第28話
次の日の朝、俺は約束通り里恵さんの家に来ていた。そしてチャイムを押すとすぐに里香さんが出迎えてくれた。
「守さん、いらっしゃい〜」
「ありがとうございます、り…お母さん」
咄嗟に里香さんと言ってしまいそうで慌てて呼び直した。…こっちもお母さんと呼ぶことを約束したから、ちゃんとそう呼ばないとな。
「あらあら〜、無理しないで呼びやすい方で呼んでちょうだい〜」
「あはは、バレてました?」
「もちろん分かるわよ〜。大人を舐めちゃダメ、よ〜」
里香さんはそう言ってウインクした。…やっぱり、大人というよりもお姉さんって感じが強いな。まぁ里香さんは里香さんだし、必要以上に緊張しないからいいけど。
「っと、いつまでもそんなところにいないで中に入って〜」
「あ、はい。お邪魔します」
「あら〜、もう挨拶の仕方忘れちゃったのかしら〜?」
「…えっと、ただいま」
「そうそう〜、よくできました〜。お帰りなさい、守さん」
…ここはただいまで良かったんだろうか?多少の違和感はあるけど…里香さんが喜んでくれたからいっか!
そこで俺はリビングに通された。そこでは里香さんと2人きり。いつもは里恵さんが間にいたけど、何を話せばいいのか分からない。…って、そういえば要件があるって言ってたじゃん!それを聞けば良いじゃん!
「…まったく、里恵はいつまで寝てるのかしらね〜」
…だけど切り出すタイミングを失った。
「里恵さんは朝遅いんですか?」
「どうかしら〜?いつも大体このくらいの時間に起きてくるわよ〜。…もう少し余裕を持ってほしいのだけど、一体だれに似たのかしら〜?」
…話し方というか雰囲気は里香さんの方がおっとりしてるのに里恵さんの方が意外にドジっ子なのかも。
「あはは、どうでしょう?…ところで、俺に渡したい物があるって聞いたんですけど」
「そうそう〜。はい」
そうしてテーブルに置かれたのは銀色の物体。…って、これ!
「ま、まさか合鍵、なんてことはありません、よね?」
「何がまさかなのかしら〜?家の鍵よ〜?」
「なっ!」
合鍵、だと!?まだ出会って3日目の相手に渡していいものじゃないだろ!!流石に受け取るわけにはいかない!
「…これはまだ受け取れません」
「…それはどうしてかしら〜?」
「どうしてって、色々問題ありすぎです。俺が悪用しない保障なんてないですよ!」
「それはそうね〜。でも、悪用する保障もないでしょ〜?そんなことだったら自分以外に鍵なんて渡せないわよ〜。たとえ里恵でも」
「…それはそうかもしれませんが」
「そもそも、私の方がお願いしてるのよ〜?実際に使うかどうかは置いておいても、守さんに持っていてほしいの」
里香さんは真剣な表情でそう言った。
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