14:仲間入り

 龍を倒し終え、船に残った非戦闘員も一部を残してこの場に呼び寄せられた。

 招集をかけた理由は、どうやらここで龍の解体をするかららしい。

 だが、作業の前にすべきことがあるとジークは一同に集合を掛けた。


「今日は俺様のわがままに付き合って貰ってすまない。当初の予定ではこんなことにならず、もっと楽な仕事だったんだがな」


 ジークの言うとおり、龍と戦うことになるとは、誰も予見していなかっただろう。


「いつもなら依頼報酬や儲けがあるが、今日はそうもいかない。だから、この龍で得た金は俺様以外の全員で均等に分けてくれ」


 団員達にどよめきが起きる。

 なんでも龍の素材は、かなりの金になるらしい。


「団長」


 ざわついている中、ジークを呼ぶ声が響いた。


「なんだ? バトラー」


「その話には承服いたしかねます。先の不時着による船の損傷でそれなりの支出がありそうです。修繕にかかった費用を差し引いて残りを皆で分ける、でも十分かと思いますが」


 ジークの発言に対して、バトラーが抗議する。

 彼は星幽旅団の資金を管理しているので、その責務故の発言だろう。


「船の修繕費は俺様の財布から出すよ」

「それは本当ですか?」

「ああ。二言はない」


 ジークが受け持つと言い出すとは思わなかったのか、バトラーは口をつぐんだ。


「ほかに異論のあるやつはいるか」


 ジークが皆の顔を見渡すが、名乗り出る者はいなかった。

 龍にとどめを刺したのはジークだから、という気持ちが皆にあるからだろう。

 彼女はここまで計算に入れて、一人で倒すと言い出したのだろうか。


「お前らの中でも既に知ってるやつがいると思うが、今日から新人が入った。この龍を倒すきっかけを作ったのも、その新人だ。おい、レイン」


 ジークが僕を見据え、周りの視線も僕へ集まる。

 その視線は健闘を称えるようなものだったが、僕は心の中で複雑な感情を抱いていた。僕が龍を倒すきっかけを作りはしたが、襲われるきっかけも作っていたかもしれないのだ。マッチポンプで注目を浴びるのはどうも据わりが悪い。


 ジークは黙っている。何か一言話せということらしい。

 何を話せばいいのやら。

 趣味? 抱負? 特技? ――いや、それより言うべきことがあるな。


「申し訳ない。僕の魔法せいで船が――」

「待て待て待て」


 僕が頭を下げようとしたあたりで、慌ててジークが僕に向かってくる。


「言うことが違うだろ」


 ジークはむっとした表情で、僕の胸に拳を当てた。


「この世で一番大事なのは金だが、船なんて小っさいもんだ! そうだろ?」


 ジークの主張に皆が雄叫びを上げる。


「みんな、ありがとう」


「おいおいダサいぞ。何泣きそうになってるんだ。俺様みたいに男らしくだな――」

「団長は女だろうよ」


 ヤジが飛んできて笑いが起きる。


「今言った奴、後で団長室にこいよ」


 ジークから指摘されて気づく。僕は泣きそうになっていた。

 自分の描いた世界に暖かく受け入れてもらったというのもある。


 けれど、一番涙を誘ったのは――この先。フォーカードの話通りに進んだ場合。

 暖かく迎え入れてくれた彼らの大半が、話の序盤で命を落としてしまうからだ。





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