魔法と魔石

 元気はベッドに座りミールの幽霊?と向かい合っていた。ミールがこの世界の色々な話しを聞かせてくれる。


「魔力を持った生き物は死んだ後。魔石になって魂を縛られるんだ。石が砕けたら魂も本当は消えちゃうんだけど。君の魔力の影響で僕はこっちの世界に縛られちゃってるみたい」


 「……不思議だな」 


 「これは、相当な魔力が無い限り起きない現象らしい……王国の図書館の本で読んだ。そうだ、これから魔法の特訓するんだよね?僕が教えてあげるよ」


「おぉ、それは凄く助かるよ!本を読んでもこんな感じかなぁ?って感じであやふやだったんだ」


「任せなさい!とりあえず師匠と呼ぶところから始めようか」


「よ、よろしくお願いします。師匠」


 やる気満々な、幽霊の師匠が出来た。


「うむ!とは言っても。魔力の循環が終わったら、後はイメージと魔力量の問題なんだ」


 「イメージ?」


 「火を強くイメージしたら、火を生み出し、水をイメージすると水が生まれる」


「なるほど……とりあえず、火をイメージだ!…………おぉぉぉぉぉ!?なにこれ!?すごい!?」


 手のひらの上に、小さな火をイメージすると、ライターの火位の炎がぽっと出てきた。


 そして、出たのはいいが。元気は消し方がわからない。


「ね、ねぇ。ミールこれどうやって消すの?ちょっと、熱くなってきたんだけど……」


「……………………」


 ミールは腕を組みそっぽを向いている。


「…………し、師匠。これ、どうやって消すんですか?」


「それはね、身体の魔力循環を止めれば止まるよ。循環させる感覚を停止させるんだ」


 「そ、そう……。ありがとう……ございます。師匠……」


 元気は魔力の循環を、意識して止めてみる。すると火が消えた。


 その後は水や風、土なども出してみる。


 「元気君……センスいいね……。す、凄いよ……」


 「そ、そうかな?エヘヘ……。魔法っておもしろいな。何でも出来る……。楽しすぎる!」


 元気は初めて使う魔法に、感動と興奮が止まらない。


「1時間ほど使いっぱなしだけど?魔力は大丈夫?」


「うーん、まだ1割も使って無いかな?それも少しずつ回復してるみたいだし」


「やっぱり召喚された勇者ってのは、魔力量が半端じゃないんだろうね。僕の具現化にも納得するよ……」


「魔力量の規準ってあるの?」


「………………」


 魔法のことに関しては、師匠と呼ばなければ答えてくれないミール。めんどくさいと思いながらも元気は付き合う。


「師匠、魔力量の規準等はあるのでしょうか?」


「そうだね、下級、中級、上級、特級、極級があって貴族もそれで分かれてるんだ。うちの親は中級クラス。僕は下級クラスだったよ。王族辺りが上級、特級で、魔王や賢者辺りが極級かな?」


 「ふ~ん……?」


 元気は、なんとなく凄いんだな!と理解した。


 「とりあえず王国でも破壊しに行く?」


「いや、いかねぇわ!遊びいく?的なノリで怖いこと言うなよな!あそことはもう、関わりたく無いんだから」


 「ナイスツッコミ!まぁ、関わらないのが正解だね……」


 「まったく……。ヨシ、次は……。イメージで土が出るなら……出来るんじゃないか?イメージ……イメージ……。……母なる海の恵み。父なる太陽の暖かな温もりにて、万物に愛でられし至高のその姿を現さん!其方を求めし我が命じる!ここに顕現せよ!!!」


 それっぽく詠唱する元気。すると、手のひらに白い粉があふれ出た。それを見て、元気は泣きそうになった。


「何だい、それ?」


「塩」


「塩?何それ?」


「料理を美味しくいただく為のものだよ……見たことない?」


「ないな。そんなの、魔力の無駄遣いじゃないのかい?消えたら意味ないし……」


 元気は塩を出した状態で、魔力の循環を止めてみる。結果、塩は消えなかった。


「大丈夫みたいだ。物質として召喚した物は残るみたい、だけど魔力の消費が大きいみたいだね」


「ふむ。面白いね。他にもなにか出せないのかい?今度は面白い物が良いな」


 ミールが興味津々である。元気は期待されるのが嬉しくなり12,3歳の少年が喜びそうな物を出してみる。魔力を循環させてイメージ、イメージ……。


 「始祖は揺れしか異形の魔物、打ち震えるは我が魂……世界は求めし異界への扉!鍵を握るは、財宝を締めし者のみ!目覚めの時は来た!いざ鍵を持って開かん!!!」


 詠唱がちょっと面白くなる元気。そして、出現した物に歓喜する。


「うほほほほほほほ!!!」


 全身の震えが止まらない。手のひらの中に現れたのは、弁天堂スウェッチだった。電源も付く、動力源は魔力の様だ。


 「次はスマホ……。おぉぉ!」


 嬉しすぎて元気は詠唱を忘れる。スマホもちゃんと出たが、ネット通信は出来ないみたいだった。


 もう1台出して、電話が出来るか試してみた結果。通話は出来たが、元の世界には通じなかった……現状カメラや動画撮影機能付きの無線機だ。


 何かあったときのために1つは、ミリャナに渡しておこうと元気は思う。


「おい、元気さっきからそれ何だよ?」


「あぁ、スマホとゲームだけど……解んないか……失敗失敗。自分の気になる物を優先的に出してしまった……。次はミールが好きそうな物を出すよ……。あぁ、あれは好きだろうな」


 「あれって何だよ?」


 首を傾げるミールを見ながら、元気が仰々しく両手を掲げ、詠唱を始める。今回は風魔法で、布団やカーテンがバタバタとはためく演出を入れた。


「悩めし夜に猛るは我が魂。歳は違えど瓜二つ。帰結するは我が至高。揺られし祈祷に爆ぜる白鳳。散りし花びら春うらら。賢者が目覚めし悟りの時分!欲望に呑まれし我等が魂を今!救い給え!!!」


 風が吹き荒れる中。元気が詠唱を終えると、ある物が出現した。


「お、おい元気!そ、それは何だよ!?」


 それを見るなり、ワナワナとおののき。ミールの鼻息がとても荒くなる。男子が好きな物。それはHな本。それの召喚に成功した元気だった。中身はちゃんとモザイク加工されている健全な物だ。


 カーテンの隙間から元気に後光が差す。


「やっぱ実体が無いのは不便だな……これ読みたくても読めないし……。くそ~……」


 悔しがるミールを見て、元気は新たな事を思いつく。


 「出来るかな?やってはいけない気がするけど……やってみたい気しかしない……」


 元気が思いついた事……。それは、人体錬成だった。


 しかし、失敗。イメージした次の瞬間。ボン!っという鈍い音と共に、元気の両手がはじけ飛んだ。


「おぎゃぁぁぁぁぁぁぁっぁ!!いってぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 元気は、痛みで床にうずくまりながら、生えろ!生えろ!と、無くなった両手をイメージする。すると爆発した手がにょきにょきと生えた。


「うわぁ、手がはえた……。気持ち悪!?お、おい!大丈夫か元気!」


 ミールが心配そうに元気の顔をのぞき込んでいる。


 「はぁ、はぁ、はぁ……。だ、大丈夫みたい……。びっくりしたぁ~……」


 元気は息を整えながら、ベッドに座り直す。


「いやぁ。人間を作れたら、ミールが乗り移ったり出来ないかな?ってさ」


「それは、神様の領分だから無理だって!

 国を挙げて人間兵器を作ろうとして、神罰で滅んだ国だってあるんだからな!」


「何それ?怖い」


「気持ちは嬉しいけど、次から何かするときは教えてくれ!家ごと吹っ飛んだら姉さんが帰ってくる所がなくなるだろ!」


「はい、すいません。あ、でも腕はちゃんと再生できたよ。魔力は結構持っていかれたけど」


 ミールに向かって、手をにぎにぎしてみると呆れた顔をされた。


「師匠。神罰って言ってたけど、神様って存在してるの?」


「ん?あぁ?神様を知らないって何だよ?」


「俺がいた世界では、信じる人はいても誰も見たことのない空想上の存在なんだ」


 知ってる事を教えてやる。そういうと神についてミールが話し出す。


 部屋中に飛び散った血を、魔法で出した雑巾で拭きながら、元気はミールの話しを聞くことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る