第21話 クソガキのチートスキル

 リムジンがオレたちの中学の前に到着する。車から3人ともおりて、学生たちに注目される中、オレたちは正門から学校内に入った。

 鈴が私服なのですごく目立つ。学校の中に入り、下駄箱までやってきたところ、英語教師に呼び止められた。


「あなた、なんで私服で学校に来てるの?えっと、何組の子だったかしら?」


「おはようございます。今日から転校してきた双葉鈴です。まだこの学校の制服がなくて。クラスはコイツと同じ2年7組です」


 鈴がオレのことを親指でさしながら言う。


「あらそうなの?でも、前の学校の制服でこれば良かったじゃない?」


「小さい妹のイタズラで今朝ダメにされちゃって、ごめんなさい」


 鈴がペコリと頭をさげた。ペラペラと適当な嘘をついている。


「そうですか。わかりました。とりあえず職員室に来てください。手続きします」


「わかりました」


 そして鈴は連行されていった。


「大丈夫かな?鈴ちゃん?」


「たぶん大丈夫なんじゃない?さっきクラスには加入させたし、スキルの不思議パワーでなんとかなるじゃね?」


「だといいけど……」


「ま、とりあえずオレたちは教室いこうぜ」


「そうだね」


 ということで、自分たちの教室まで歩いていく。2階の1番奥の教室だ。扉を開けると机は3つしかなかった。いや、先週は2つしかなかったのに、今は3つある。


「3つになってる……」


「だね。さすが《クラス替え》、不思議スキルだ」


「やっぱ、ゆあ、なんか怖い……」


 ゆあちゃんはさながら、ホラー映画でも見てるような顔をしていた。


「まぁまぁ、このスキルのおかげでオレは強くなれるんだし。慣れてもろて。それじゃあさっそくステータスボーナス割り振ろうかなー♪また強くなれると思うと楽しみだ♪」


「……はぁ……戦闘狂……で?鈴ちゃんの好感度っていくつだったの?」


「えーっと、どうだろう?」


 オレは自分の席に座りならがら、空中のモニターを操作する。双葉鈴の座席をタップすると、以下のように表示された。


――――――――――――――

氏名:双葉鈴(ふたばすず)

年齢:14歳

性別:女

役職:なし

所有スキル:分析

攻撃力:20(D)

防御力:25(D+)

持久力:38(C)

素早さ:39(C)

見切り:26(D+)

魔力:15(D-)

精神力:64(B+)

学級委員への好感度:62/100

総合評価:C-

――――――――――――――


「好感度は62だってさ」


「へー?ふーん?」


 ゆあちゃんが肩に触れながらモニターを見て、唸っていた。それに、左右に体を揺らし、肩に触れたり、離れたりしてトントンぶつかってくる。


「《分析》ってのが、鈴が言ってたスキルかー。モンスターのHPがわかる、とか言ってたけどホントなのかな?」


「ねぇ、りっくんは鈴ちゃんのこと、どう思ってるの?」


「ん?別にどうとも。てかさ、この《分析》スキルがあれば、ボス戦でかなり役に立つんじゃないかな?ゆあちゃんはどう思う?」


「ねぇ、りっくんは鈴ちゃんのこと可愛いと思う?」


「いや別に。てか、鈴のやつ素早さ39もあるのかよ。オレ42だったと思うんだけど……追いつかれないよな……」


「ねぇ、りっくん、りっくんはゆあのこと可愛いと思う?」


「いや、べ……ん?」


 別に。そう言おうと思ったのだが、なにか不穏なものを感じて横にいる幼馴染の顔を見る。


 ゴゴゴゴ……ぶち切れ寸前の顔をしていた。

 さっきから会話が成り立ってないと思ったが、なんか怒っているようだ。

 えーっとこういうときは……


「……ゆあちゃんは昔からずっと可愛いよ(棒)」


「え?……そ、そう?」


「うん。かわいい(棒)」


「な、ならいいんだけど……えへへ///」


 ふぅ……これで良かったみたいだ。うみねぇちゃん直伝、〈ゆあちゃんは可愛いって言っておけばなんとかなる〉が上手く発動したみたいだ。


 ウィーン。教室のドアが開き、ツインテが入ってくる。鈴がクネクネしているゆあちゃんを一瞥して、


「なにラブコメしてんのよ」


「なな!?なんのことかな!?鈴ちゃん!?」


「そのまんまの意味だけど?」


「てかさ、おまえなんで体操服なん?」


 鈴のやつは、さっき着てた私服から学校指定の体操服に着替えていた。


「制服がないならこれ着てろって」


「なるほど。転校の手続きは?」


「上手くいったわ。というか勝手に手続きされてた。ホント、あんたのスキルって謎よね」


 言いながら、隣の空いている席に腰掛ける。


「だなぁ。てかさ、おまえのこの《分析》スキルのことなんだけど、詳しく教えてくれよ」


 オレは、モニターを見せながら、気になっていることを催促する。


「だから、モンスターのHPがわかる、以上よ」


「それだけ?」


「そうよ」


「んー……」


 モンスターのHPがわかる、すごいにはすごいのだが……


「あんまり強くないスキルよね。あんたと比べると」


「いや、んー……まぁ……」


「ゆあはすごいと思うよ!」


「ありがと。でも、あきらかに陸人のスキルと比べると見劣りするわ。たぶんだけど、スキルの取得のし方が違うからね」


「あ、そういえば、鈴ちゃんはどうやってこのスキルを手に入れたの?」


「それはね――」


 それから、鈴がどうやって、この《分析》スキルを得たか説明があった。

 鈴は、オレと同じようにダンジョンに忍び込むのが習慣になっていて、毎週末はいつもダンジョンに潜っていたようだ。そして、主な目的はモンスターを倒すのでなくマッピング、ボス部屋を探して潜り続けていたとのことだ。


「そのとき、偶然見つけた隠し部屋の宝箱を開けたら、このスキルが手に入ったの。突然、頭の中に声が聞こえてきて、分析スキルを獲得しました、だって」


「それはオレと同じだ。声の主は解説者って名乗ったか?」


「ええ」


 なるほど、オレのスキルを説明してたやつと同じやつだろうか。


「それでね。このスキルなんだけど、進化するらしいのよ」


「ほほう?その条件は?」


「それは教えてくれないんだけど、ゲームとかの定番で言えば」


「敵を倒して、レベルを上げる、かな?」と、ゆあちゃん。


「だね。すぐに思いつくのはそれだ。あとはスキル進化用のアイテムを手に入れる、とか」


「どちらにしろ、今はモンスターのHPがわかるだけ、戦闘力には影響しないから覚えておいて」


「了解。いや、でもさ考えようによっては――」


 オレがワクワクしながら《分析》スキルについて語ろうと思ったら、教師が教室に入ってきたので、一旦口を閉じて授業の準備をはじめる。鈴のスキルも謎が多いスキルだが、戦闘においてもすごく役立つスキルのように感じていた。休憩時間になったら、みんなで議論しようと思う。




=====================

【あとがき】

本作を読んでいただきありがとうございます♪

「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、あらすじの下にあるレビューから「★で称える」をいただけると助かります!


「もう一歩!」なら★

「頑張れ!」なら★★★


ブクマもいただけると泣いて喜びます!

なにとぞよろしくお願い致しますm(__)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る