第6話 対策会議
数日後、冒険者ギルド総本部から各ギルドの代表者へ対策会議の出席依頼の封書が届いた。
「対策会議の出席依頼とうとう来たね」
「えぇ。それで、私が言うのもなんだけど来てくれるのはミナでほんとにいい?」
他のメンバーは頷いている。リーダーが居なくなりギルド内の混乱もまだ収まりきってはいない。そんな中、私はギルド内で一番仲の良かったミナに同席をお願いした。反対意見も出るかと思ったが、意外なことに皆が賛成してくれ、ミナも他の人が良いならと了承してくれた。
「ありがとう。それじゃミナ、当日はよろしくね」
「私じゃ大して役に立てるとは思えないけど。こちらこそよろしく」
「ううん。いてくれるだけでとても心強いよ」
その後は当日話す内容などをミナと準備している内にあっという間に対策会議の日を迎えた。
その日、冒険者ギルド総本部の会議室内は沢山の人で溢れていた。そこには各ギルドの冒険者だけでなく他種族の代表者も集まっていた。
人族の者達は何故ここにエルフやドワーフなどが?とさりげなく視線を向けていたが、彼らはそ知らぬふりで会議が始まるのを待っていた。
そこにギルドマスターのエギル・レンが現れた。
「皆さん本日はお集まり頂きありがとうございます。さらにエルフ族、ドワーフ族、ホビット族、獣人族の代表者の皆さん、招集に応じて下さったこと誠に感謝致します」
「御託は良い。我らは神話の件について聞きに来ただけだ。人族が何故我らですら知らなかった詳細の話を知っているのか、教えて貰おう」
エルフ族の代表者が話を遮るようにそう言った。
他の人々は突然の発言にどう反応するべきかと視線を彷徨わせる。
「もちろんそのお話も致します。しかし、本題は別にあります。これからお話しすることはここに集まって頂いた総力を結集して当たらねばならない事態なのです」
エギルはそう言ってから、エメアを壇上に招いた。
「彼女はエメア・フェルト。この前の大戦の生き残りの一人です。これから彼女にあの戦いで何があったのか、その後に知った世界の秘密について説明をしてもらいます」
エギルは頼むと言ってから一歩下がった。
その場の全員の視線がエメアに向いている。こういう経験がほとんどないエメアは思わずその雰囲気に飲まれかけたが、ミナの頑張れという視線に勇気を貰いあの時のこと、そしてその後に出会った情報屋から聞いた話をその場の全員に説明した。
「ジーグモス?そんな怪物の存在などとても信じられん」
「だが、あの大戦で冒険者側が敗北したのは事実だぞ」
「そんなことより結界の話の方が大ごとだろう。結界の外にはそんな怪物たちが山ほどいるということじゃないか」
話し終えて一息ついたタイミングで話を聞いていた者達が周囲の人を相手に議論を始めていた。
「皆さんお静かに!まだ話は全て終わっておりません!」
エギルが声を張り上げてその議論を止めてくれた。
「その時情報屋から受け取った映像装置、そしてハイネア聖堂跡地から回収してきた石板がここにあります。まずは映像装置をご覧ください」
そうして黒い箱を机の上に置き、『写せ。残された記録を。』と唱えた。
すると箱の上方に光が照射された。光は次第に映像を映し出していた。
それはジーグモスが出現した時のものだった。
ジーグモスにより冒険者たちが一方的に殲滅されていく。
その中に知り合いの姿を見つけた者たちは悔しそうにテーブルを叩いた。
その映像が終わると、箱から照射されていた光も収まっていた。
「確かにあれは我らエルフが受け継いできた伝承にある怪物にそっくりだった。その石板を見せて貰えるだろうか」
エルフ族の代表者がそう言ってこちらに近づいてきた。
私は持っていた石板を彼に手渡した。
「ありがとう・・・これは、私が知っている者よりさらに古い文字のようだが、どうやら本当に例の結界についての記載のようだ」
「読めるんですか?」
「一部不明な文字もあるが大体はな。我らの村の研究者であればより詳細なことも分かるだろう」
そう言って彼は石板を返してくれた。
「エメア嬢、そしてエギル殿、我らエルフ族は貴殿らの話を信じよう。世界の裏側の敵を倒すまで同盟を結ぶことを約束する」
「エイスさん、同盟協力感謝する」
「我らも右に同じじゃ」
「ここまでの証拠を見せられては信じぬわけにはいきませぬな」
「俺達ももちろん協力するぞ。あいつらの弔い合戦だ!」
エルフ族の代表者の言葉を皮切りに他の各種族の代表者達、そして冒険者達も次々に協力を約束してくれた。
この世界の人達の思いが一つになった瞬間だった。
「となれば、まずは要であるこの石板の結界魔法の解析を急がねばなりませんな。至急エルフの里から研究者を呼び寄せましょう」
エルフの人達が動き出そうとしたところにミナが声を掛けた。
「あ、あの実はハイネア聖堂跡地でエメアがその結界魔法を発動させたみたいなんです?」
「な、なんですと?!すでにこの内容を理解して使いこなしたのですか?」
前のめりに尋ねてきたエイスさんに思わず一歩引きながら私は答えた。
「い、いえ。その、石板の文字は読めなかったんですが、何故か内容が理解できた気がして。あの時は咄嗟のことだったので。しかも無理に発動したせいか、そのあと気絶してしまいましたし」
それを聞いたエイスはしばし考えるような仕草を見せていたが、
「なるほど。理由は不明ですが、感覚的なもので理解して発動できたのであれば、あなたはこの結界魔法の適正がかなり高いのかもしれません。宜しければ解析作業に参加して頂けないでしょうか?」
「もちろん。私でお役に立てるのであれば」
私にできそうなのはこの結界魔法を身につけて皆を守ることくらいだ。私は二つ返事で頷いた。
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