第9話

〜里恵視点〜


 「里恵?少し話をしましょうか」

 「お母さん?どうしたの?」


 杉田君が帰った後で私の部屋にお母さんがやってきました。いつもならこんなことはないのに、どうしたんでしょう?…なんてとぼける必要はないよね?


 「…里恵は今日、守さんとどんな会話をしたの?いくら守さんが優しい人だとしても、少し過保護なように思うの」

 「…うん、そうだよね。私、お母さんに謝らないといけないことがあるんだ。…私、わた、し、ね。その…」


 …何で今さら怖がってるんだろう?ちゃんと言わなきゃ、なのに。親より先に、それも自分の意思で死ぬなんて、一番の不義理なのに…。


 私が言葉に詰まっていると、温かい何かが私を包み込んだ。少し顔を上げると、すぐ側にはお母さんがいた。…あぁ、私、今、抱きしめられてるんだ。


 「…ごめん、なさい。ごてめんなさい!!わだし、じのうとして!!杉田ぐんに、どめられで!!」

 「!そう、なのね。あなたが辛いときに気づいてあげられなくてごめんなさい」


 私はお母さんに抱きついて泣いた。…私は今日だけで一体どのくらい泣いたのかな?1年分くらいの涙を出した気がします。それに私だけじゃなくて、お母さんも泣いていました。


 …それから少しして。お母さんも私もある程度落ち着いてきました。そのタイミングでお母さんはまた私に聞いてきました。その答えはもちろん決まっています!!


 「…もう、死ぬつもりなんてないのよね?」

 「うん。元カレのことはもう吹っ切れたから」

 「そうよね!守さん、いい人だったものね!」

 「…うん」


 もう私の心の中には杉田君がいる。葛原君にこっぴどく振られたのだって、杉田君に出会うために必要なことなんだと思ったら全く気にならなくなった。


 「…いくら私の娘だと言っても、色っぽ過ぎるわね」

 「…っは、何か言った?」

 「…いいえ、何でもないわ。なら、明日から頑張りなさい」

 「うん!頑張る」


 お母さんもそう言って応援してくれた。もちろん私もそのつもりだよ!杉田君よりも優しい人なんていない。…ううん、優しさだけじゃない。私がこんなに好きになる人なんて、後にも先にも(もちろん葛原君よりも)いない。それはまだ杉田君と会って?杉田君の優しさに触れて?半日も経ってないけど断言できます!!


 早速明日にでも告白を!そう、思うと不意に今日言われた『お前に魅力がない』という言葉が蘇ります。もし、そんなことを杉田君に言われたら?私は立ち直れる気がしません。…告白するときでさえ、怖いなんて思いませんでした。それが今は、凄く怖いです。


 そんな風に思考が悪い方に囚われそうになっていたとき、メッセージアプリ、RAINに通知が来ました。

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