第3話
「…いた、い」
「ごめんね」
「痛い、痛い、よ。どうして、私、何が、いけなかったの?…ぐすっ」
もう大丈夫だと思った俺は新妻さんを掴んでいた手を離した。すると、今度は縋りつくように新妻さんが引っ付いてきた。一瞬驚いたけど、啜り泣くような声を聞いた俺は背中に手を回して
「…和哉は、初恋、だったの。ずっと、ひくっ、一緒に、居れる、思った、のに」
「うん。」
「私、告白、したの。大好き、て。ぐすっ、付き合って、って」
「うん。」
「彼は!…ぐすっ、分か、たって。俺も、好きって、言って、ぐすっ、くれ、たの」
「うん。」
「デード、も、だくざん、ぐすっ、じた、のに。わだじ、お金、出して。彼ど、いっじょ、うれ、がった、の!!」
「…うん。」
それから新妻さんは声を上げて泣いた。そんな彼女にしてあげられることは、俺には何もない。
…どのくらい時間が経ったのだろうか?10分?15分?新妻さんは俺から少し距離を取った。それでも、最初よりはだいぶ近いけど。
「…ごめんね、杉田君。嫌なことに巻き込んじゃって」
「ん?別に気にしてないよ」
新妻さんは少し恥ずかしそうにそう言った。俺は目元が赤かったことには触れないで何気なく返事をした。だって、新妻さんは全く悪くないしね。
「…じゃあ、今日はもう帰ろうか?」
「!?…もう、こんな時間なんだね。うん、帰らないと。杉田君、また明日」
「あ〜、もし新妻さんが良かったら、なんだけど……一緒に帰らない?」
俺はそう提案していた。今の新妻さんを見る限りは大丈夫だと思うけど、もし新妻さんに何かあったら困るし、時間も6時30分を過ぎていて、外も暗くなっている。そんな中、女の子を1人で歩かせるのは嫌だった。
「…いい、の?迷惑じゃない?」
「大丈夫だよ。むしろ、ここで別れた方が大丈夫かな、って心配になっちゃうよ」
「…そっか。じゃあ、お願いします」
「うん、もちろん。…って、あ!先に寄りたい場所があるんだけど、いい?」
「もちろんいいよ」
「ありがとう。じゃあ、行こうか」
そう言って俺は歩き出した。その半歩後ろを新妻さんがしっかりと着いてきてくれることを確認しながら図書館に向かった。
「あ、杉田君!良かった。これ、杉田君のだよね?」
「はい!ありがとうございます」
図書館に着いたら、司書の先生が俺の鞄を持って待っててくれた。俺がほぼ毎日図書館で勉強してたから、先生とは顔馴染みくらいの関係になっていた。閉館の6時30分を過ぎちゃったけど待っててもらえて、申し訳なさと嬉しさを同時に感じている。
「気をつけて帰ってね。そっちの彼女さんも」
「はい、先生もお気をつけて。…じゃあ、行こっか」
「彼女、、、彼女。……あっ、はい」
そうして俺たちは帰路についた。
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