第18話

 「ただいま〜!守君連れて来たよ!!」

 「…お、お邪魔します」

 「お帰りなさい、2人とも。それと守さんもただいまって言ってくださいな?」

 「…た、ただいま」

 「そうそう、そっちの方がいいわ〜。お帰りなさい」


 里香さんはそう言って迎え入れてくれた。自分の家じゃないのにそんな挨拶をすると、帰ってきたんだって感じがする。まだお邪魔するのは2回目なのに。…それがいいのかどうかは置いておいて。


 それから俺たちはリビングに移動していた。テーブルの上にあるのは…寿司!?昨日の唐揚げも美味しかったけど、今日はまた一段と豪華になっている。


 「…すみません、2日連続で押しかけてしまって」

 「あらあら。私が里恵に頼んだことだし、気にしなくてもいいのに。…でも、そうね。もし気になるなら1つ私のお願いを聞いてくれないかしら?」

 「お願い、ですか?俺にできることなら構いませんよ」


 ご飯をご馳走になるんだし、何かして欲しいことがあるなら当然手伝うつもりだ。…材料費とか払った方がいいのかな?5000円くらいで足りるの?


 「なら、私のことをお義母かあさんと呼んでくれるかしら?」

 「…お母さん、ですか?」


 里香さんからの予想外の言葉に俺は戸惑ってしまった。…でも、そんなことでいいなら構わない、のか?同級生の、それも異性の母親をお母さんと呼ぶ…大丈夫なのか?


 「たまにでいいんだけど、イヤかしら?未来の練習がしたかったんだけど…」

 「イヤというわけでは…。っと、未来の練習ですか?何かあるんですか?」

 「そうね〜。可能性がある、としか言えないわ〜。私は未来のことなんて分からないもの」

 「確かにそうですね。…分かりました、お母さん」


 そうだ。未来のことなんて分からないのが当たり前じゃないか。それなのに俺は周りの評判を気にし過ぎてた。里香さんがせっかく俺を頼ってくれたんだから、期待に応えないとな。


 「うふふ、嬉しいわ。早く本当の息子になってくれればいいのに〜。ねぇ、里恵?」

 「むぐむぐ。…はぇ?」


 お寿司を一心不乱に食べていた里恵さんが話しかけられたことでそんな反応をした。昨日は気づかなかったけど、目をキラキラさせて美味しそうに頬張ってる里恵さん、可愛いな。


 「…はぁ。我が娘ながら食い気ばかりで情けないわ」

 「…むぅ。言い返したいけど言い返せない。だってお寿司なんだもん」

 「まぁまぁ、確かにお寿司美味しいもんね」

 「だよね!美味しいものは食べるのが一番だよね!!」


 そう言って里恵さんは無邪気に笑った。里恵さんってお寿司が好きなのかな?

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