残り香

 夕食も終わり皆が眠りについた頃元気は出かける準備を始める、自分の平和を守るために王国にちょっと脅しをかけておこうという魂胆だ。


 毎回毎回、ヴァイドが呼び出されてメルディに泣かれては堪らない。


 元気がベッドに座って靴を履いているとヒタヒタと忍び足で部屋に誰か近づいて来る。

 誰だろう?泥棒か?そう思っていると部屋の扉が開く、するとそこにはアイリスが立っていた。

 俺が起きている事に驚いている様だ。


「どうした?アイリストイレは向こうだぞ?」


「あの、そうじゃ無くてお、お礼をしに来ました」


「お礼?さっきしてくれたじゃないか?」


「あの、そうじゃ無くて……」


 そういうとアイリスは足を開いてワンピースのスカートをゆっくりと上げていく……。

 窓の外からの月明かりが痩せ細った子供の身体を鮮明映し出す。下着も脱いで来たようだ。


「な、何やってるんだ?アイリス?」


「船の中で、男の人に聞きました。

 男の人はその、こういう事が好きで、私の中に入れると気持ちいいって……なので」


「お礼に、それを俺にやりに来たのか?」


 自然と声が低くなってしまう、アニメや漫画ならばウェルカムだがリアルでやられてしまうと怒りが先に来てしまう。


「わ、私はもう行くところがないですし、働けないですし何の役にも立ちません、のであの、元気お兄様のお役に立つにはこうするしか無いと……思いました。」


 そう言ってぎこちなくニコリと笑うアイリスのスカートを握る手が震えている。


「アイリス、スカートを下ろしなさい」


「で、ですが」


「早く!」


「は、はい!」


 スカートを下ろすと、ぷるぷる震えるアイリスが震えた声でいう。


「あ、あの、私は汚いらしいので、お口やお手々であれば、ど、どうですか?ずっと見ていたので出来ると思いますし、お手々であればちゃんと出来ると思いま……」


「もういい」


「ですが、わたしは」


「もういいから!」


 元気はアイリスの言葉を遮る。何だこれ、イライラし過ぎて吐き気がする。あの魔族共滅ぼしておけば良かった。

 そう思って元気はハッとする、アイリスを怒鳴ってしまった。


 アイリスは歯を食いしばりながら、賢明に笑顔で佇んでいる涙目いっぱいで身体中がブルブル震えている。


 ぷるぷるではなくブルブルと震えているのだ。初めて見る光景にフツフツとグツグツと怒りが溢れて出して止まらない。


「わ、私は、もう、い、行くところも、魔族の、皆の所にも、戻れないです。ので、どうか、お願いします。わたしを殺さないでください、何でもしますので、ここにいたいです……何でもしますので」


 アイリスがそういうと、足を伝い溢れ出した尿がアイリスの周りに広がる。


 オシッコの前に流す物があるだろう!

 そう思うと元気はアイリスに駆け寄り抱きしめた。


「ミリャナー!ミリャナー!ちょっと来てー!もうダメだー!ミリャナー助けてー!」


 すると部屋からドタドタ!とミリャナが急いで出てくる。

 寝起きだろうか?髪がくしゃくしゃで衣類がはだけているミリャナ……実に尊い。


 これだ俺が求めているのは健康的なエロスなのだ……。


「ど、どうしたの元ちゃん!アイリスも……本当にどうしたの?」


「あ、後で話すからさ、ちょっとアイリスを着替えさせてあげてくれない?」


「それは、良いけど……」


「ゴメンね、おねがいするよ」


 ミリャナにアイリスをお願いして着替えを渡す。そして台所で温かいミルクを用意する。


 戻ってくるとアイリスとミリャナがテーブルに着く、アイリスは少し落ちついた様だったがまだ少し震えている。


 アイリスにこれまでの経緯を聞く事にした。

 ため込むよりも話した方が良いと思ったのだ、子供の頃の傷は子供の内に治さなければいけないと聞いたことがあるし、元気もそう思っている。


 アイリスがぽつぽつと話し出すとミリャナが途中からアイリスを抱きしめながらすすり泣く、アイリスもつられすすり泣きながら一生懸命に話す。


 話しを聞き終わり元気は怒りで体が震えそうになるのを抑える。

 子供が経験して良い経験では無いだろう!

 平和な世界で平和な暮らしをしてきた人間の言い分だろうが、子供を大切にしない世界は最低だと元気は思った。


 異世界や戦争を舐めていた自分にも腹が立った。映画では無くてこれは現実なのだ。


「アイリス、良く聞いてくれ俺達はアイリスを追い出さないし殺さない、だからあんな事はしなくて良いんだ」


「でも、役に立たなきゃ要らないって」


「それは、奴隷としてだろ?アイリスはもう、奴隷じゃないんだ」


「でも、役に立たなきゃ」


 うーん、確かにここに居て良い理由が必要かな?俺が童女の面倒を見たいだけと言うと勘違いされそうだ……面倒を見たいというのは一応言っておくが気遣いだ。願望では無い。


「じゃ、明日からアイリスはこの家のお手伝いさんだ!わかるか?」


「お手伝いさん?」


「そうだ、家事手伝いをする人だ!」


「奴隷?」


「違う!お手伝いさんはこっががお願いするんだ命令じゃなくて、大変だから手伝って下さいって!」


「まぁ、詳しい話しは明日にしましょう?ね?アイリスもいっぱい泣いて疲れたでしょう?」


「はい」


「二人とも目を閉じて」


 そういうと赤くなった二人の瞼にヒールをかける。


「ありがとう元ちゃん」


「あ、ありがとう御座います……旦那様」


「だ、旦那様?まぁいいや、さぁおやすみ、お手伝いさんの朝は早いぞ?」


「はい、おやすみなさい」

 ミリャナに手を引かれてアイリスはミリャナと一緒に部屋に戻った。


 さてと、こっちも片づいたし行くか……。


 静かに家を出ると家の裏に止めていたジェット機……があるはずなのに、無い。フェルミナが夕飯にいないかったことが急に気になるがそんなのは後回しだ。


 一人用のバイクを出して股がると静かに浮上し北に向かって発進する。


 重力緩和シールドを貼りマッハで空中を走るとすぐに中央王国に着いた。

 当初の目的を果たしにやってきたのだ。


 それだけのはずだったが、戦争などふざけたことに罪のない人達を巻き込んだ人間が許せない怒りを、ぶつけてしまおうと今は思っていた。


 とりあえず、魔力防壁を破壊して城の無駄に高い屋根を吹き飛ばす。


 兵士が門前広場を右往左往しているがシカトだ人を殺すつもりは無い。


 ぽっかり空いた王座の間から中に入り込みそれらしい部屋を片っ端から見て回ると、人が居ない所は破壊して行く。


 城の人間にバレない様に今は全身ピカピカで翼の生えた(神モード)だ。

 王の部屋にらしい扉の前には兵士が30人程だろうか待機していた。


「王に話しがある、道を空けろ」


「き、貴様は何者だ!?」


 王国の人間と話すのも面倒くさかったのでそれらしく片手をあげて兵士の半分を吹き飛ばす。


「解らぬのか?愚民どもよ?」


「ま、まさか、か、神か……?」


「道を空けよ」


 そういうと道が左右に開いて行く勝手に勘違い作戦成功だ、元気は神とは一言も言ってない。


 扉を開くと王が戦闘態勢で魔法を打ち出して来た。


 それを弾くと元気は死なないギリギリの加減をして王を壁に叩きつける。


 後では騎士達がおののいているがシカトだ。


「一度しか言わない良く聞け、愚鈍な王よ、今後一切、中央国がアルカンハイトと関わることを禁じる、良いな?」


「あ、アルカンハイトだと?何故あのような田舎の島の事などぉぁぁ!!!」


 取り敢えず片足を吹き飛ばす。


「貴様に質問など許してはいない」


「き、貴様はいった、がぁぁ!!!」


 もう片方も吹き飛ばす。


「聞こえなかったか?」


 そういうと元気は王の寝室の壁を屋根ごと破壊する、上には何も無かったはずだ。


「て、天罰だ!天罰が下ったのだ!」


「この国は終わりだ!!!」


 うしろで騎士達が腰を抜かしたり逃げ出したりしている。


「最後の通告だ理解したか?」


「わ、解った!アルカンハイトには手出しをせぬし、関わらぬと誓おう!」


「よろしい」


 そういうと元気は空けた穴から外に飛び出ると、途中で見つけた宝物庫へここら辺かな?と風穴を開ける。

 元奴隷達の生活資金調達である。

 そこにある金貨や宝石等をごっそりと巨大な魔法の袋へ詰め込み、バイクを呼び寄せ城から脱出するとアルカンハイトへと戻った。


 アルカンハイトの城の前に財宝を袋ごと降ろすと、門番の兵士が、聖人様~!と嬉しそうに手を振ってくる。

 ストレス発散して気分が良いので喜んでいる兵士にサービスをと思い、バイクをブオン、ボボン!と吹かして二つ指をおでこの前でピッと立てて挨拶を返す。


「聖人様ぁ~!かっけーッス!」


 あの兵士嬉しい事いってくれるじゃないか?


 楽しくなってブオンブオンやっていたら、領主の城の明かりがついたので、兵士に1枚金貨を投げ渡し、「後は宜しく!」と元気は家に逃げ帰った。


 暴走行為は辞めようである。


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