第16話

 それからは何事もなく放課後になった。…何度か里恵さんと目が合ったような気もするけど、意識し過ぎてるのかな?


 「…杉田君、私、少しだけ怒ってます」

 「えっ!?…え〜っと、どうして?」


 一緒に帰るために俺が話しかけると、ハムスターみたいに頬を膨らませた里恵さんがいた。…可愛いな。…って、いやいや!全く心当たりがないんだけど。


 「…杉田君は友達って言った。…まだ分からない?」

 「……?うん、ごめん、分からない」

 「むぅ、もっと話しかけてよ」

 「…そっか。明日からは話すようにするよ」

 「うん!」


 里恵さんは話したいって思ってくれてたのかな?それなら、嬉しいな。


 「じゃあ、帰る?それとも何かやることあるの?部活とかは?」

 「…ナイヨ」


 里恵さんは俺から視線を逸らしてそう言った。…絶対に何かあるよね?隠し事、下手なのかな?


 けど、どうすればいいのかな?何か予定があるならそれを優先するべきだし、部活とかでも里恵さんがグループから浮いたりしたら困るしな。…効果があるかどうか分からないけど、一か八か思いついたのをやってみるか。


 「…そっか。じゃあ、帰る?ところで、俺はちゃんとしない人って好きじゃないんだよな〜。やらなきゃいけないことをやらない人って信用できないもんね」

 「ごめんなさい!嫌わないで!」

 「うん?」

 「ぶ、部活、行ってくる…」

 「行ってらっしゃい。じゃあ、図書館で待ってるから頑張ってね」

 「…待ってて、くれるの?」

 「ん?もちろん。一緒に帰る約束したでしょ?」

 「!…うん!行ってくるね!!」


 里恵さんはそう言って元気に教室を出て行った。…まさか、こんな簡単に上手くいくとは。里恵さんは友達思いなのかな?部活よりも俺との約束を優先してくれようとしてたなんて。


 …俺も図書館で課題しないとな。結局昨日は最後までできなかったし、明日の授業で提出しないとだしね。里恵さんにああ言った手前、俺もちゃんとやるべきことをしないとな。


 「…杉田君、少しいい?」

 「志多さん?どうかしたの?」

 「…ここじゃちょっと。…2人だけで話したいんだけど、いい?」


 俺に話しかけてきたのは志多さんだった。里恵さんがいない時に話しかけられるなんてなかったよな?何かあったのか?


 「…それは構わないけど、人がいないところなんてあったっけ?屋上は開放されてないし、体育館裏とかは部活の人が来るだろうし、図書館では会話できないだろうし…」

 「…う〜ん、どうしよ〜?あっ!じゃあ、連絡先交換しよ〜。RAINやってる?」

 「あ、ああ、やってるよ」


 そうして俺たちはRAINのアドレスを交換した。…初めて女の子のRAINを交換できた。(母親を除く)なんか、いいな。

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