第38話

 「…っは!って、ぶ、部長!変なこと聞かないでください!」

 「え〜、いいじゃん。減るもんじゃないし」

 「私の気力が減るんです!」


 ようやく復活して少し離れた里恵さんがそう言った。それに答えたのはムードメーカーの女の子。…って、部長!?


 「…ぶ、部長ってことは、先輩ですか?すみません、タメ口で話してしまって…」

 「あ〜、いいのいいの。そんなの気にしないで。…今さらだけど、私は長部おさべ 華菜かな。よろしくね」

 「あっ、俺は杉田 守です。こちらこそ、よろしくお願いします」

 「もう、まもっちは堅すぎるよ!もっとゆるゆるでいいのに」

 「ま、まもっち、ですか?」


 …流石ムードメーカー。距離のつめ方が上手い。あだ名で呼ばれるのは新鮮だな。


 「あれ?しっくり来ない?…まもるんは?」

 「…まもるん。えっと、お任せします」

 「じゃあ、まー君。まー君は部活やってるの?」

 「いえ、やってませんよ。…長部さんは、里恵さんもだけど、何の部活をしてるんですか?」

 「ぶ〜。長部さん、なんて呼び方可愛くないからヤダ!かなかなとかって呼んで?」

 「わ、分かりました、かなかなさん」

 「さん、もいらないけど…仕方ないな〜」


 きっとかなかなさんみたいな人をギャルって言うのかな?周りの人を明るく照らしてくれるような存在。喜怒哀楽を全力で表現してくれるのがかなかなさんなんだ。


 「あっ、ついでにウチらの名前も教えとこうよ」

 「そうだった!えっと、この人はらんらん、でこっちはりんりん。その次がるんるん、最後がゴンザレス!」


 …えっ?聞き間違い、だよね?何で最後の人だけそんなにゴツいあだ名なの?前半もまるで適当に付けたようなものだったけど…。


 「ウチがらんらんこと、五月雨さみだれ らん。今年で2年生。よろしくね」

 「…ん、時雨しぐれ りん

 「つ、次は私でい、いいんでしょうか?わ、私は霧雨きりさめ 瑠璃るり、でしゅ!…あうぅ、噛んじゃった」

 「…全く、先輩達は。私は1年の郷田ごうだ 莉里須りりす。…言っとくけど、ゴンザレスなんて呼ぶんじゃないわよ?」

 「わ、分かってます。よろしくお願いします、五月雨さん、時雨さん、霧雨さん、郷田さん」


 みんなあだ名で呼び合ってるのか。なんか友だちって感じがしていいな!…って、あれ?そういえば里恵さんだけあだ名じゃなかった、よな?


 「後は里恵ちゃんだけなんだけど、何でか呼ばせてくれないんだよね〜。ねっ、まー君。まー君からお願いしてみてくれないかな?」

 「…えっと、何をでしょうか?」

 「里恵ちゃんだけあだ名で呼ばしてくれなくてさ〜。にぃにぃって。可愛いのに…」

 「…ちょっと部長!そんな猫の鳴き声みたいなあだ名はイヤですよ!!」


 話を聞いていた里恵さんが横からそんなことを言った。確かににぃにぃは可愛いと思うけど、本人が嫌がってるなら無理矢理はよくないし、かと言って1人だけあだ名がないのも…。まぁ、この人たちならあだ名のあるなしで接し方を変えるとは思わないけどね。

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