第67話 半年間の成長と最後の仕上げ
師匠がボスの動きをトレースするようになって1ヶ月後。
「ふぅ……」
「ま、こんなもんだろう」
訓練が終わったあと、師匠がふと呟く。
「こんなもん?それどういう意味よ?合格ってことならハッキリ言いなさいよね」
「鈴ちゃん、ゆあ、もうクタクタ……あんまり荻堂先生のこと煽らないでよぉ〜」
「はは、まぁ、ゆあちゃんの気持ちもわかるかな。それで、師匠、どうなんでしょう?」
「ああ、もう大丈夫だろう。おまえらなら100%、あのクソヤローに勝てる」
「マジすか!」
「ああ」
「やった!やりましたね!先輩!」
「ええ。結局半年もかかってしまいましたが、荻堂さんの指導のおかげでかなり強くなれました。実りのある半年だったかと思います」
「おお〜、そういえば、もうそんなに経ってたんだ……」
「あとは、最後の仕上げだな、咲守」
「仕上げ?なんですか?師匠」
「今まで放置していたステータスの割り振りを最後に行う。現状でも十分だが、ダメ押しってやつだな」
「ああ!すっかり忘れてた!」
「おまえの今のステータスを見せてみろ」
「了解です!」
オレは嬉々としてモニターを空中に表示し、クラス替えスキルを操作して自分のステータスを表示する。分かり易くするために、半年前の数値も表示してみた。
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氏名:咲守陸人(さきもりりくと)
年齢:15歳
性別:男
役職:学級委員
所有スキル:クラス替え
攻撃力:63 ⇒ 70(B+ ⇒ A-)
防御力:42 ⇒ 65(C+ ⇒ B+)
持久力:93 ⇒ 101(A+ ⇒ S-)
素早さ:78 ⇒ 85(A- ⇒ A)
見切り:24 ⇒ 56(D ⇒ B+)
魔力:1 ⇒ 1(E- ⇒ E-)
精神力:75 ⇒ 88(A- ⇒ A)
統率力:271 ⇒ 431(E+ ⇒ D)
総合評価:B ⇒ B+
―――――――――――――――――――
こうして見ると、オレのステータスは、この半年でかなり上がっていた。師匠に師事するようになってから、特に見切りが上がったと思う。やはり、武術家として、相手の動きを先読みする力がついたようだ。
それに防御力が異様に上がっている……きっとボコボコに痛めつけられたからだろう……
「かなり成長はしたが、やはり、こうして見ると見切りが低いように見えるな」
「ですよね。なら、見切りにポイントを割り振りますか?」
師匠とステータスを見ながら、相談する。
「まぁ、それもありだな。今割り振れるのは何ポイントだ?」
「えっと、師匠の加入特典が5ポイント、好感度ポイントで6ポイント、栞先輩の加入特典5、好感度ポイント9の、合計25ポイントですね」
「なるほどな」
「え?好感度9ポイント?」
オレと師匠が真面目な話をしてるところに、ゆあちゃんが口を挟んでくる。何か気になったことがあるようだ。
「栞ちゃんの好感度って、クラス加入時は83だったよね?なら好感度ポイントは8のはずでしょ?今9って言った?」
「ああ、そうなんだよ。なんか上がってて」
「……あの……陸人くん……」
栞先輩のか細い声が聞こえた気がした。
「ちょっと栞ちゃんのステータス見せて!」
「ああ、うん」
オレのの顔を押し除けるようにして、ゆあちゃんが栞先輩の座席をタップした。
―――――――――――――――――――
氏名:鳴神栞(なるかみしおり)
年齢:16歳
性別:女
役職:なし
所有スキル:なし
攻撃力:52 ⇒ 60(B ⇒ B+)
防御力:36 ⇒ 43(C ⇒ C+)
持久力:68 ⇒ 75(B+ ⇒ A-)
素早さ:76 ⇒ 79(A- ⇒ A-)
見切り:78 ⇒ 88(A- ⇒ A)
魔力:0 ⇒ 0(E- ⇒ E-)
精神力:66 ⇒ 80(B+ ⇒ A)
学級委員への好感度:83 ⇒ 96
総合評価:B ⇒ B+
―――――――――――――――――――
こうして見ると、栞先輩もここ半年で随分強くなったように思う。ゆあちゃんは何を気にしているのだろうか。
「きゅ、96?え?なんで?」
ゆあちゃんは好感度の数値にしか興味がないようだ。
「……あの……あまり見ないでください……」
「なんで!?ただ修行してただけなのに!?もしかして、ゆあの知らないところで2人で!?栞ちゃん!」
ゆあちゃんが栞先輩に詰め寄りだす。
「なな、なにもしてませんよ?」
「ホントに!?」
「ゆあ、落ち着きなさい。シッダウン!」
「がるる……」
鈴の言葉で一旦動きは止めたゆあちゃんだったが、両手を前に出しワキワキしている。今にも栞先輩に飛びかかりそうだった。
「うふふ♪ちょっと私も鳴神さんの話、気になります。荻堂先生、私たち、ちょっと席外しますね?」
「ああ、わかった。好きにしろ」
オレたちは女子たちが退室するのを見届ける。
「でだ、咲守」
「ああ、はい、なんですか?師匠」
「ステータスポイントの割り振りについては俺の方でも考えておくが、たしかカンストボーナスってのがあるんだよな?」
「はい、カンストすると10ポイントもらえます」
「双葉の好感度は今いくつだ?」
「えっと」
ポチポチとスキル画面を操作する
「75ですね」
「なるほどな。なら、嬢ちゃんの方をカンストさせたらどうだ?」
「どうだ、とは?オレ、カンストさせる方法なんてわからないですよ?」
「それは……俺にもわからねーよ。だが、力は使ってこそなんぼだ。今96で100にしちまえば、おまえ、かなり強くなれんだろ?仲間のためにもカンスト目指すべきじゃねーか?」
そう言われれば、そうな気もする。
「た、たしかに……でも、今のオレたちなら、100%勝てるんですよね?」
「俺の算段ではな。だが、戦場に絶対はない。限りなく100%だが、数パーセントのリスクを埋めれるかは、おまえ次第だ。おまえは出来るだけ自分を磨いておけ。仲間のためにも」
「わ、わかりました……」
「とりあえず、1週間やる。それまでに嬢ちゃんと話し合ってくれ。それからステータスの割り振りをしよう」
「了解です!」
ということで、オレは〈栞先輩の好感度をカンストさせる〉という新たなミッションを言い渡された。
どうすればいいか全くわからない。ん~、とりあえず本人に相談してみるか。
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