ミルオレ
「さてと、どうしようかアイリス?何して遊ぶ?」
「遊ぶのですか?お手伝いはしなくても良いのですか?」
「アイリス、仕事も大事だけれどもね息抜きも同じくらい大事なんだよ?」
「そう、なんですか?でもまだ何もしてませんよ?」
「おっと、賢いねアイリスは……。でも良いんだよ。アイリスは今まで頑張ってきたんだから、今日も明日も明後日も遊んだって良いんだ!さぁ!アイリスしたいことは無いかい?何でも良いんだよ?さぁ、言ってごらん!」
「や、やりたいことですか?うーん……」
元気がアイリスに遊んで貰おうと、アイリスを困らせている時だった。
「汚い面をアイリスに近づけるでない!人間!!!」
その声と共に電撃魔法が元気を襲った。
「ぎゃぎゃぎゃぎゃ~ぁぁぁぁ!!!」
元気の髪の毛が逆立ち、全身がブルブルと震え白目をむいてしまう。アイリスはそれを目の前で見てしまい。気絶してしまった。
元気は感電が終わると、すかさず声の主を魔法のロープで縛った。
「くっ!小癪な!こんな物!くっ!はなせぇ人間!」
黒いスリッドドレスを着た黒髪の美女が身悶えている。プリッとした生足が美味しそうだが、今はアイリスの方が心配な元気。
「まったく朝から何だよ!お前は!ビックリするだろ!アイリスがビックリし過ぎて、気絶しちゃったじゃないか!」
元気はアイリスを抱きかかえると怪我をしていないか、しっかりと確認する。可愛いお手々も、あんよも怪我はしていない様で、元気は安心する。
「汚らわしい手でアイリスに触るな人間!ぶっ殺すぞ!クソ、この縄をほどかんか!」
「殺すとかわめいてる奴の縄なんか、解くわけ無いだろ?馬鹿め」
「フフフフフ、良い度胸だ人間、殺さぬから縄を解くがよい」
「ああそうですか。ってホイホイ信じるかっての、大体お前、誰だよ?エルフッぽいけど見かけない奴だな?」
「人間に名乗る名など無いわ!」
そう言いながら睨んでくる、見た目エロくて美人なエルフに、元気はイラッとする。
「あぁ、そう、じゃぁそこで永遠にそうしてろ、まったくアイリスと遊ぼうと思ってたのに……」
元気がそういって、家の中に入ろうとしたときだった。ジンベイを着たフェルミナが現れた。
「ミルオレ、ここにいたのか。何して遊んでるんだそれは?」
「フェルミナ!良いところに来た!あのゴミ人間から娘を!アイリスを取り戻してくれ!」
「ゴミ人間?……あ、元気……」
元気を見て固まるフェルミナに、元気がニコリとしてみせる。
「やぁやぁ、フェルミナさん?今日も元気そうだね?そのお方は……お友達かい?」
「いや、まぁ、その……旧友だ!昨日たまたま偶然……出会ってだな!な!ミルオレ!」
「な、何を申しておるのじゃ、フェルミナ!昨日魔王城からミノス達と一緒に、助けてくれたでは無いか!」
「ミノス達?」
「お!そうじゃ!わらわには森の仲間達も、ミノスもおるからの!貴様のような人間の小僧など、ひとひねりじゃわ!早う娘からその汚い手をはなさんか!ゴミ虫め!」
「ば、馬鹿!ミルオレ!昨日のことは元気には内緒って言っただろ!」
「フェルミナさん?どういう事なのかな?……かなぁ?」
ミルオレの罵倒に笑顔が深まる元気。
「そ、その笑顔はやめろ元気、何か怖いから……ミノスも居たし、グレイもいたぞ!そうだ!イケメン達もだ!私だけじゃない!」
次々と仲間を売り出す。正直者のフェルミナだった。
「ちょっと待ってなさい。アイリスを寝かせて来るから」
部屋の中へ戻り。アイリスをベッドに寝かせると家の外に出る。フェルミナは逃げているかな?と思ったが、ちゃんといた。
「で、フェルミナ?昨日何があったんだ?怒らないから話してみなさい」
「お、怒らないのか?本当だな?やっぱり元気は優しいな!よし!教えてやろう!」
信用出来ないワードの上位である。怒らないからを信用したフェルミナは、昨日の夜の出来事をペラペラと、自信満々に話し始める。
エルフとは本来、賢い種族なはずだが、フェルミナは日に日にお馬鹿になっている気がする。でもポタンは聡明なので、個体差があるのだろうか?と元気は思う。
「ほうほうそれで、魔王城を崩壊させて、姫を連れて来て。ミノスは奴隷狩りからの避難民を連れて帰ってくる。ということか?それは凄く、頑張ったね~。って馬鹿!何やってんだよ!!!向こうには、戦場から帰った魔族もいるんだぞ!お前らが乗ってった巨人で、破壊者の場所がバレたらどうするんだ!!!」
元気が怒ると、フェルミナが半べそをかきながら怒る。
「げ、元気!お、怒らない。といったでは無いか!」
「嘘つきなクソ人間め!フェルミナ!早く縄を解け!!!コイツを一緒にぶっ殺してやろうではないか!ハハハハハ!覚悟しろよ馬鹿め!!!」
本来ならば、美女の罵倒はご褒美なハズなのだが、なんか腹が立ってしまう元気。
「何だ!人間!それ以上近づくな!おい!汚らわしい!きゃん……」
バチン!とお尻をひと叩きすると……スレッドドレスから出ているお尻が、ぷるるるんと揺れ……可愛い声が出た。
「ゴミが!触るな糞虫!!!汚らわしい!!!ぶっ殺してやるからな!!!覚えていろよ!!!」
もう一度叩くすると、ひゃん!と可愛い声が出る。
「や、やめろ!貴様!やはり人間とは卑怯でっひゃん、下劣でっやん、ゴミッふん、お、おい!やめぬか!」
「げ、元気よ、そろそろ許してやってはどうだ?」
「俺は何されても良いけどさ、ミリャナ達にコイツが何かしたら。俺は絶対にコイツを許さないよ?」
元気は強めにフェルミナを睨む。その視線を受けてフェルミナが動揺する。
「そ、それは……」
「さっきの電撃だって、もし、俺じゃ無くてミリャナに当たってたら、どうなってたか……」
どうなっていたか思い当たり、フェルミナが黙る。
「はっ、ゴミが!!!お前ら人間がどうなろうと知った事では無いわ!!!貴様などさっさと死んで……がはっ!」
一瞬の出来事だった。フェルミナがミルオレの腹に剣を突き立てた。
「ミルオレ、元気は我らエルフの恩人だ……それ以上の暴言は……聞き捨てならない」
フェルミナの瞳が静かな怒りと悲しみで揺れる。ミルオレの口と腹からは、血が溢れ出し地面に染み込んで行く。
「フェ、フェルミナ……なんで……」
「ミルオレすまない、もっと私が言い聞かせていれば良かったのだ。……私も一緒に死ぬから、許してくれ」
「フェ、フェルミナァ……」
そういって二人は抱き合い、泣きはじめてしまった。
「馬鹿!死ぬとか簡単にいうな、どけ!早とちりが過ぎるぞ!睨んだのは!コイツをちゃんと見張っておけ!って意味だ!まったく」
そういうと元気はフェルミナをどけて、ミルオレの治療をする。
「だ、だってあんな怖い目をしたのは初めてじゃないか!?」
フェルミナが泣きながら元気に、文句を言う。
「そりゃそうだろ!魔王城は壊してくるし!朝から電撃は喰らうし!アイリスは気絶しちゃうし!本当にミリャナだったらどうするつもりだったんだよ!」
「そ、それは……」
「それに、ミノスが連れて来る人達の食事はどうするんだ?住むところもだ!考えているのか?」
「い、いや……」
「じゃぁ、魔族が全力でここに攻めてきたらフェルミナ、お前は一人で皆を守れるのか?」
「……」
フェルミナが完全に黙り込んでしまう。やっと自分のやったことの重大さに、気付いたようだ。
「その、今更じゃが……。フェルミナを責めるのは、やめてやってもらえぬじゃろうか?わらわの為に全部やった事じゃ、その、すまぬかった」
療治が間に合った様だ。喋り出したミルオレにひとまずは安心する。
「ミルオレさんだっけ?話しをする気はある?」
「うむ、フェルミナに刺されて、熱が冷めた……落ち着いた」
「すまぬ、ミルオレ……すまぬ、元気……」
フェルミナがシュンとしながら謝る。
「もういいよフェルミナ。以後絶対に勝手な事はするなよ!あと浜辺の見回りをするように!魔族が攻めてきたら本当に大変なんだからな!」
「わ、わかった!」
ぱぁ!と笑顔になるフェルミナ。素直で憎め無いんだよなぁ。と元気は思う。
「すまぬが元気とやら、アイリスと会わせて貰えぬだろうか?ずっとずっと……会いたかったんだ……」
「はぁ、わかった。もう暴れたりするなよな、次やったら魔国に送り飛ばすからな!」
「あぁ、約束しようもう暴れたりしない」
元気が紐を解くと……バッと飛び起き、ミルオレは高らかに笑い始めた。
「はっはっは!かかったな人間め!フェルミナ!良くやった!やはり人間は馬っぎゃ!」
元気はミルオレをもう一度縛る。そして、静かにミルオレを見るフェルミナに問いかけた。
「フェルミナ、ミルオレを見てどう思った?」
「馬鹿、だと思った」
「俺もそう思った。フェルミナはこうなっては駄目だぞ、怒られてる内にちゃんとしなさいね」
「わかった。じゃ、私は森の皆と話して、浜辺の監視をどうするか決めてくる」
「フェ、フェルミナ?」
「ミルオレ……それは駄目だ。私はお前と本当に、死ぬ覚悟だったのだ……」
そういうとフェルミナは、寂しそうに森へと歩いて行った。
「あの……ごめんなさい」
フェルミナの寂しそうな後ろ姿を見て、フェルミナが本気で悲しんでいる事に気づいたミルオレが元気に謝る。
「まったく……」
そういうと元気はミルオレの縄を解く。今度は大人しい。
「後で謝っとけよフェルミナに、あんなに落ちこんでいる所は初めて見たぞ」
「私もじゃ、許してくれるだろうか?」
不安そうに、フェルミナの去った方を見やるミルオレ。
「フェルミナは優しくて良い娘だろ?ちゃんと話せば許してくれるさ。それはお前の方がわかってるだろ?」
「そ、そうじゃな、人間……。いや。元気よ。良いことを言うではないか!ちょっとあやまって来る」
急いで駆け出そうとするミルオレ。
「おい!アイリスは?」
「眠っているのだろう?」
「お前のせいでな?」
「わ、わざとではない!……。そのまま寝かせといてやってくれ」
「わかったよ」
「では後で改めて挨拶に行くから、待っておるがいい!」
そういうとミルオレは、急いでフェルミナを追いかけていった。
まったく……。と元気は思いながら。走り去るミルオレのスリットドレスから覗く生足を見送り。アイリスの様子を見に家の中に入っていった。
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