第66話 ボスとの仮想訓練
師匠に一撃を入れて、しばらく盛り上がってから、師匠に声をかけられた。
「咲守、的場、双葉、嬢ちゃん」
「はい!」
「はぁーい!」
「なによ?」
「はい」
「さっきの戦いはなかなか良かった。よく考えられた、おまえららしい戦術だ」
「ありがとうございます!」
師匠のお墨付きが出て、みんな笑顔になる。必死に考えて、自主練してきた甲斐があるってもんだ。
「今のお前らなら、池袋駅ダンジョンにいっても9割がた勝てるだろう。だが、逆に言えば、1割は負けるかもしれねぇ。つまり、まだ完璧じゃないってことだ」
「9割……ならどうすれば!」
「あとは、ボス戦の予習をするだけで10割勝てるようになる」
「予習?つまり、ボスと戦って撤退して、を何度か繰り返して経験を積むってことですか?」
「いや、それだと危険すぎる」
「じゃあどうすんのよ」
「俺がボスの動きをトレースする。つまり、仮想的にボス戦を行うんだ。ここで」
「トレースって、ボスの真似するってこと?荻堂先生が?」
「まぁ、そういうことだな」
「そのようなことが可能なのでしょうか?」
「やつの特性上、完全再現は無理だが、戦士としての身体の動きは100%再現できる。オレはこの8年、あのクソヤローのことをずっと考えてきた。あいつがどんな動きをするか手に取るようにわかる」
「キモっ」
「おい、おまえ黙ってろよ」
「はいはい」
「……」
師匠が鈴のことをチラリと見る。またこいつの毒舌でダメージを負ったのかもしれない。オレが慰めてあげないと!
「師匠はキモくないです!目つきが悪いだけでオレはカッコいいと思います!」
「咲守、おまえあとで追加訓練な」
「なんでオレが!?」
「ざまぁw」
「もちろんおまえもだ双葉」
「クソジジイ!」
「おまえ!マジで黙ってろよ!訓練もっとひどいことになるだろ!」
「えーっと……話を戻しますが、動きは再現できるのに完全再現ではない、というのはどういう意味でしょうか?」
オレと鈴が醜く争っているのを制して、栞先輩が本題に戻してくれた。
「ああ、それはあのクソが使うのが神器だからだ」
「神器なら、栞ちゃんも持ってるよね?これと同じ武器が他にもあるってこと?」
「そうだ。いや、正確にいうと武器の種類は数種類ある。あいつは、複数の神器を使ってくるんだ。で、それぞれの武器に特殊能力がある」
「特殊能力?栞先輩の薙刀はそんなの無いですよね?」
「いや、あいつが使ってたときは、その薙刀から雷撃が出ていた。おそらく、あのヤローにしか使えない能力なんだろう」
「雷撃……マジすか……」
生徒会長が氷の蔓や柱を出していたのを思い出す。あれの雷撃版だと思うと、かなり強そうだ。
「まぁそうビビるな。ネタが割れてりゃ対処できる。これからそれを教えてやるよ」
言いながら、師匠が桜先生に合図すると、桜先生がデバイスを操作した。すると、様々な武器が乗せられた台車が師匠の後ろまで移動してくる。
台車の上には、薙刀に弓、槍やクナイなんてものも乗っている。全部で6種類だ。
「これが、俺がボス部屋で確認した全ての武器だ。これらを使って、訓練していく。雷撃なんかの特殊能力はVRで再現するつもりだ。すでに小日向がCGは完成されている」
「結構な武器の種類がありますね。これ全部に対応しろってことですか?」
「そうだ。まずは1種類ずつ対処できるようになってもらう。それから、複数同時に使うようにしていく」
「ふむふむ」
「じゃあ、はじめるぞ」
そして師匠が弓を手に取った。
「師匠、弓使えるんですか?」
「武器は一通り使える」
「まじすか……すげぇぇ……」
「は?普通にキモいんだけど?」
「……」
また、師匠が鈴のことをチラリと見る。表情は変わらないけど、ああいう顔のときは、だいたい訓練がひどくなるんだ……
それがわかっていたから、戦闘訓練が始まると同時に、オレは鈴から距離をとった。
案の定、師匠が真っ先に狙ったのは、鈴のアホであった。
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