第12話 奇襲!?復讐!?
奇襲作戦の詳細も決まり、各自が準備に移り始めた頃、突如町の一角で爆発音が鳴り響いた。
慌ててその方向へ向かうと冒険者達と巨大な人影が既に戦闘を始めていた。
『ジーグモスをやりやがったのはどいつだぁ!?』
「あれは・・・ハヴァデストです。ジーグモスと同程度の力を持つ者なのですが、どうやらジーグモスの復讐に来たようですね。奇襲には驚かされましたが、逆にこれはチャンスです。ここでハヴァデストも討ち取ってしまいましょう」
「えぇっ!?皆はジーグモスとの闘いを終えたばかりでまだ怪我や疲れも癒えてはいないんですよ?」
「そんな泣き言を言っても相手は引いてくれません。撃退するくらいなら、相手が孤立している間に多少無理をしても倒してしまったほうが後々のためになります」
言っていることはその通りだろう。しかし、実際に戦っている皆は疲労困憊の状態だ。特に表の世界から来た私達はまだこちらの世界での戦いに慣れても居ないのでなおさらだった。こんな状態で勝つことはできるのだろうか?
「何をボケっとしているんです?あれを倒すのはあなたの役目ですよ?先ほど話したように私の結界を使いこなしてください。あなたがハヴァデストを早く倒せばそれだけ皆の負担が軽くなるんです」
「え?は、はい!・・・」
言われて私は咄嗟に呪文を唱え始めた。先ほどまでの柔らかな雰囲気はどこへやら、イマは厳しい視線で私にハヴァデストを倒すように指示してきた。
やはり彼女もこの世界の強者の一人ということか。
そして彼女自身も私の補助をするためと思われる呪文を唱え始めた。
戦況は明確に不利な状況だった。疲労や怪我の問題もあるが、そもそも奇襲されたことでこちらは戦闘準備すらできていなかったのだ。エギルさんやエクネアスさんがそれぞれ指示を飛ばして迎撃態勢を整え始めてはいるが、既に十数人程度は被害が出ている。幸いにもハヴァデストはジーグモスを倒した私を探しているため、吹き飛ばした相手などは放置である。今なら治療すれば間に合うだろう。
≪集中しなさい!今あなたがすべきことは奴を倒すのに全力を注ぐことです≫
呪文を唱えているためだろう。イマが念話を送ってきた。これも先ほど聞いていたものだ。驚かずには済んだが、本当に何でもありだなこの人。
いや、イマの言う通りだ。余計なことを考えている場合じゃない。私はこの呪文に集中しないと・・・
戦場もエギル達の指示もありどうにか均衡を取り戻しつつあった。さらに魔導士達により結界で足を封じて身動きできない状態にできていた。
『ぬぅ!壊れぬ。このうっとおしい枷、覚えがあるぞ。あの忌々しい結界と同じ力か!』
ハヴァデストが近づく冒険者達を払い除けながらも拘束の楔を壊そうと力を込めている。ジーグモスと同じでなりふり構わなくなればあれも長くは持たないだろう。チャンスは今しかない!
私は唱え終えた呪文を発動させた。
「フィドラ・ブライォヴ・スティグド・ハウナ《結界よ、刃と化して、貫け》!」
ジーグモスの時と同じ、いや、今との会話でその本質を理解したことによりさらに力を増した結界の刃がハヴァデストに向けて突き出された。
ハヴァデストもそれに気づき躱そうとしたが、両足を封じられた状態では碌な身動きも取れず、その刃に体を貫かれた。
『グッゴガァァ!なんだこれは!結界から刃が伸びるなど見たことがない。これも貴様かイマ!・・・いや、違う。隣の女、貴様だなこれをやったのはぁぁ!!』
刃を受けたことで力の源を感じ取ったのだろう。こちらに気づいたハヴァデストが怒りの篭った目で睨みつけるとその手から強大な力を込めた衝撃波が放たれた。
≪集中しなさい!≫
「
咄嗟に身を引こうとした私に再度イマから𠮟咤の念話が飛んできた。
ハヴァデストから放たれた衝撃波は、イマが目の前に出現させた結界が盾になり私達には届かなかった。
そうだ。ここにはイマも居る。彼女を信じて、私は私にしかできないことをやらないと!
「
私の言葉に応えて、結界の刃がさらにハヴァデストの胴体を切り裂いた。
『ギィガアァ!お、おのれぇ、イマめ!いつの間にこんな力を持つものを作り出していたのだ。こ、こんなところで我は、我はぁっ』
流石の巨人も胴体のほとんどを切り裂かれた状態ではその力を振るうこともできず、冒険者達の集中攻撃によりやがてその身を大地に横たえてそのまま息絶えた。
「か、勝ったぞーー!」
「治療班、怪我人の治療を急げ!重傷者を優先!できる限り死なせるな!」
冒険者達は勝利の雄たけびを上げる中、エギル達は迅速に指示を飛ばし重傷者の治療を急がせた。
「お、終わった。・・・っ!頭痛が。うぅっ」
「あれだけの力を使ってももう気絶せずに済むようになるとは、あなたはやはり才能が有りますね。お疲れさまでした。あなたも今日はゆっくり休んでください」
「そうさせて貰います。折角の勝利なのになんだか締まらないなぁ」
「そんなことはありません。あなたはすごいことを成し遂げたんです。その代償がその程度の頭痛で済んでいるんですから、誇るべきことですよ」
イマは満面の笑みで私をそう讃えた。
まぁ、そうなんだけどね。とはいえ痛む頭では考える気にもならない。私は大人しく部屋に戻って休むことにした。
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