第33話 新しい仲間は大人のお姉さん教師

 オレたちは、いつものメンバーに桜先生を加えてリムジンに乗り込み、オレの自宅までやってきた。玄関を開けて、お母さんにひとこと挨拶だけしてから訓練場の中に入る。


「ここが、陸人くんのお家……ドキドキ……」


 桜先生の様子がさっきからおかしい。お母さんに挨拶したときも異様にアピールしていたし、なによりゆあちゃんがずっとキレてるのも怖い……


「それじゃ、ゆあのスキルの話と、新メンバーの話をしましょうか。アトム、お茶」


 鈴が椅子に座って足を組みながら言う。


「かしこまりました。鈴様」


 アトムがお茶の準備をはじめてくれた。


「あ、桜先生、こちらにどうぞ」


「うふふ♪ありがと♪陸人くん♪」


 椅子を引くと、何故か嬉しそうにされた。座った後もニコニコとオレのことを見つめ続けてくる。


「りっくん?」


「へ?」


「りっくん!ゆあには!」


「あ!はい!ゆあちゃんもどうぞ!」


 キレられたので、ゆあちゃんの椅子も引いて座っていただいた。

 こ、こわい……何を怒っているのだろうか……


「めんどくさいわね。ゆあ、静かにしてなさい」


「がるるる……」


 とりあえず、鈴が話を進めてくれそうなので、オレも黙って座ることにした。


「それじゃ、改めて自己紹介を。わたしは双葉鈴、こっちが的場柚愛、で、せんせの王子様とかいう咲守陸人よ。よろしくね、せんせ」


「うん。こちらこそよろしくお願いします、双葉さん。私は小日向桜。これから、みんなのサポートをさせてもらいたくて、ついてきました」


「てことは、せんせはダンジョンには入らないってことよね?」


「うん。年齢的に20歳をこえたからもう入れないってのもあるけど……なにより、怖くって……ごめんなさい……」


 ペコリと頭を下げられる。


「そこはいいわ。一応確認しただけよ。大学四年生ってことは22歳かしら?」


「今は21だけど、今年22になります……陸人くんは年上でも大丈夫?」


「だ、大丈夫?とは?なにがですが?」


「もう……いじわる……」


 もじもじされてしまった。まじでなにが!?


「がるる……」


「で、年齢はいいとして、小日向せんせは、わたしたちに協力してくれる、サポート的なことを担当してくれる、ってことよね?具体的に何ができるのかしら?」


「私ができるのはオペレーターとして、ダンジョンのマッピングと、あとは装備の点検や開発なんかもお手伝いできると思う。私自身はダンジョンに入れないけど、サポートロボットを同行させてダンジョンの地図を作成できるのと、トラップの発見とかもできると思う」


「へぇ、それはすごいな」


「ホントに!?私!陸人くんの役に立てるかな!?」


「え?ええ……まぁ……」


「せんせ、落ち着いて。装備の開発ってのは?」


「あ、うん。えっとね。私、教師としての資格以外にプログラミングも専攻してるから、みんなの装備をカスタムしたり、新しい装備を開発したりとかも出来ると思うの。どうかな?仲間に入れてくれる?」


「んー、わたしはいいと思うけど?あんたたちは?」


「ゆあは反対!」


「オレはいいと思うけど」


「りっくん!ゆあは反対だって言ってるでしょ!反対反対!!」


「ゆあ、シッダウン。陸人の能力のこと考えるなら、仲間は多い方がいい。それはわかってるでしょ?」


「でもでも!」


「もしここで仲間を増やさなくって、陸人が死ぬことになったら、あんた、生きてけるの?」


「でもでも……」


「大丈夫、陸人はあんたのもんよ?」


 ちがうが?と思うが黙っておく。


「私は現地妻でも大丈夫です♪(小声)ということにしておきましょう。うふふ……」


「やっぱりゆあはいや!」


「せんせ、ややこしくなるから黙ってて」


「はぁーい♪」


「ゆあは黙らせるとして、あんたのスキルにせんせって入れれるのかしら?」


「どうなんだろ?同い年以外は試したことないけど」


「とりあえずやってみたら?」


「そうだな。ゆあちゃん、オレは桜先生を仲間にしたいと思ってる。許してくれる?」


「うー……」


「先生が仲間になれば、また強くなれる。ステータスボーナスがかなり入るからね。でも、ゆあちゃんがどうしても嫌だって言うなら、オレはゆあちゃんの意見を尊重するよ」


「それは……ゆあが1番ってこと?」


「い、1番?」


―――――――――――――――――――

とりあえず、1番だって言っておきなさい

―――――――――――――――――――


 オレがなんて答えればいいかわからずオドオドしていると、鈴がモニターに文字だけ表示して指示を出してくる。ゆあちゃんには見えないように。


「ゆ、ゆあちゃんが、1番だよ(棒)」


「な、なら……嫌だけど……我慢する……ゆあも、りっくんには強くなってもらいたいから……」


「あ、ありがとう……」


 なんかよくわからん流れだが、騙しているような気がして、めっちゃ気まずい。


「話はまとまりましたか?」


「ええ、ようこそ、チームノンデリっくんへ。せんせ」


「変なチーム名やめてもろて」


「うふふ♪やっと王子様と一緒になれるんですね♪陸人くん♡」


 桜先生が両手を顔の前で合わせながら、ウキウキした声色で見つめてきた。

 ……なんですか?その、いただきます、みたいなポーズは……


 ということで、新しいメンバーに、桜先生を迎えることになった。桜先生には、オレのスキルと鈴のスキルについて説明し、まずはクラスに加入できるか試してみることにする。


「ゆあのスキルの話、ぜんぜんできないんだけど?」


「ごめんね。このあとすぐだから」


「ぷー……」


 ゆあちゃんをなだめながら、《クラス替え》スキルを操作し、桜先生をクラスに加入できるのか試してみることにした。

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