第96話 決闘前日
あのあと、鈴のやつは、ゆあちゃんたちに連行されて、どこかに消えていった。公園に一人残されたオレは、頭をポリポリとかいた後、自宅に戻ってきたわけだが、なんだか落ち着かなくて訓練場にこもっていた。
裏庭の訓練場でアトムと戦闘訓練を行い、ひとしきり汗を流した後、そういえばと思い《クラス替え》スキルの画面を開いくことにした。
今日のデート?の目的だった鈴の好感度はどうなったのか、気になったからだ。
画面を操作し、双葉鈴の座席をタップする。すると、鈴のやつの好感度は無事、カンストしていた。
『んー? やっぱり、お互いの家族のことを話し合って、もっと信頼し合えたからかな?』と考え、プロテインを飲みながら、自分の部屋に戻ることにした。
♢
翌日、授業が終わって、学校の訓練場に向かうと、ちょうど準備運動が終わった師匠が話しかけてきた。
「よぉ、おまえら、どうだった?」
「どうだったって、なによ?」
「昨日の成果のことだ」
「成果? もしかして……こいつのスキルのこと言ってる?」
鈴に親指で指を刺される。
「まぁそうだな」
「なにその聞き方、サイテー、この師匠にこの弟子ありって感じね」
「なんだおまえ、好感度カンストしたクセのにいつも通りだな。いや、まぁそれが鈴といえば鈴か」
「なによそれ……」
「お、なら上手くいったってことだな。さっそくステータス割り振るか。決闘は明日だしよ。さっさと慣らし運転しとかねぇと間に合わねぇぞ」
「たしかに! 了解です!」
オレは、嬉々として《クラス替え》スキルの画面を開く。隣に師匠がやってきて、このステータスがどうだとか、あーだこーだと話し出した。オレは、その話に集中することにした。
そんなオレたちを遠目に眺める女子たち。
「……ねぇ、あれどう思う? わたしのこと、なんだと思ってるわけ? ボーナスポイントが貰えるレアモンスターだとでも思ってるんじゃない?」
「鈴ちゃんの気持ちはよーくわかる。ゆあだって、似たような感じだったから。ひどいよね!」
「乙女心を弄んでますよね。処した方がいいでしょうか?」
「栞、あんた……ヤンデレとかにならないわよね?」
「え? ヤンデレってなんですか?」
「……まぁいいわ」
「うふふ、なんだかいつも通りに振る舞ってますけど、陸人くんの唇を奪おうとしたこと、忘れてませんからね?」
「そそ!そんなことしてないわよ!」
「あ! そうだ! そのことについて、もう一度、鈴ちゃんを裁判にかけたいと思います! ゆあは有罪だと思います!」
「なんでよ! 無罪を主張するわ!」
「鈴ちゃんがムードに流されやすい子だってことはわかりました。でも、抜け駆けしようとしたことは別です。しっかり、話し合いましょうね。はい、ここに座って?」
「うっ……」
遠くで、女子たちがワイワイ騒いでいるが、オレは自分のステータスに夢中だった。というか、みんなも師匠の話を聞けばいいのに。おもしろいぞぉ?
「でだ、咲守」
「はい!」
「今の話をまとめると、こんな感じでどうだ?」
―――――――――――――――――――
氏名:咲守陸人(さきもりりくと)
年齢:15歳
性別:男
役職:学級委員
所有スキル:クラス替え
攻撃力:76 ⇒ 77(A- ⇒ A-)
防御力:68(B+)
持久力:102(S-)
素早さ:95 ⇒ 100(A+ ⇒ S-)
見切り:85⇒ 90(A ⇒ A+)
魔力:1(E-)
精神力:92(A)
統率力:476(D)
総合評価:A- ⇒ A-
―――――――――――――――――――
「やっぱり、ムーニャに勝つには、見切りが重要ってことですね?」
「だな、あとは素早さだろう。もうちょいだったからよ。これでムーニャと同等になんだろ」
「ふむふむ」
師匠の提案は、見切りに5ポイント、素早さに5ポイント、攻撃力に1ポイントだった。
ちなみに、鈴の好感度がカンストする前にあった3ポイントは、デートの前の時点で素早さに割り振り済みだ。そのステータスで師匠と模擬戦を行い、「これじゃあムーニャに勝てねぇ」と言われたので、桜先生たちがデートに協力してくれた、というのが事の顛末である。
「まずおまえ、俺とムーニャが戦ったとき、ムーニャの動き、ギリギリでしか追えてなかっただろ」
「はい……お恥ずかしながら」
「それは自分があのスピードで動けてないからだ。少しの差だがな」
「なるほど。だから、ムーニャと同程度のスピードを手に入れるために、素早さにポイントを振る、ということですね?」
「ああ、それと見切りについては、池袋駅ダンジョンのときと同じだな」
「熟練の武道家と戦うには必須のステータスですもんね。これを上げたおかげで鎧武者の居合いも止めれましたし」
「ああ、ま、これでやっと勝率7割って感じだな」
「マジすか……あいつ、めっちゃ強いんですね……そういえば、ムーニャってスキルホルダーじゃないですよね?」
「ああ、ダンジョン踏破者ではないから違うはずだ。おまえや双葉のような特殊ケースだった場合、俺は把握してないがな」
「そっか。オレたちみたいなケースもありうるのか……」
だとしたら、あの強さも納得だ。勝った後に聞いてみるとしよう。
「ま、スキルホルダーじゃなかったとしても、ムーニャのやつはもともと剣の才能がずば抜けていたからな。才能だけで言えば、今まで会った中で頭何個ぶんも頭抜けてやがる」
「なんか悔しいっす……」
「……根性なら、おまえも負けてねーよ。よっと、さっさと割り振って慣らし運転するぞ」
師匠が言いながら立ち上がった。励ましてくれたのだろうか? よく見ると、少し照れくさそうにしてるので、笑いそうになってしまった。オレは、咳払いして笑うのこを堪え、ステータスポイントの割り振りを完了させた。
よし! これで準備は整った! あとは身体にステータスを慣らさせて明日の決闘に臨むだけだ!
そう考えて、剣を握ったのだった。
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