第44話 ★

〜里恵視点〜


 お母さんに遅刻すると言われた私はすぐに準備を始めました。それはそれはすご〜く頑張りました。もし遅刻なんてなったら守君に先に行ってもらわないといけなくなります。そうなれば当然、私は一人きり。それは寂しいです。だからって、守君に待っててもらって2人揃って遅刻なんて絶対にダメです!…だから、絶対に2人で間に合うように行くんです!


 その甲斐あってなんとか間に合うような時間に家を出ることができました。…そう、です。少しでも何かあれば分からないような時間です。…そういうときに限って邪魔が入るのはどうしてなんでしょうか?私の前に葛原君が現れたのです。そのときの私の感情。それは無、でした。もしかしたら多少の未練が残ってるかもしれない。そう思っていたのに、何の感情も湧き上がってきませんでした。…それは諦め、なんでしょうか?別れたことに納得して、もう恋人関係になろうと思わなくなったから?


 でも今はそれより大事なことがあります。それは学校に遅れないようにすること。そうじゃないと私が遅くなったせいで巻き込まれた守君は、明日から先に学校に行ってしまうかもしれません。…もしかしたら、もう愛想を尽かしてしまったかもしれませんが、ここまで待っててくれたからまだチャンスがあると思い込みます!…そうしないと、蹲ってしまいそうです。


 それなのに、なかなか葛原君は私たちを解放してくれません。早くしないといけないのに、通してくれません。少しずつ焦りが大きくなってきます。今の私には余裕がないんです!


 その思いが伝わったのか、私話しかけるのをやめてくれました。だけど、今度は守君の方に矛先が向いてしまいました。…何で?守君は関係ないでしょ?どうして私と別れるように言うの?


 私の中に嫌な気持ちが出てきたのを感じます。葛原君に対する怒り、こんな人を過去の私が好きだったんだという呆れ、守君を巻き込んでしまった申し訳なさ、ただ聞いてることしかできない無力感。…どうして、こんなことになっちゃったのかな?私の見る目がなかったせい?


 暗い気持ちになりかけてた私を救ってくれたのは、やっぱり守君でした。守君が手を引っ張ってくれたんです。…私が何度この暖かい手に助けられてきたのか、きっと守君は気づいてないんでしょうね。もう私は守君が近くにいてくれないとダメなんです。


 今の私の目標は守君と両想いになることです!まだ私は守君に迷惑かけてばかりだし、守君に相応しくないのは分かっています。でも、いつか伝えたいです。「守君が助けてくれた瞬間から、私はあなたのことが好きでした」って…。

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