神様になった日

 すっきりした気分で休憩を終わらせて、地下の研究室に戻るとミールの魔力生命体をベッドの上に戻す。


「あのさ、僕の体になるんだよね?もっと丁寧に扱ってもらっていい?」


「フェルミナに言ってくれる?よし、んじゃやるか!」


「おぉ!何かワクワクするな!」


「んじゃ、身体の上に寝て」


「おう!」


 元気はイメージする、ミールの魂を魔力生命体へ定着させるイメージだ。

 幽体離脱の反対のイメージがしっくり来たので試してみる。

 魔力ではなく神力の方が魔力生命体へ吸われていく。

 どうやら上手くいったようだ。


「どんな感じ?」


「う~ん、実感無いかな?」


「まぁ、部屋の中だし外に出てみるとわかるかもよ?」


「あぁ、そうだな、ちょっと行ってくる!」


「ついでにフェルミナに来るように声かけしといて!」


「わかった!」


 ミールはそう言って階段を駆け上がる。

 ミール足音が遠くなったと思ったらバーン!と衝突音が聞こえてきた。


「お~い元気!凄いぞ!壁を通り抜けれねぇ!」


 ミールの嬉しそうな声が聞こえてきた。


「あんまり無理するなよ~幽体の時みたいに無敵って訳じゃ無いんだから~!」


「おう!」


 そう返事をするとミールは外に出て行った。

 さてと、フェルミナの魔力生命体の制作に取りかかる……とは言ってもイメージするだけである。

 ベッドの上にフェルミナの魔力生命体が出来上がった。


 さっきの事を思い出して少しドキドキする……階段の方を見るが、まだフェルミナが来る気配は無い……。


「ちょっと、完成品のチェックをしなきゃな……」


 これはチェックであってイヤラシイ物ではない……そう自分に言い聞かせながら、おっぱいを触ってみる。


 うわっぁ!ぽよんぽよんのぷにぷにだぁ!


 張りがあって指が沈む!バストサイズは何だろうか?かなり大きい!そ、それじゃ……あそこをチェックだ……。

 横たわる魔力生命体の足を広げ、確認してみると忠実に再現出来ていた。


 フェルミナはつるつるだったのでイメージしやすかったのである。匂いを嗅いでみると無臭だった。


「おい、元気、何をしているのだ」


「うぉ!なんもないです!」


 フェルミナが少し引いた顔で立っている。


「いや、あのね万が一があるからチェックをしようかとね……」


「まぁ、元気も男の子だからわからんでも無いが、興味を持つのはまだ早いと思うぞ?」


「はぁ?お前も俺のこと子供だと思ってるの?もう15だってば!」


「何を言っているのだ?300までは子供だろう?まったく……」


 エルフ規準だった。


「そんなこと言って、さっきはあんなになってたクセに……」


「あ、アレはだな!そのなんだアレだよ!暑かったんだ!日差しのせいだ!」


 日差しって、ここは地下である。焦るフェルミナは予想を越えて可愛いい。

 フェルミナをからかって遊ぶミールの気持ちがわかったが、ミールの様にボコボコにされたくないので程々にしておく。


「フェルミナ、魔力生命体に身体を合わせて」


「わかった」


 フェルミナの身体と魔力生命体が重なる。そしてミールと同じ時の様にイメージする、するが神力が吸われない。


「あれ?」


「どうしたのだ?」


「いや、ミールの時は神力が吸われたんだけど……神力が入らないんだ」


「なんだと?」


 どうしたものかと考えるがわからない……。


「元気、ちょっとこっちに来てくれ。」


「ん?」


 フェルミナの横に立つとフェルミナが此方に手を伸ばし腕を掴む、そうするとフェルミナから何かが身体の中に流れてきた。


「え?何だこれ?」


「私からのプレゼントだ、持っていても無駄にはならんだろう……さぁ、もう一度やって見てくれ!」


「ん、あぁ……」


 何が何だかわからずに、もう一度イメージしてみると今度は神力が吸われていく、成功の様だ。


「どうだ?」


「あぁ!これはすばらしいぞ!ありがとう元気!わたしは心からお前に感謝をする……ぞ……」


 そういうと、何故かフェルミナがゆっくりと元気から目を逸らす。


「そうだこれ!服を準備しといたんだ、白いワンピースなんだけど、フェルミナに似合いそうな感じのやつ……あと下着な、上の風呂場で着替えるといいよ」


「うん、ありがとう……嬉しいよ……何か……すまん」


「どうしたんだよ?さぁ早くエルフの皆と再会してきな」


「あ、あぁ、そうだな、あの、なんだ、ほんとにすまない……」


 そういうとフェルミナはいそいそと階段をのぼっていく、階段を上る裸のフェルミナの後ろ姿を、階段の下からジッと見送る。

 フェルミナの姿が見えなくなるとすぐに、バーン!と大きめな衝突音が響いてきた。


「ぐあ!こ、これは天罰か!?」


 神様とかミールと違って大げさだなと思って元気は笑ってしまった。

 夕食をそろそろ準備しなければと、地下室の掃除を軽く行う。

 ポタンの面倒を見ると言ったが、ポタンがミリャナにベッタリで孤児院にまで一緒に行っているのだ。

 現在は美味しいご飯を作る事で、一生懸命ポタンに忘れられない様に元気は努力している。


「さてと、今日は何を作ろうかな……」


 そう一人言を言いながら階段を上ろうとしたが、何かがつっかえて階段前の扉から先に進めない。


「なんだよこれ?」


 何度か前に進もうと頑張ってみるが、背後で何かが引っ掛かる。

 ぶつかる度に背中に違和感があるので、手を回してみるとふわふわした何かが背中についている。

 魔法で鏡を出して背中を見てみると、背中に天使の翼が生えていた。


「フェルミナー!!!」


 翼が引っかからないように階段を上り、元気はフェルミナを追いかけた。


 家の裏の小屋の前でイケメンと涙の再会をして、無邪気に笑っているフェルミナを見つける。仲間との感動の再会シーンみたいだが、翼を生やされた元気には、そんなの知ったことでは無い。


「フェルミナー!!!」


「げ!!!」


 そういって逃げだそうとするフェルミナを、魔法で出したロープで縛ると問い詰める。


「これはどういう事ですかね?フェルミナさん?」


「に、似合っているぞ元気!ハハハ」


「ハハハじゃない!やっと体の発光がやんだと思ったら今度は翼が生えたんだぞ!?説明をしてもらおうか?」


「あぁ~となぁ……神の力は神の力と反発るのだ、だから元気に神の力を渡せば成功するかな~っと……てへっ」


 てへってなんだよ!可愛いなそれ!


「んじゃ、俺がフェルミナに力を返せば良いんだろ?これ、マジいらない」


「無理じゃな、神の力というか神の交代は100年に1度、それ以外に交代する方法は殺して奪う等の方法しかないのぉ」


 元気は殺されないと交代出来ない神様縛りに絶望的な気分になった。


「すまん、元気!だが、神の力はあって困る物じゃ無いから良いじゃ無いか!」


「元気様!神になられたのですか!おめでとう御座います!」


 イケメンだけがお門違いの発言をする。


「はぁ……神の力は良いとしても、背中のこれどうにかしてくれよ」


 神の力は諦めるとしても、翼は本当にどうにかしたい。


「力が馴染めば、出し入れ自由になるじゃろうて、しかし、元気よ儂からも礼を言おう、フェルミナを元に戻してくれてありがとう!」


「あぁ!ありがとう!感謝する、仲間と話し出来る様になってわたしは嬉しいぞ!」


「元気様!ありがとう御座います!私もフェルミナと再開できたことを嬉しく思います!」


「君たち、感謝すれば何でも許されると思ってない?」


「そ、そんなことは……ない。」


 フェルミナが目を逸らす。


「それで、出し入れはどれ位で自由に出来る様になるの?」


「私の時は1週間位だったな」


「マジかよ、1週間もこのままって……不便で仕方ないぞ」


「私の時は霊体だったから考えたこともなかったな」


「不都合があれば隠蔽で隠しておけばよかろうて」


「まぁ、そうか……」


 どうしようも無いようなので、仕方なく諦める。


「もう、行って良いだろうか?森の皆に会いたいんだ!」


「まったく、帰りに泉の水を汲んできてくれ」


「わかった!行ってくる!」


 魔法の縄を解くとポリタンクを両手にフェルミナとイケメンは森へとかけていった。


「フォッフォッフォお主も災難じゃの」


「本当にね、神さまの力とかいらないんだけど、平和にまったりミリャナと暮らしていければ良いのに……」


「まぁ、力は持っておいて損はなかろうて、いつ何が起きるかわからんからな」


「その、丸め込もうとする感じやだわ~……んで、フェルミナがくれた力って何なの?」


「運命の神の力は『アカシックレコード』と言って相手の運命を見たり操作する力じゃの、相手の運命を切り取れば存在事消せる」


「死ぬのとどう違うの?」


「存在事態が消えるので、誰の記憶にも残らんしやったことも全て消える、だから国を作った人間を消せば国毎消えるのじゃ、無闇に使わない方が良いな」


「使わないよ、怖すぎだろ全てを否定する様な能力……」


「まぁ、生かすも殺すも使い方次第じゃよフォッフォッフォ」


「使い方次第ね、肝に銘じておくよ……まぁ、知らない誰かの運命よりも今はミリャナとポタンのお腹事情の方が大事だ」


「フォッフォッフォ、お主はやはり面白いのぉ」


「褒められてるのかわかんないけど、あんまり嬉しくないな」


 はたから見たら面白いかも知れないがポンポン変な事に巻き込まれるのはたまったものじゃない!ユグドリアスに挨拶をし部屋に戻る。いちいちドアに引っかかるのが腹が立つが、一週間の我慢だ。


 食事の準備をしているとバーン!と衝突音がした後にドアが開く。


「いってぇ!幽体じゃ無いのは不便だな!」


「文句言うなよこれからは、ミリャナと話したり出来るんだから、ミリャナは凄く喜ぶと思うぞ?」


「そうそう!それだよ!姉さんが大変なんだ!」


「ミリャナがどうしたんだ?ってかもう、会ったの?」


「いや、孤児院の様子を物陰から見てたんだけど、そしたら姉さんとポタンが馬車に乗せられて攫われたんだ!」


「つれ攫われたって何所に!?」


「孤児院のシスターに聞いたら領主様の所だって!」


「ミリャナが領主の所に!?」


「神さまの事とかエルフの子供とか何か色々噂になってたって言ってた、おい、元気どうしよう!」


「いや、どうしようって?決まってんだろ攫われたんだったら、助けにいくさ!」


「流石、元気!頼りになるな!ってかその背中の翼はどうしたんだよ?イメチェンが過ぎるぞ?」


「格好いいだろ?お前にもつけてやろうか?」


「いらねぇよそんなん、邪魔だろ」


「だよな、まぁいいや、行ってくる」


「おう!頼んだぞ元気!」


 扉から出るときに翼がひっかかって舌打ちしてしまう。後に、領主の城へ神が飛んでいったと町中の噂になり、翼を隠しておけば良かったと元気は後悔した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る