子5人!せめて耳を塞げ、耳を!目なんて隠しても意味ないでしょ!!
「…それじゃあ、またね?」
「…うん」
そこで俺は戦略的撤退を選択した。…決して逃げたわけじゃないよ?本当だよ?
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