ふんわりと

 神モードを解除してバイクを森に隠し、家に帰ると椅子に座りミリャナが起きていた。


「お帰り元ちゃん」


「た、ただいまミリャ……どうしたのこんな時間に?」


「それは、こっちのセリフよ?何処にいってたの?」


「ちょっと、散歩に……ね……そう言えばアイリスは寝た?」


「あれから暫く泣いていたけれど落ち着いたのね、今はグッスリ……」


「そ、そう……良かった」


 部屋には重い沈黙が流れる。


「何か怒ってる?」


「あら?わかるの元ちゃん?」


「まぁ、何となくね」


「何でか解る?」


「あんまり……何かゴメンね」


 ミリャナが元気を見て溜息をつく。


「俺さ、ゴメン、鈍いからさ、ほら、子供だし!」


「こんな時だけ子供ぶってズルいわよ?」


「そ、そうだねゴメン」


「ごめんなさい、謝らないで私が勝手に怒ってるだけなの本当にお姉さん失格ね、ごねんね元ちゃん」


 そういうと顔を覆うミリャナ


「ちょっと、話しをしようかミリャついてきて」


「何処行くの?」


「ドライブさ」


 そう言ってミリャナを外に連れ出すと、元気はバイクを森から持ってきて後部座席に座らせる。


「しっかり捕まっててね」


「え?ひえぇぇぇぇぇぇ!?」


 バイクを浮上させるとアニメでしか聞いたことない悲鳴を上げ、しがみつくミリャナについ元気は吹き出してしまう。


「ちょっと元ちゃん、落ちないのこれ?大丈夫なの?」


「大丈夫だって、俺がミリャを落とすわけないだろ?」


「そんな言い方ズルいわよ!わかってるけど、わかってるけどぉ~!」


 もうちょっとからかいたいけど、お話しがメインのドライブなので控えておく。


「周りを見てご覧よ」


「ま、まわり?……わぁ!綺麗!お星様の中にいるみたい!!!」


「ハハッミリャはロマンチストだね」


「ロマンチスト?」


「ん~、素敵な空想家かな?」


「わからないけど素敵な空想家は解る気がするわ」


「それは良かった、それで何におこってたの?」


 暫く沈黙した後ミリャナが元気の背中に顔を埋める。


「私ね、心配しか出来ないのよ。何もしてあげれないの……アイリスを見て凄いって思ったの、あんなに小さい子があんな決心をして私は何してるんだろって」


「アイリスの場合は特別……って訳でもないんだろうけど、ミリャナはミリャナで頑張ってるじゃないか、孤児院に毎日行って子供の世話してさ、俺には出来ないよ」


「あれは、私の自己満足で偽善なの……私は元ちゃん達が思ってるほど、良い子じゃないわ。あの子達がいないと私が寂しかったの、ミールもポタンも、もちろん元ちゃんも……でも、元ちゃんは知らないところで色んな事してて、凄い事してるんだろうな。って思うんだけど、心配で、でも何も出来なくて……私、何言ってるんだろ変ね、何言ってるかわかんないや」


 そう言ってへへへと笑うミリャナ。


「いいよ、続けてわかるから」


 元気は続きを促す。


「だから、そのね、駄目なのよ、心配で。とか言ってるけど、元ちゃんがいつか何処かに行っちゃそうで私が不安なの、本当は見守ってあげなくちゃって思うんだけど、元ちゃんがいなくなることを考えるといても立っても要られなくて……」


「それで起きてたの?」


「だって、お部屋に行ったらいないんだもの、心配で不安になるわよ、家の中探しても家の周りを探してもいないし」


「家の外に出たのかい?夜はあんまり出ないでよ心配じゃないか」


「私も同じよ!」


「ゴメン、次からちゃんと言っていくよ。それに、ミリャがいるから俺はここに戻ってこれるんだよ?ミリャはそれがわかってないな」


「どういうこと?」


「ミリャとポタンにご飯を作ったり話しをしたりするために、元気な顔を見るために帰って来るんだよ。

 俺もミリャと一緒なんだミリャがいないと心配で不安で嫌だからさ、だから、何も出来ないとかじゃ無くて、元気でいてくれるだけで俺は嬉しい。大体今日だってミリャがいなかったら、アイリスをどうしていいかわかんなかったんだから」


「フフフ、ビックリしたわ、焦ったら元ちゃん、ミリャじゃ無くてミリャナって呼ぶのね?」


「え?そうだった?必死だったから」


「構わないわよ呼び方なんて何でも、今日はアイリスを見てたら、私はこのままで良いのかしら?って焦っちゃったの……」


「う~ん、ミリャには変わんないで欲しいな~そりゃ、いい変化なら良いけどさ、焦っても良いことないよ?」


「じゃぁ、私はこれからも心配しながら、不安になりながら過ごせば良いのね?」


「あ、いや、以後心配かけないように気をつけます……けどさ、不安にはならなくて良いよ、絶対に何処にも行かないからさ」


「あ~あ、何か何も解決してないようだけど、話したらスッキリしちゃった!」


「そう?それは良かった。そうだ面白い物を見に行こうか」


「面白い物?」

 そういうと元気は領主の城までバイクを飛ばす。


 到着すると丁度袋の中の金貨や財宝を城に運び込む作業をしている最中だった。


「叔父様達は何を隠そうしているのかしら?」


「奴隷の達の生活費がいるって言ってたからさ、中央に行って貰って来たんだよついでにアルカンハイトに手を出すな。って言って来たから当分は平和……」


 そこまで言ってハッとする、言わなくて良いことだ!


「元ちゃん?心配になることしないって言ってなかった?」


「言った」


「不安になることもしないって」


「言った」


「じゃあ、あれは?」


「あ、あれが最後だよ……と思う」


「はぁ、見つかったら大変だから帰りましょ」


「そ、そうだね」


 家に帰ると、疲れたからもう寝るね。と言ってミリャナは部屋に戻る。


 取り敢えずは、機嫌良くなったかな?と思い部屋に戻るとドアの前は綺麗になっていた。


 念のために、床に鼻を着けてクンカクンカするが特に気になる臭いはせず、ペロリとしても床の味がするだけだった。

 やれやれと思いながら元気はベッドに入り眠りに着くのだった。



 朝になると元気はいつも通り、二人分のお弁当を作り、朝食を今日は4人分用意する。

 ミールは起きてくるのが昼間なので無しだ。


「お、おはよう御座います旦那様」


 そういってアイリスが起きてくる、昨日と打って変わって、顔がスッキリしている。

 顔つきが年相応になっている気がした。


「はい、おはよう、アイリス……その旦那様ってのは?どんな心境?」


「城に来ていたメイドさんがお父様をそう呼んでいたので、お手伝いさんってそうかな?と思いまして」


「おぉ、メイドさんか、良いねメイドさんまぁ、聖人様よりか何倍もましか、じゃあ、今日から宜しくね、メイドさん」


「はい、頑張ります!それと、あの……昨日のことですが、ミリャナ様に色々と聞きまして……スミマセンでした」


「いや、わかったらいいよ。次から気をつけてね、悪い大人も多いからさ、まぁ、知ってるだろうけど」


「はい!次はもっと大きくなってから旦那様とします!」


 そういうと笑顔でアイリスは顔を洗いに行く……何かとんでもないことを言ったような?


 まぁ、取り敢えずはメイド服だなと思いひらひらで可愛いメイド服をアイリスに持っていくと目をキラキラさせて喜んでくれた。

 背中に大きなリボンがついている。


 皆が起きたら今日は元気の作った料理をアイリスが運んで朝食だ。

 食べ終わるとアイリスが食器を洗ってくれる。台所に手が届かないのでアイリス専用の足台を出してあげた。


 ミリャナを見送る時に一応、昨晩アイリスに何と言ったのか聞いておくことにした。


「ああいうことは、本来、大好きな人としかしちゃ駄目なのよ。っていったの。愛し合ってないとしちゃ駄目でしょ?子供の時にすると、赤ちゃんが出来てお腹が膨らんで、お腹を引き裂いて出てきてどっちとも死んじゃうから、絶対しちゃ駄目よ!って、そして、そんな事をするような男の人にも近づいちゃ駄目って……少し怖がってたけど、解ったみたいだからもう大丈夫だと思うわ」


「説得力が凄いな……。って事はミリャナはどうすれば子供が出来るか知ってるって事?」


「そりゃ……」


 そこまで言ってミリャナが真っ赤になり元気を肩を叩く、あぁ何かいいなこれ。


「パパ、アイリスに変な事したら、この世で生きていけないようにするからね」


「す、するわけ無いだろ!怖いこと言うなよ?」


 ポタンは本当にやってしまいそうで怖いのだ。


「アイリス、何かされたらこの先輩に言いなさいね」


「はい!いってらっしゃいませ!先輩!」


「お留守番宜しくね。アイリス行って来ます」


「はい!ミリャナ様!」


「行ってらっしゃい!」


 二人を見送るとアイリスと二人で家に戻る。さてと何をして遊ぼうか?


 取り敢えずはミリャナがしてくれた様に、アイリスを甘やかそうかな。と思う、まずは膝枕してプリンでも食べさせてあげよう。その後は耳掃除だ……。何かワクワクする、こういう毎日が良いのだ!


 と元気は心の底から思ったのだった。

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