赤黒い狂気
【莉子(1)】
悲鳴と絶叫が飛び交う。
女性、男性、老人、子供。
阿鼻叫喚。
人々は逃げ惑う。
黒い戦闘服の集団に追われ、生存本能に従って逃げる。
走って、走って、園内を逃げまわる。
けれども──ひとり、またひとりと捕まり、黒装束の集団に金属バットで尻を何度も打ち抜かれては倒れ、キャビンに幌が付いた中型の軍用トラックでどこかへと連れ去られていく。
「うっ……んんっ……」
うつ伏せで倒れて気を失っていた莉子が、逃げ惑う人々の足音や悲鳴で目を覚ました。
莉子はゆっくりと気だるそうに起き上がり、四つん這いの姿勢になる。低温火傷でもしたのか、炎天下で熱せられた煉瓦の地面と密着していた部分の肌がヒリヒリと痛い。
「痛ッ!?」
だが、莉子は露出している素肌ではなく、白いショートパンツに包まれた尻を片方の手で押さえた。
(なんでこんなに、お尻が痛いの?)
途切れた記憶を手繰り寄せるかのように、莉子は痛む尻をさする。
ジェットコースターの惨劇を目の当たりにした直後、誰かの悲鳴が聞こえたので振り返ってみれば、ガスマスクを被った数名の暴漢たちがバットを振るってほかの来園客を襲っているところだった。
(そうだ……それから、彩夏や
痛むお尻を片手で押さえつつ、ゆっくりと立ち上がる。辺りを見渡せば、近くに人の気配はどこにもなかった。
「あれっ、彩夏? リナ?」
いくら探してみても、ふたりの姿はやはり見えない。大声で名前を呼びたいが、すぐアイツらに見つかってしまうだろう。
そう考えた莉子は、物陰に身をひそめつつ、周囲を警戒しながらほかのエリアへと移動を始めた。
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