【雪平忍(1)】
雪平が目覚めると、四畳半ほどの狭い牢獄のような空間に閉じ込められていた。
まわりに見えるのは、打ちっ放しのコンクリートの壁と床、出入口らしい鉄の扉は電子錠なのか、ドアノブは付いていない。
そして、自分の近くで横向きで倒れている少女──凛はまだ気を失っているようで、呼吸以外の反応はなかった。
捕らえたのなら、男女は別々の部屋に監禁するのが定石であろうが、なぜか自分たちは同じ部屋にされていた。ひょっとしたら、親子と思われたのかもしれない。
雪平の同い歳の友人には、高校生の子供がいる。そう見られてもなんの不思議もないし、それは自然の流れなのだが、それでも、雪平はどこか釈然としなかった。
「オレはまだそんな歳じゃねえよ、アホが」
不機嫌そうに独りごつ。
続けて凛の様子をうかがう。乱れ髪が顔を隠してしまっているためによく見えないが、怪我や乱暴された痕跡は特になさそうだ。
「おい、お嬢ちゃん……」
揺り起こそうとしたが、戦闘員たちとやり合う直前、具合を悪くして吐いていた事を思い出し、それをやめる。
今度は鉄扉へと近づき、耳を当てて外の様子をうかがう。だが、何も聞こえない。扉を伝ってブーンという作動音がわずかばかり聞こえるだけであった。
「クソッ!」
扉を背にしてすわり込む。
もはや完全に打つ手は、ない。
ボサボサ頭を片手で掻き上げた雪平は、疲れきった表情で天井の蛍光灯を仰ぐ。次いで視線を下ろして腕時計を見てみれば、時刻は午後6時を過ぎるところだった。
(美雨……どうか無事でいてくれ!)
雪平はふたたび蛍光灯を仰ぎ、離ればなれになっている恋人の無事を願った。
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