第22話

 俺は考える。開いたままのRAINのアプリを見ながら。…里恵さんにメッセージ送ってもいいのかな?


 『今日はありがとう。また明日からもよろしくね』後は送信のボタンを押すだけ。時間にすれば5秒もあれば終わる。だけど、その勇気がなかなか出ない。


 『いつもありがとう。…また、明日も来てくれる?』


 俺が迷ってると里恵さんの方から先にRAINが来た。それだけで送っていいか考えてた俺は迷いが吹き飛んだ。


 『こっちこそありがとう。もちろん行くよ!』


 恐らく俺の中で一番早く打ち込んだメッセージを俺は送った。…流石に単純すぎるな、俺。


 『うん!じゃあ、待ってる』

 『また7時30分くらいでいい?』

 『できれば、少し早めがいいな。お母さんが渡したいものがあるんだって』

 『了解。じゃあ、7時くらいにお邪魔させてもらうね』

 『うん!』


 そうして必要なやり取りを終えた俺たちは何気ない会話を続けた。お互いの好きなこと、嫌いなこと、趣味のこと…。俺も、きっと里恵さんもこの時間が終わるのが嫌だったんだ。


 ずっとこのまま話してたい。そう思っても、ずっとなんて存在しない。いつかは終わりが来るものだから。だから、終わらせる。…明日は学校だし、もう1時間もRAINを続けているから。


 『…じゃあ、名残惜しいけどそろそろ終わりにする?』

 『…もうこんな時間なんだね。うん、終わりにしないと』

 『楽しい時間はあっという間だね。…また、明日ね。おやすみ』

 『私も楽しかった。おやすみなさい』


 そうしてやり取りは完全に途切れた。だけど、里恵さんとの縁は絶対に途切れさせない!…なんて、深夜テンションなのかな?


 俺はすぐにベッドに潜り込んだ。そうして目を閉じたら、瞼に浮かぶのは好きな人の笑顔。…うん、今日も充実した1日だった。そう思えるようになったのはきっと、里恵さんと出会えたから。


 出会いは決していいとは言えないけど、俺の一番大切な人。彼女の存在が俺の中で大きくなるのが心地いい。まだ知らないことの方が多いけど、知れば知るほど好きが溢れ、愛おしくなる。


 ここまで大きくて強い感情はもう2度とないだろう。そんな確信がある。彼女には笑っていてほしい。できることなら俺の隣で。


 …自意識過剰でなければ、里恵さんに好かれている自信はある。そうじゃなきゃ、えっちなこともいいなんて言われるはずがないから。でも、俺に元カレを重ねてほしくない、俺だけを見て好きになってもらいたい。だから、頑張らないと。里恵さんの心を奪いたい。

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