第46話 VS生徒会長
「パチパチパチパチ、素晴らしい戦いぶりでした」
近づいてきた生徒会長は、笑顔で拍手している。しかし、その表情はどこか不満そうにも見えた。
「あ、ありがとうございます?」
「みんな、咲守くんが1番強い、なんて思ってそうな歓声ですね?」
「へ?いや、それはどうかと……」
「まさか嫉妬ですかぁ〜?生徒会長ともあろうお方がみっともなくないですかぁ〜?」
あっ……隣のクソガキがなんか煽りだした。
ピクピク。椿先輩の眉が痙攣する。
「いえ、嫉妬だなんてそんな。ただ、私は生徒会長という立場上、皆さんに分かってもらいたいのです。この学園で1番強いのは、私だということを」
あ、やばいキレてる。
「つばめちゃん、落ち着いて?」
「栞は黙ってて」
せっかくフォローしてくれた鳴神先輩の声は届かなかった。これって、どうなるん?
「咲守くん!」
「へい!」
「私と模擬戦をしなさい!」
「へい!……はい?」
「わぁぁー!!」
オレは、訓練場の中心に立って、生徒会長と相対していた。会場中から期待のまなざしと大声援が聞こえてくる。
「会長ー!咲守なんてぶっとばしてー!」
「応援してまーす!会長ー!」
「カイチョウ!カイチョウ!カイチョウ!」
声援の大半は生徒会長の応援だ。
アウェーすぎんだろ……なぜ、こんなことになったのか……
今は迷宮攻略科の生徒全員の戦闘能力測定が終わり、舞台に立っているのはオレたちは2人しかいない。予定されていなかったイベントに会場は大盛り上がりだ。
オレが大きな声援に圧倒されていると、生徒会長が、腰の剣に手を添えて一歩前に出た。オレの方を見る。いや、睨んで――
「っ!?」
すごい殺気をぶつけられて、反射的に腰の双剣を抜いた。相手は本気の様相だ。
「本気でやりなさい。もし、私が勝ったらあなたを退学にします」
「へ?……はぁ!?突然なんなんすか!そんな横暴許されるわけ!」
「開始の合図を!」
生徒会長が叫ぶとブザービートが鳴り響いた。開戦だ。
「くそ!どういうことだよ!」
オレはどう出るか悩みながら、生徒会長の右側面に回り込もうと走り出す。
「遅いですよ」
そこに生徒会長が突進してくる。一瞬で目の前までやってきた。
キンッ!しかし、反応して、彼女の剣を弾き、後ろに飛び退く。
「さすが。やりますね」
生徒会長は細いレイピアを構えていた。綺麗な型だと思う。左手を腰の後ろに回し、右手を顔の前に構えていた。レイピアは空を向いている。
そして、気になるのは彼女の足元だ。さっきまで立っていた場所から、彼女が今立っている場所まで、一直線に氷がはっている。
あれが、彼女のスキルなのだろうか?
「あなたの本気を見せてみなさい!咲守陸人!」
生徒会長がレイピアを前に構えて突進してきた。
「いいですよ!この勝負のった!」
オレは腰の双剣をしまい、生徒会長の突進を右側に避けながら背中の双剣を投げつける。
キンキンッ!余裕で弾かれるが、もう2セットも続けて投げつけた。さっきの戦闘ロボット相手では、2セット4本だったが、今度は3セット6本だ。
生徒会長の周りを高速で走り回り、弾かれた双剣を受け取っては投げ、受け取っては投げを繰り返す。そして、徐々に双剣の速度を上げていった。
生徒会長の周囲を、竜巻のように6本の双剣が舞う。
戦闘ロボットのときはあっさり決着がついていた。しかし相手はダンジョン踏破者でありスキルホルダーである生徒会長。簡単にはいかない。
今はもう、全力で双剣を投げているのに、全ての攻撃が弾かれていた。
「そんなものですか?ぬるいですよ!」
激昂した生徒会長がレイピアを天にかざすと、地面から氷の蔓が何本も突き出してオレの双剣たちに絡みついた。6本の相棒たちがその蔓に捕らえられ、動きを停止する。花のように咲き誇る複数の蔓は美しく、オレの厨二心をくすぐった。
「カッケェェ……」
つい、呟いてしまう。
「真剣にやりなさい!」
めっちゃ怒られた。
「へへ、良いですよ。もちろんですよ!」
オレは笑みを浮かべていたと思う。久しぶりに、全力で戦える人間を見つけて喜んでいたのだ。
ギアを上げ、全力で駆け出す。
レイピアをかざした生徒会長の足元から氷の蔓が伸びてきた。それをかわそうともせず、全てを叩き斬り、一直線に前進する。
「なっ!?そんな無理やり!」
その勢いのまま、目の前に迫ったら驚愕の顔を向けられた。
キンッ!レイピアと双剣が重なる。力を込めると、苦しそうに一歩後ずさったので、『これが本気です。どやぁ』そう言おうとした。油断大敵というやつだろう。
突如として、オレの真下から特大の氷柱が現れ、そのままオレを持ち上げていく。どんどん上昇し、突然停止するもんだから、オレは空中に放り投げられる形となる。
「おおおお!?」
ダメージはないが、これはいかん。オレは空中に舞ってしまったのだ。足場になるものはない。つまり、身動きがとれない。
「やべっ」
「これで終わりです!」
勝利を確信した生徒会長が氷の蔓を伸ばし、さらにそれを足場にして突っ込んできた。ここでとどめをさすつもりなのだろう。
「まだまだ!」
オレは生徒会長と反対方向に最後の双剣を思い切り投げた。回転を限界までかけて。
「どこに投げているのですか!終わりです!」
もう一度空中で反転すると、剣を構えた生徒会長が迫ってきていた。
しかし、オレが投げた双剣もすぐに戻ってくる。オレの足元に。オレは、両足でそいつらの柄を蹴って、生徒会長に向かって加速した。一時的に足場を作ったのだ。
「なっ!?」
お互いの勢いが重なり、一瞬で間を詰めるオレたち。
レイピアを振るう生徒会長の手首を左手で弾き、右手の掌底を腹に叩き込んだ。
「かはっ!?」
「あっ……マジですみません」
手加減はしたつもりだったが、苦しそうな顔をさせてしまった。咄嗟に謝罪して、空中で抱きかかえる。
もし、女の子を殴ったなんて、うみねぇちゃんに知られたら殺されると想像してゾッとした。
パラパラと氷の蔓が消えていく中、オレは生徒会長をお姫様抱っこしたまま、地面に着地した。
腕の中の生徒会長は抵抗を示さない。勝負あったと理解してくれたようだ。
「お手合わせ、ありがとうございました」
「……こちらこそ。完敗です」
腕の中からおり、丁寧にお辞儀をする生徒会長。そして、さっきまでの剣幕がウソのように、晴れやかな笑顔を見せてくれた。
握手を求められたので、もちろん応じる。すると――
「わぁぁー!」
「すげー!!なんだこの戦い!」
「生徒会長ー!」
「咲守ー!」
オレたちの固い握手を見て、生徒たちは温かい声援を浴びせてくれた。
突如として始まった謎イベントではあったが、当初の目的通り、オレが強いということを政府の人たちにアピールできたので良しとしよう。
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【あとがき】
ココまで読んでいただきありがとうございます♪
「面白い!」と思っていただけましたら、「★で称える」をいただけると助かります!
★が入らないとランキングからハズれてしまうのです……
昨日は入らなかった……
マジで頼む(´•̥ ω •̥` )
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