第49話 ★

〜里恵視点〜


 …なぜか私のあだ名についての話題になっていました。自己紹介だったはずなのに、一体なぜこんなことになったのでしょうか?にぃにぃってあだ名はネコちゃんっぽくてあんまり好きじゃありません。…私は、そんなに可愛くないので。


 でも、守君がちょっと意地悪そうな、ううん、無邪気で子供っぽいような表情で私をにぃにぃと呼ぶ姿を想像します。…ネコちゃんのようにじゃれるのも悪くないですね!すりすりと頬ずりするのもいいです!そして、にゃんにゃん言いながらにゃんにゃんして……って、私は何を考えてるんですか!?こんな発情期ネコちゃんみたいな考えは止めないと!!煩悩退散!!


 守君が考えてくれたのは“りーちゃん”というあだ名でした。守君が付けてくれたあだ名、それも偶然かもですが部長が守君に付けた“まー君”というあだ名と似ているような気がします。…私がちょっと欲望を妄想してた間にこんないい名前を考えてくれたなんて…少し恥ずかしいです。…守君には、にぃにぃって呼ばれても良かったかも、なんて。


 りーちゃん。その言葉を思い浮かべるだけで、胸の奥がぽかぽかするように感じます。守君が、大好きな人が考えてくれた特別な呼び方。その流れでもう一度りーちゃんって呼んでほしいな、なんてわがままかな?私もまー君と呼ぶ許可をもらって慣れるように何度もまー君と呼びます。…まー君にもりーちゃんと呼んでもらえるかという期待もちょっぴり入っています。


 でも、守君はそんな遠回しなことをしませんでした。直接私に聞いてくれたのです。どうしてほしいのか、と。…私は卑怯者で臆病者で半端者です。全力で頑張ろうと決めたはずなのに


 …そんな都合のいい話があるわけないでしょ!守君はちゃんと言葉にして伝えてくれて、私の言葉もちゃんと聞いてくれるのに、私が気持ちを隠しちゃ意味がないでしょ!!私の決意はそんなに軽いものだったの!?……違うでしょ!!


 私は守君に呼び捨てで呼んでもらうようにお願いしました。そっちの方が距離が縮まったような気がするというか、何となくの憧れがあったんです。…が、アレはヤバいです!!なんですか、なんなんですか!!もう心臓バクバクでこのまま死んじゃうんじゃないかと思いました!


 …なのに、なのにですよ!守君はそれを分かってまだ里恵、なんて呼んでくるんです!!ちょっと意地悪そうな顔はやっぱりどこか楽しげで、妄想の何倍も何十倍も、ううん、比べものにならないくらい素敵でした。…もう心がドキドキして、頭もふわふわして、このまま死んじゃってもいいかな?と思い始めたころ、守君はもっと強力な爆弾を落としてきました。…止めて!私はもう恋に落ちてるの!!これ以上は病み堕ちしちゃう!!


 …でも、実際は私の勘違いでした。こんなみだらな考えしてたからかな?“好き”ってはっきりと聞こえたような気がしたのに…。


 …うん、これからこれから!!もっともっと守君にアピールして、今度はちゃんと好きって言ってもらうんだ!最初と何も変わらない…いや、目的がはっきりした分だけプラスだよね?

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