エルフ進出

「じゃぁ!行って参ります元気様」


 イケメンは元気にそういうとミリャナの後について町に向かう今日はエルフが孤児院へ初出勤する日である。


 総勢50名のエルフが3人体制で交互に孤児院へ向かう、名前が無いと不便なので元気がエルフ達に名前をつけた。


 男は動物、女は花の名前だ。


 今日は、イケメンとドッグとハナである、顔つきに些細な違いはあるのだが、美男美女の軍団だ見分けが難しかった。


 お目付役にミールとフェルミナもいるが、役に立ちそうも無いので、ポタンもついて来ているちょっと大きくなったのでミリャナじゃなく、フェルミナが抱っこしている。


 総勢7人の大所帯だった。


「今日からよろしくお願いしますねイケメンさんとドッグさんとハナさん」


「こちらこそよろしくお願いします」


「フフフ、人間の町……一体どんな事が待っているのかしらね」


「そうだな!わくわくすっぞ」

 エルフ達はそれぞれ返事をする。

 エルフ達は漫画にドハマリしていて世界観がバラバラである。


 イケメンは白い地球軍服、ハナは黒いローブ、ドッグは山吹色の胴着だ。


 エルフ達は仲間で話し合い、それぞれがどの服を着るかどのキャラを演じるか話し合っているので被ってはいない。

 顔は似ているが今は服装と話し方で見分けがつく感じだ。


「今日は遊びに行くんじゃ無いぞ!気を引き締めるのだ」


 イケメンがそういうとドッグとハナが頷く。


「イケメンさんそんなに気を張らなくても難しい事は無いから」


「そ、そうですか?人間の町は初めてなのでどうも緊張してしまって」

 イケメンが緊張して不安そうにしている。


「大丈夫だイケメン、フェルミナが行ける場所なんだから誰でもいけるさ」


「ミール、貴様!朝から失礼な事を言っているな?」


「イケメン達の緊張をほぐしてやってるんだろ?イケメン達よりお前が何かしないかが心配だよ僕は」


「ほほう、今ここで貴様を血祭りにしてやろうか?」


「もう、二人とも!仲が良いのは分かったから朝から喧嘩しないで!」

 ミリャナの一言で二人は黙って歩き出す。


「フェルミナ、ママに迷惑かけたらパパに言うからね」


「ぽ、ポタン!だ、大丈夫だ!これでも人間の町での作法は心得ておるつもりだ!」


「作法って?」


「ん?あぁ!売られた喧嘩は全部買え!怪しい壺は買うな!割ってしまえ!それに路地裏に連れ込まれたら身包み剥いで全てを奪えだ!あとは、気に入らない奴はやってしまえ!だったな!」


 フェルミナの発言にエルフ達がフムフムと聞き耳を立てている。


「誰に教わったの?それ?」


「東の大陸のイグアだ、盗賊ギルドのボスをやっていた奴だ!下卑た目をしていたが部屋を準備してくれたりして良い奴だったぞ!」


 問題しか起きなさそうな予感を感じてポタンが溜息をつく。


「馬鹿がいるな、イケメンにハナにドッグ、フェルミナは馬鹿だ、コイツの言うことは信じるなよ」


 フェルミナがミールの頭を叩く。


「いってぇな、ゴリフ!皆そんなことしてたら町が大変なことになるわ!」


「ゴリフってなんだ!悪口だろう!私はそうやって生きてきたのだ他は知らない!」


 胸を張るフェルミナ今日は某RPGの女戦士っぽい衣装だ胸を張るとぷるるんと揺れる。


「姉さんやっぱ、元気にも来て貰った方が良かったんじゃないのか?」


「駄目よミール、家の事もご飯も全部、元ちゃんがやってくれてるのよ?たまには元ちゃんのお手伝いをしなくちゃ!」


 防壁再生後からミリャナの元気贔屓が強くなった事がミールは面白くないが、アルトの事があるので強くも言えなかった。


「あ~あ、俺にも力があればなぁ~」


「なんだ、ミール強くなりたいのか?私がいつでも鍛えてやるぞ?」


「やだよ、馬鹿がうつる……いってぇな!」


「家ではないからこれで、勘弁しているのだミリャナに感謝しろ!」

 皆でわいわいやりながら町に着くと門でグレイと挨拶をする。


「ヴァイドから聞いてはいたが、本当に来るとは……」


「おはよう御座います、グレイ叔父様今日はエルフの方々4人です、イケメンさんにハナさんにドッグさんとフェルミナさん」


「これが、エルフ達の通行証だくれぐれも問題を起こさないようにな」


「承知した!」


 イケメンさ達が元気よく返事する。


「時に、そこのエルフのお嬢さんだが、フェルミナと言わなかったか?」


「ん?あぁ、私はフェルミナだが?」


「エルフにフェルミナってのは何人もいるのか?」


「いや?私だけだな」


「黒竜を倒した、あのフェルミナか?」


「あぁ、黒竜あれは……いかん、これは元気に口止めされているのだ!話せんスマンな!」


「い、いや、大丈夫だ!その、良かったらなんだが握手して貰えないか?

 昔からフェルミナ物語を読んでいて憧れていたんだ、騎士にもアンタに憧れてなったんだ」


「そうかそうか!私に憧れてか!其方は見所があるな!良いぞ握手位いくらでもしてやろう!」


「生きてる内に伝説に会えるとは……フェルミナ様ありがとうございます!」


 グレイが胸をバンっと叩き敬礼する。


「礼なら元気に言うが良いぞ!アイツが町に来て良いと言ったのだ!ではまたな!」


 敬礼を続けるグレイを後にして孤児院へ向かう。


「どうだ?ミール見直しただろう?私は凄いのだぞ?フッフッフ~」


「何だよその腹の立つ笑い方は、それアレだろ?お前が黒竜を連れて来て領地毎滅ぼしかけた話だろう?元気が人に言わないか心配してたぞ」


「何故元気が秘密だと言ったのか、今判ったぞ!それはグレイの夢を壊さない為だったのだな!元気は優しい奴だ!」


「そうですね!元気様は良いお人です」


「そうね、真の私を解放してくださった至高のお方ね」


「元気様はすっげえぞ」


 口々に元気をエルフ達が褒めるのが可笑しくなりミリャナが笑う。


 孤児院へ着くとそれぞれのシスターについてエルフ達が行動する事になった。


 ヘレンにイケメン、ミリャナにフェルミナ、アジャに、ハナ、マザーにドッグそしてアルトはミールだ。


 アジャは最近、孤児からそのままシスターになった新人だが孤児院にずっといたので仕事は出来るミール達と同じ13歳だ。

 大人しい性格で口数が少ない。


 問題が起きるかと思っていたが、孤児院の仕事は滞りなく進んだ。奇跡的に相性が良かった様だ。


 イケメンはヘレンにしごかれながら、

 フェルミナはミリャナに褒めて貰いながら、

 ハナはアジャと怪しい話しをしながら、

 ドッグはマザーに感銘を受けながら、

 ミールはアルトとイチャつきながら

 それぞれ仕事を行った。


 子供達は最初大人が増えたことに戸惑っていたが、直ぐになれたように一緒に遊んだり、ポタンに勉強を教えて貰ったりしていた。


 仕事が終わりグレイと挨拶を交わして皆で家路を進む。


「いやぁ、今日は素晴らしい日でしたなぁ、あれほど神に信心深い人間と話が出来るとは」


 ドッグが目をキラキラさせながら話す。

 衣装が神官服っぽい物に替わっている。


「えぇ、実に有意義な時間だったわ」

 満足そうにハナが頷く。

 ハナの衣装がローブから黒い薔薇のドレスに替わっている。そして空飛ぶ箒に横向きで乗っている。


「次に孤児院へ行くのが楽しみですね!」

 イケメンがニコニコしながら満足そうにいう、服装が司令官から一般卒の兵士の迷彩服に替わっている。


 家の前でそれぞれにお礼を言い合うとエルフは森へ、ミリャナ達は家へ戻った。


「おかえり皆、今日はどうだった?」


「ただいま、元ちゃん!皆凄く頑張ってくれて助かったわ」


「うむ、問題も無かったぞ!」


「奇跡的にね、あ~お腹空いた~」


「エルフはIQ高いから順応が早いわね、これなら多分次からも大丈夫だと思うよパパ」


 それぞれが元気に報告する。


「そうか、何事も無くて良かったよ!さぁご飯にしようか!」


 元気がそういってテーブルにご飯を並べ食事を始める、皆が笑顔で食事をする姿を見て何事も無くて良かったと元気は心から安心したのだった。

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