第45話 戦闘能力測定で大注目されて

 これは、体力測定の数日前のことだ。体力測定の特に二日目での行動について、鈴のやつから、こんな指示を受けていた。


「あんたがこの学校で1番強いって、政府の人間に見せつけてきなさい。そしたら、たぶん、東京駅ダンジョンのことも前向きに考えるでしょ」


 このセリフを聞いてからオレは、最大限の力を発揮するために、保留していたステータスボーナスの割り振りを行うことを決めた。割り振れるポイントは26ポイント、割り振りはこんな感じだ。


―――――――――――――――――――

氏名:咲守陸人(さきもりりくと)

年齢:15歳

性別:男

役職:学級委員

所有スキル:クラス替え

攻撃力:63(B+)

防御力:42(C+)

持久力:93(A+)

素早さ:53+25=78(B ⇒ A-)

見切り:24(D)

魔力:0+1=1(E- ⇒ E-)

精神力:75(A-)

統率力:271(E+)

総合評価:B ⇒ B

―――――――――――――――――――


 ポイントの割り振りは、素早さに25ポイント、魔力に1ポイントだ。割り振りについては、もちろん、みんなに相談して決めた。


 まず、魔力についてだが、《心眼》スキルを持つ鈴の魔力が〈30〉で、《王国の城壁》スキルを持つゆあちゃんの魔力が〈20〉、そしてオレが〈0〉なので、オレも魔力を0じゃなくすれば、なにかしら魔法が使えるようになるのでは?という発想があったからだ。


 最初この話をしたとき、みんなは眉をひそめた。だから、「ステータス割り振りだけで魔法が使えるようになれば、かなり戦力増強になるだろ?例えば、手から炎が出せるようになるとかさ」と説得してみた。

 すると、「1ポイントだけなら」という条件で許可してもらえた。結果、なにも習得することはできなかった……

 みんなの言う通り、1ポイントで留めておいて正解だったということだ。


 それから、素早さに25ポイントを極振りすることにした。これは、オレの戦闘スタイルに起因する。オレは、双剣を投げて、返ってくるそいつらをキャッチし、再度投げながら敵と戦う。戦場を飛び回る双剣になるべく早く追いつけるように、素早さを上げるのがオレのスタイルに合っているだろう、と話し合い、極振りすることに決めた。


「よし、じゃあ、この割り振りでいくよ」


「いいんじゃないかしら」


「そういえば、なんで26ポイントあるんだっけ?桜ちゃんの加入特典が5ポイントで、好感度ボーナスが10ポイント、好感度のカンストボーナスで10だから25ポイントのはずだよね?」


「ああ、それは、鈴の好感度が70を超えてたからだな。それで1ポイントもらえた」


「え?鈴ちゃんの好感度が?前って60くらいだったよね?」


「たしかそうだったね」


「……鈴ちゃん?」


「なによ?」


「鈴ちゃんは違うんだよね?」


「違うわ。グランタイタンを倒したコイツを見て、信頼度的なものが上がったんじゃない?」


「へ、へぇ~……」


「うふふ♪参戦するなら早めに教えてくださいね?そのときは、鈴さんのことも敵とみなします」


「……」


 みんながよく分からない話をしているが、オレは無視してステータスの割り振りを行った。そしてすぐにアトムと実践訓練だ。みんなにも見てもらい、アトムからも「すごい速さです」とお墨付きをもらうことができた。


「りっくんのかっこいいところ!みんなにも知ってもらおっ!」


♢♦♢


 あのとき、ゆあちゃんはそう言って笑っていた。心の中でそれにこたえる


『りょーかい。行こうか』


 すぅっと目を開けて、双剣を構えた。訓練場の端にいる桜先生とも目が合い、『やっちゃえ』と頷かれる。頷き返す。


 そしてオレは、開始の合図と共に、思い切り双剣を投げつけた。


 人型のロボットめがけて、双剣が高速で飛んでいく。オレは着弾を待たずに駆け出した。そしてもう1セット、背中から双剣を抜き取り、また投げつける。


 短剣を構えたロボットが最初に飛んできた双剣2本を弾く。しかし次の2本は弾けない。肩と腹に一撃ずつもらい、よろけた。ダメージ判定が入る。上空に表示されているダメージカウンターが0から12、26と上昇した。


 ロボットがよろけている隙を逃さないように、すかさず攻撃を加える。そして、後ろに回り込み、1セット目の双剣をキャッチすると同時に、また投げつける。着弾する前に2セット目の双剣に追いついて、投げつけた。

 ロボットは四方八方から飛んでくる双剣と、オレ自身の攻撃に、為す術が無くなってしまった。たまに攻撃をはじくことはできても、ほとんどの攻撃がクリーンヒットしていく。


 そこからはもう、〈蹂躙〉という言葉が当てはまったと思う。ロボットは片膝をつき、キョロキョロしながら両手を動かしていた。次々と双剣の餌食となっていく。


「お、おいあれ……」

「バケモンかよ……」

「彼の実力がこれほどとは……」


 みんなが見ている実感があった。しかし、今日は集中を切らさない。オレたちは、認めてもらわないといけないんだ。


 オレは、目にも止まらぬ速度で走り回りながら、2セット4本の双剣が宙を舞う訓練場を縦横無尽に走り回った。

 ダメージカウンターが、256、273、289とどんどんと加算されていき、300を超えたところでロボットがガクリと動きを止める。

 オレは双剣たちを回収すると同時に腰の双剣を抜いてロボットに駆け寄りとどめをさす。首元をクロスに斬りつけて、地面に沈めて押し倒した。


 シーン……

 会場は静寂に包まれる。そして、


「わぁぁー!!」

「すげー!!なんだあれ!なんだあれ!」

「あれがダンジョン踏破者!人間じゃねーよ!」

「かっこいいーー!!好きになりそう!」

「私も!咲守くんって彼女いるのかな!?」


「ふぅ……」


 すごい歓声に変な汗が出てきたが、落ち着いた顔を作ってみんなの元に戻る。


「おつかれ」

「お疲れ様!」

「お疲れ様です♪」


「ありがとうございます」


 桜先生が渡してくれたタオルを受け取って一息つく。

 これだけ歓声をもらえたということは、政府の人たちも注目してくれるだろう。東京駅ダンジョンの開放について、良い方向に話が進むと良いな、と考える。


 桜先生からスポーツドリンクを受け取り、汗を拭いていると、椿先輩と鳴神先輩が近づいてきた。

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