第20話
「…むぅ、もういいもん」
…俺が里香さん(心の中ではお母さん呼びは諦める。とっさに里香さんって呼びかけても許してくれるでしょう、うん)と会話していると里恵さんが拗ねていた。
「ごめん、って」
「どうせ守君だって私のことをだらしない人だって思ってるんだ。…やることをやらない嫌な奴だって」
「そんなこと思うはずがないでしょ?課題も1人で分かってたし、ちゃんとしてない人はそんな風にできないんだよ?」
確かに1年生だし、まだ課題は優しいのかもしれない。それでも、内容をきちんと理解していないと解くことはできない。それだけで里恵さんが勉強頑張ってることは十分伝わるんだけどな…。
「…ほんと?私のこと、嫌いにならない?」
「もちろん!嫌いになんてなるわけないよ」
「…そっか。なら、うん。守君が分かってくれてるならお母さんの意地悪くらい気にしない!」
「全く、調子いいんだから。…じゃあ、お邪魔虫のお母さんはお風呂でも入ってくるわね〜」
そう言い残して里香さんは俺たちの側を離れた。そろそろ俺も帰る方がいいよね?そう思って俺が別れを告げようとすると、里恵さんの方が先に話題を切り出した。
「…これで、2人きりだね?その…えっちなこと、する?」
「な!何言ってるの!?そう言うのはダメだって昨日話さなかったっけ!?」
思いがけない提案につい声を荒げてしまった。里恵さんには少し悪いと思うけど…揶揄う里恵さんの方が何倍も悪いよね!
「うん。それでも、守君になら…どんなことされても、いい、よ?」
「…それは、えっちなことを里恵さんがしたいと思ってるの?それとも、俺に側にいてほしいだけ?」
里恵さんは顔を赤くして、それでも目を逸らさずに言った。なら、俺もちゃんと応えるべきだ。
「…分からない。こんな気持ちになったのは初めてで、うん。よく、分からない。…でも、守君となら、私はそういうこともイヤじゃ、ないから」
「…そっか。なら、悩んでくれていいよ。それでもし、もしもだけど、そういうことをどうしてもしたくなったら言ってほしい。それまで俺はずっと側にいるから」
「…うん、分かった。ちゃんと考えるべきだったね」
「うん。俺たちって、まだちゃんと話して2日、いや1日と少ししか経ってないんだから、お互いにもっとよく知ってからでも遅くないと思うんだ」
「…そっか。守君は私のこと、知りたいんだ」
「へ、変な意味じゃないから!」
「分かってるよ」
そう言って笑った里恵さんの表情は優しかった。夕飯のときの無邪気で可愛らしい笑顔ではなく、包み込むようなお姉さんみたいな笑顔。真逆のように思うけど、どちらも里恵さんの魅力を最大まで引き出してた。
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