スクエア

 とある大学の登山部四人が冬の登山を行ない、吹雪に見舞われた。山小屋を発見し、そこで一夜を過ごすことにした。真四角の屋内には毛布や暖炉などはなく、男たちは寒さに凍えた。このまま眠れば命に係わると考えた部長は、こう提案する。

「部屋の四隅に一人ずつ座って、最初の人が壁に沿って角に向かうんだ。肩を叩かれた二人目が次の角に向かって、三人目に触れる。四人目まで一巡いちじゅんしたら、また同じことを繰り返す。こうすれば眠らずに済む」

 三人の部員はこの提案に賛成した。ところが一人が異論を唱えた。

「それじゃだめだよ。四人目の人は誰を起こすの?」

「どういうことだ?」

「一巡したら、部屋の四隅に四人がまた座るだけじゃない。次が始まらないよ」

 部長は唸った。

「四人目の部員には、二つ角を回ってもらうか……」

「そんなことしなくてもいいよ。あたしが代わりにいてあげる」

「いいのか?」

「当たり前じゃない。あたしたち、友達でしょう」

「ああ、そうだな」

 部長が提案した通り、四人の男たちは四隅に座る。中央の床にはランプが置かれ、その灯りが朦朧もうろうと彼らの姿を浮かび上がらせている。最初は部長から始め、隙間風が吹きこむ木の壁を伝って二つ目の角へ向かう。そこで早速さっそくうたた寝を始めていた二人目の肩を強く叩き、三人目がいる角へ向かわせた。その背中が遠ざかるのを見届けて、部長は壁にもたれかかる。背中越しに吹雪の音を聞いた。

 違和感があった。何かがおかしい。なのに、その正体が掴めない。疑念が渦巻いているあいだにも、三人目が動き出す気配がした。足音が遠ざかる。順調だ。これを繰り返せば、朝まで眠ることはないだろう。

 暗闇に紛れている四人目が歩き出した。最初に部長がいた角へ向かう。そこにいるはずの一人に触れた。四人目が角に座り、最後の一人がこちらへ向かってくるだろう。そこで不意に気づいた。

 最後の一人とは誰だ。この山岳部には、男しかいない。

 不意に肩に触られた。小さな手の感触で、異様に冷たかった。耳元で囁き声がした。

「気づいちゃだめだよ」

 笑いを含んだ声が言った。

「ルールを破ったら、ここで終わってしまうよ」

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